診療情報管理士の基礎・医学編「第2章 人体構造・機能論」では、「細胞」の次に、組織の胚葉分化や神経組織・筋組織・上皮組織など、組織学の基礎を幅広く学びます。
本記事では、5択クイズを通じて、試験で問われやすいポイントを効率よく確認しながら、知識の定着を図る構成になっています。
内容は診療情報管理士認定試験の出題範囲をベースとしていますが、看護・リハビリ・臨床検査・柔整・鍼灸など、他の医療系資格を目指す方の復習教材としてもご活用いただけます。
まずは5択クイズに挑戦して、授業で学んだ内容がしっかり身についているか確認してみましょう。
各問題には解答・解説がついており、「▶︎ 解答・解説」ボタンをクリックすると内容が表示されます。
「いきなりクイズは不安…」という方は、記事後半の要点解説を先に読んでから挑戦するのもおすすめです。
📝 本記事に掲載している5択クイズは、PDF形式でのダウンロードも可能です。
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また、講師の方による授業スライドや確認テスト用資料としてのご活用も歓迎です。
学生の理解をサポートする補助教材としてお役立てください。
🖊️ 5択クイズで確認!胚葉分化と神経・筋・上皮組織
問1:胚葉の分化に関する以下の記述のうち、正しいものはどれか。
- 表皮は、中胚葉から分化して作られる。
- 神経系は、内胚葉から分化して作られる。
- 消化管粘膜は、中胚葉由来である。
- 副腎髄質は、外胚葉由来である。
- 筋組織は、内胚葉由来である。
解答
正しい記述は、4 です。
解説
- 表皮(皮膚の外層)は、外胚葉(ectoderm)由来です。
- 神経系は、外胚葉由来です。外胚葉から形成された神経板が神経管へと変化し、脳や脊髄へ分化します。
- 消化管の粘膜上皮は、内胚葉(endoderm)由来です。
- 正しい記述です。副腎髄質(adrenal medulla)は、外胚葉の神経堤細胞から分化します。一方、副腎皮質(adrenal cortex)は中胚葉由来で、ステロイドホルモンを分泌します。
- 筋組織(骨格筋・心筋・平滑筋)は、中胚葉(mesoderm)由来です。
問2:神経組織に関する以下の記述のうち、正しいのはどれか。
- グリア細胞は、筋組織に含まれる。
- グリア細胞は、活動電位を発生させる。
- アストロサイト(星状膠細胞)は、末梢に存在する。
- シュワン細胞は、グリア細胞の1種である。
- 無髄神経では、グリア細胞が軸索に取り巻いて多層の脂質膜を形成する。
解答
正しい記述は、4 です。
解説
- グリア細胞は、神経系に属する支持細胞であり、筋組織には存在しません。
- 一般に、グリア細胞は活動電位を発生させません。神経細胞(ニューロン)が活動電位を発生させ、情報伝達を担います。
- アストロサイトは中枢神経系(脳・脊髄)に存在するグリア細胞であり、末梢神経系には存在しません。
- 正しい記述です。シュワン細胞は、末梢神経系に存在するグリア細胞で、軸索を取り巻き、髄鞘を形成するなどの役割を果たします。
- この記述は、無髄神経ではなく有髄神経の特徴です。オリゴデンドロサイトやシュワン細胞などのグリア細胞が軸索の周りを何重にも取り囲み、脂質に富んだ構造である髄鞘が形成されます。この髄鞘を有する神経を有髄神経といいます。
問3:神経組織に関する以下の記述のうち、正しいのはどれか。
- 神経細胞体は、神経伝達物質を放出する。
- 神経の樹状突起は、シナプスを介して情報を受け取る。
- 有髄神経は、活動電位の伝導速度が無髄神経より遅い。
- 神経細胞同士は、 ギャップジャンクションで繋がっている。
- 血液脳関門は、オリゴデンドロサイト(寡突起膠細胞)によって形成される。
解答
正しい記述は、2 です。
解説
- 神経伝達物質の放出は通常、軸索終末(シナプス終末)で行われます。神経細胞体は、主にタンパク質やRNAの合成及び代謝、神経伝達物質の合成などに関与します。
- 正しい記述です。樹状突起は、他の神経細胞からのシナプス入力を受け取る主要な構造です。
