
心膜炎とか心筋炎とか……
名前が似すぎて、どれがどれだか混乱します!

(管理人)
苦手な学生が多い範囲ですね。
今回も「解いて覚える」方法で、
心膜炎・心筋炎・心内膜炎の違いを
しっかり整理していきましょう!
🔰 この記事について
本記事は、「解いて覚える」をコンセプトにした 心膜・心筋疾患 の5択クイズ記事です。
(※詳細な要点解説は別記事にしています)
診療情報管理士の認定試験(基礎・医学編)をベースに、医療系国家試験の出題範囲を中心に構成しています。
出題対象は以下のとおりです👇
🩺 学習の進め方
この 心膜・心筋疾患 シリーズは、
「5択クイズ編」と「要点解説編」 の2本立てになっています。
おすすめの使い方👇
👉 要点解説記事は以下のリンクからチェックしてください。
💡 学習のポイント
📄 PDFダウンロード対応
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講師の方が授業資料や小テスト用としてもご利用いただけます。
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✏️ 5択クイズに挑戦!心弁膜症のポイントをチェック
👇 いきなり問題を解くのが不安な人は、以下の要点解説記事へ
問1:急性心膜炎について、正しい記述はどれか。
- 細菌感染によるものが最も多い。
- ST低下がみられる。
- 胸痛は前屈みで増悪する。
- 心タンポナーデの原因となる。
- 心膜叩打音が特徴的である。
解答
正しい記述は、4 です。
解説
- 誤り。急性心膜炎の原因で最も多いのは ウイルス感染(特にコクサッキーウイルスなど)です。
ただし、ウイルスの同定が困難な場合が多く、臨床的には「特発性心膜炎」とされることが多いです。 - 誤り。急性心膜炎では、複数の誘導で広範囲のST上昇がみられます。
- 誤り。急性心膜炎では前屈位で心臓への圧迫が減るため、胸痛が軽快します。
逆に仰臥位では増悪します。 - 正しい。心膜の炎症により滲出性心嚢液が貯留し、心タンポナーデを起こすことがあります。
- 誤り。急性心膜炎では、特徴的に心膜摩擦音が聴取されます。
心膜叩打音は、収縮性心膜炎の所見です。
👉 急性心膜炎 については、こちら で詳しく解説しています。
問2:収縮性心膜炎について、正しい記述はどれか。
- かぜ様症状などの前駆症状がみられることが多い。
- 左心不全が主体となる。
- 心臓カテーテル検査では、dip and plateau がみられる。
- オスラー結節やロス斑が特徴的所見である。
- 自然軽快することが多い。
解答
正しい記述は、3 です。
解説
- 誤り。かぜ様症状などの前駆症状がみられることが多いのは、急性心筋炎です。
収縮性心膜炎は慢性経過で進行するため、前駆症状はほとんどみられません。 - 誤り。収縮性心膜炎では、心膜が線維化・石灰化して硬くなり、心室拡張が制限されます。
その結果、右心系のうっ血(頸静脈怒張・浮腫・腹水など)が主体となり、左心不全よりも右心不全症状が目立つのが特徴です。 - 正しい。心臓カテーテル検査では、拡張早期に急激に圧が上昇し、その後一定となる特徴的な波形(dip and plateau)がみられます。
これは、拡張初期に血液が一気に流入するものの、硬い心膜によってすぐに拡張が制限されるためです。 - 誤り。オスラー結節やロス斑(ロート斑)は、感染性心内膜炎にみられる末梢塞栓所見です。
収縮性心膜炎とは無関係です。 - 誤り。収縮性心膜炎は自然軽快しません。
治療は、硬くなった心膜を外科的に剥離する心膜剥皮術(pericardiectomy)が行われます。
👉 収縮性心膜炎 については、こちら で詳しく解説しています。
問3:心タンポナーデについて、正しいのはどれか。
- 心室拡張障害をおこす。
- 血圧上昇、静脈圧低下、心音減弱がみられる。
- 聴診で心膜摩擦音が聴取される。
- 原則的に保存療法で経過をみる。
- 心嚢穿刺は禁忌である。
解答
正しい記述は、1 です。
解説
- 正しい。心タンポナーデは、心嚢内に液体(心嚢液・血液など)が急速に貯留することで、心臓が外側から圧迫され、心室の拡張が妨げられる病態(拡張障害)です。
その結果、心拍出量が低下し、ショックに至ることもあります。 - 誤り。心タンポナーデでは、静脈圧上昇(頸静脈怒張)、血圧低下(心拍出量の減少)、心音減弱(心嚢液が音を遮る)がみられます。
これら3つの所見は、Beck(ベック)の三徴として知られます。 - 誤り。心膜摩擦音は、急性心膜炎に特徴的な所見です。
心タンポナーデでは、心膜同士の擦れが少ないため聴取されません。 - 誤り。心タンポナーデは循環動態が急速に悪化する緊急疾患です。
保存的に経過を見るのではなく、速やかな減圧(穿刺・ドレナージ)が必要です。 - 誤り。心嚢穿刺は、心タンポナーデの第一選択の治療法です。
禁忌ではなく、生命救命のための必須処置です。
👉 心タンポナーデ については、こちら で詳しく解説しています。
問4:感染性心内膜炎について、誤っているのはどれか。
- 歯科治療が誘因となる。
- 弁膜症や先天性心疾患で起こりやすい。
- 無症状で進行することが多い。
- 脳塞栓のリスクがある。
- 新たに心雑音が出現する。
解答
誤っている記述は、3 です。
解説