- 有髄神経では、活動電位の伝導速度は無髄神経よりも速いです。
- 神経細胞同士は、シナプスを介して接続しており、ギャップジャンクションは心筋同士などの接続に関与します。
- 血液脳関門(Blood-Brain Barrier, BBB)の形成に関与するグリア細胞は、星状膠細胞(アストロサイト)です。オリゴデンドロサイトは、髄鞘の形成に関与します。
問4:筋組織に関する以下の記述のうち、正しいのはどれか。
- 平滑筋は、随意的支配を受ける。
- 骨格筋は、自律神経により支配される。
- 心筋は、横紋をもたない。
- 平滑筋は、合胞体である。
- 膀胱の筋層は、平滑筋で構成される。
解答
正しい記述は、5 です。
解説
- 平滑筋は自律神経系によって支配されるため、随意的支配は受けません。
- 骨格筋は随意筋であり、主に運動神経により支配されます。
- 心筋は横紋をもつ筋組織です。横紋がないのは平滑筋です。
- 合胞体は、複数の個別の細胞が融合して、一つの大きな細胞として機能する構造をいいます。典型的な合胞体の例としては、骨格筋があります。骨格筋は発生過程で多くの筋芽細胞が融合して形成されるため、一本の筋線維(=筋細胞)内に多数の核が存在します。
平滑筋は通常単核の細胞がギャップジャンクションを介して連絡し合うことで協調した収縮を行います。心筋も単核または二核の細胞が多く、隣接する心筋細胞同士は発達したギャップジャンクションで連絡し、機能的には合胞体のように働きます(一つの細胞にように働く)が、真の意味での合胞体(細胞融合による多核体)ではありません。 - 正しい記述です。膀胱の筋層(主に内側の粘膜下筋層および外側の筋層)は平滑筋で構成されています。
問5:上皮組織に関する以下の記述のうち、正しいのはどれか。
- 胃粘膜は、扁平上皮細胞で構成される。
- 膀胱は、移行上皮からなる。
- 心膜は、粘膜の一種である。
- 関節腔は、漿膜で覆われている。
- 肺胞上皮は、円柱上皮で構成される。
解答
正しい記述は、2 です。
解説
- 胃粘膜の表面上皮は単層円柱上皮で構成されており、扁平上皮ではありません。
- 正しい記述です。膀胱の内腔は移行上皮で覆われ、内容量に応じて伸縮性をもって形を変えることができます。
- 心膜は心臓を覆う膜であり、内層は漿膜(漿液を分泌する)です。粘膜は消化管や気道など外界と交通する内腔を覆う膜であり、心膜とは異なります。
- 関節腔内部は滑膜(関節内膜)によって覆われています。滑膜は血管や神経を多く含み、関節液を分泌します。
- 肺胞上皮は、単層扁平上皮で構成されており、効率的なガス交換のために非常に薄い構造となっています。
💡 クイズに出題されたポイントを整理
組織と胚葉
- 組織は同じ機能や特徴を持つ細胞の集団と、これらを支える細胞外基質(細胞間質)の集まりです。
- 生体内の組織は神経組織、筋組織、上皮組織、結合組織の4種類に分類されます。
- 胚葉とは、発生初期の胚(受精卵が細胞分裂を繰り返して形成される初期段階)において形成される三つの主要な細胞層のことを指します。これらはそれぞれ外胚葉・中胚葉・内胚葉と呼ばれ、特定の組織や器官へと分化していきます。
- 以下の表に、各胚葉の代表的な由来組織や器官をまとめています。
胚葉 | 概要 | 例 |
---|---|---|
外胚葉 Ectoderm | 主に外部環境に接する組織や 中枢・末梢神経系に分化します。 | 皮膚の表皮、毛髪、爪などの表皮組織 神経管から分化した脳や脊髄、末梢神経系 眼の一部、歯のエナメル質など |
中胚葉 Mesoderm | 身体の内部構造の多くを形成し、 支持・運動・循環・分泌などに 関わる組織となります。 | 骨格系(骨、軟骨、筋肉) 血液、血管系 腎臓や生殖器などの内臓およびその支持組織 結合組織、脂肪組織 |
内胚葉 Endoderm | 消化管や呼吸器系の内側を構成し、 内分泌腺などを形成します。 | 消化管全体の内膜、肝臓、膵臓、胆嚢など 呼吸器系(気管、肺)の内側 一部の内分泌腺や甲状腺、上皮細胞など |