- 正しい。感染性心内膜炎は、歯科治療や抜歯などを契機に、口腔内常在菌(特に緑色連鎖球菌)が血流に侵入し、心臓弁や心内膜の損傷部位に付着して増殖することで発症します。
- 正しい。弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症など)や先天性心疾患(VSD、PDAなど)では、乱流によって内膜が傷つきやすく、そこに菌が付着して感染性心内膜炎を起こしやすくなります。
- 誤り。感染性心内膜炎では、発熱がほぼ必発です。
他にも、倦怠感、食欲低下、体重減少などの全身症状を伴います。 - 正しい。弁膜上に形成された疣贅(ゆうぜい:細菌とフィブリンの塊)が血流に乗って飛散すると、脳動脈塞栓をはじめ、腎梗塞・脾梗塞・肺塞栓などの塞栓症を起こします。
- 正しい。感染が進行すると、疣贅による弁の破壊や穿孔が生じ、逆流性の新しい心雑音が聴取されることがあります。
👉 感染性心内膜炎 については、こちら で詳しく解説しています。
問5:急性心筋炎でみられないのはどれか。
- かぜ様の前駆症状
- 奇脈
- ST上昇
- 血清CK値の上昇
- トロポニンTの上昇
解答
急性心筋炎でみられないのは、2 です。
解説
- みられる。急性心筋炎は、多くがウイルス感染(コクサッキーウイルスなど)によって起こります。
発症前に発熱、咽頭痛、全身倦怠感など、かぜ様の前駆症状を認めることが多いです。 - みられない。奇脈は「吸気時に収縮期血圧が10 mmHg以上低下し、脈が触れにくくなる」現象で、典型的には心タンポナーデや収縮性心膜炎でみられる所見です。
心筋炎では起こりません。 - みられる。心筋障害により、心電図上でST上昇やST低下、陰性T波などのST-T変化を呈します。一見すると心筋梗塞に似た所見を示すこともあります。
- みられる。心筋細胞の壊死・障害により、クレアチンキナーゼ(CK)やAST、LDHなどの心筋酵素が上昇します。
- みられる。心筋細胞の障害によって、細胞内タンパクであるトロポニン(I/T)が血中へ放出され、血清濃度が上昇します。トロポニン上昇は心筋障害の鋭敏なマーカーです。
👉 急性心筋炎 については、こちら で詳しく解説しています。
問6:心筋症について、正しい記述はどれか。
- 肥大型心筋症では、左心室の拡大がみられる。
- 肥大型心筋症では、左心室流出路狭窄がみられることがある。
- 拡張型心筋症では、心エコーで僧帽弁のSAMが確認される。
- 拡張型心筋症では、心筋の壁の厚さと収縮力は正常である。
- 拘束型心筋症は、心筋症で最も頻度が高い。
解答
正しい記述は、2 です。
解説
- 誤り。肥大型心筋症(HCM)では、心室壁(特に心室中隔や左心室自由壁)が求心性に肥大し、左心室内腔はむしろ狭くなります。
左心室の拡大がみられるのは拡張型心筋症(DCM)です。 - 正しい。HCMでは、非対称性中隔肥大(ASH:asymmetric septal hypertrophy)を示すことが多く、心室中隔が厚くなることで左室流出路狭窄を生じます。
この狭窄が強い場合、閉塞性肥大型心筋症(HOCM)と呼ばれます。 - 誤り。SAM(systolic anterior motion:僧帽弁の収縮期前方運動)は、HOCMに特徴的な心エコー所見です。
拡張型心筋症ではみられません。 - 誤り。拡張型心筋症(DCM)では、心筋壁が菲薄化し、収縮力が著しく低下します。
この結果、左心室は拡張し、収縮不全型心不全を呈します。 - 誤り。拘束型心筋症(RCM)は、心室の拡張障害を主徴とするまれな心筋症です。
日本で最も頻度が高い心筋症は、拡張型心筋症(DCM)です。
👉 心筋症 については、こちら で詳しく解説しています。
問7:心膜や心筋の疾患について、正しい記述はどれか。
- 急性心筋炎では、ベックの三徴が特徴的である。
- 収縮性心膜炎では、心膜摩擦音が聴取される。
- 感染性心内膜炎では、右心不全症状が主体となる。
- 急性心筋炎は、急性心筋梗塞に続発することが多い。
- 肥大型心筋症では、突然死が起こることがある。
解答
正しい記述は、5 です。
解説
- 誤り。ベックの三徴(血圧低下・頸静脈怒張・心音減弱)は、心タンポナーデでみられる典型的な所見です。
急性心筋炎では、発熱や全身倦怠感、動悸、胸痛などの症状が主体であり、ベックの三徴はみられません。 - 誤り。収縮性心膜炎では、線維化・石灰化した心膜により拡張障害が起こります。
拡張期に硬くなった心膜へ心臓がぶつかることで、心膜叩打音が聴取されます。
一方、心膜摩擦音は急性心膜炎の特徴的所見です。 - 誤り。感染性心内膜炎では、弁膜上の疣贅形成による弁破壊や逆流、および塞栓症状が主な臨床像です。
感染の好発部位は、左心系弁(僧帽弁・大動脈弁)であり、その結果、右心不全ではなく左心不全症状(呼吸困難・肺うっ血など)が主体となります。 - 誤り。急性心筋炎の多くはウイルス感染(コクサッキーウイルスなど)が原因です。
急性心筋梗塞に続発することが多いのは、急性心膜炎です。 - 正しい。肥大型心筋症(HCM)では、心室中隔の肥厚や左室流出路狭窄を伴い、心室細動や心室頻拍などの致死性不整脈が起こることがあります。
特に若年者や運動中の突然死の原因として重要です。
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