全て覚えるのは大変なので、外胚葉は表皮と神経系、内胚葉は消化管などの内側、中胚葉はその他、と簡単に覚えておくと良いでしょう。
神経組織
- 神経組織は外胚葉由来の組織で、神経細胞とグリア細胞(神経膠細胞)から構成されます。
- 以下は中枢神経系の構成細胞のイメージです。神経細胞や血管の周りに、多数のグリア細胞(アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイト)が存在します。

神経細胞
- 神経細胞は、刺激に応じて興奮(=活動電位)を発生し、他の神経細胞や臓器などの効果器に情報(=活動電位)を伝達する機能を持ちます。
- 神経細胞の軸索を活動電位が伝わることを伝導といい、神経細胞から他の神経細胞に活動電位が伝わることを伝達といいます。
- 神経細胞の情報伝達は、シナプス(神経細胞同士または神経細胞と効果器の接続部位)を介して行われます。

神経細胞の構造
- 神経細胞は主に、細胞体と神経突起から構成されます。
- 細胞体は核を含み、神経伝達物質の合成や活動電位の発生に関与しています。
※実際には、活動電位は細胞体から軸索が出るあたり(軸索小丘〜軸索初節)で発生します。この部分は特に電位変化に敏感な領域です。 - 細胞体から分岐して伸びる短い突起を樹状突起といいます。
- 樹状突起は、シナプスを介して他の神経細胞からの信号を受け取ります。
- 細胞体から伸びる長く細い突起を軸索といいます。
- 軸索は髄鞘で覆われている場合があり、軸索と髄鞘(ある場合)を合わせて神経線維といいます。
- 軸索は活動電位を軸索終末まで伝導し、軸索終末からは神経伝達物質が放出されます。
- 髄鞘は軸索を連続的に覆っているわけではなく、一定間隔で切れ目があります。この切れ目の部分をランビエ絞輪(こうりん)といいます。

活動電位
- 活動電位とは、神経細胞の膜電位が急激に変化する現象です。
- 通常、細胞内は静止電位(刺激がない状態)でマイナスに保たれていますが、刺激により一時的にプラスに変わり、その後再びマイナスに戻ります。
- この電位変化(=活動電位)が軸索を伝導し、情報を遠くまで送ります。
神経線維の構造
- 神経線維には、軸索に髄鞘がある有髄線維と髄鞘を持たない無髄線維があります。
- 髄鞘(ミエリン鞘)は、軸索の周りを何重にも取り囲む脂質に富んだ層構造をいいます。
- 髄鞘は、グリア細胞により形成されます(後述)。
- 有髄線維では、活動電位がランビエ絞輪だけを飛び飛びに伝わる「跳躍伝導」が起こるため、無髄線維のように連続的に伝わる場合よりも、伝導速度が速くなります。。

グリア細胞(神経膠細胞)
- 神経細胞以外の細胞の総称で、神経細胞の支持・栄養補助・免疫的防御・髄鞘形成など様々な機能を担う細胞です。
- 中枢神経系(脳と脊髄)と末梢神経系では、存在するグリア細胞の種類が異なります。
- それぞれの代表的なグリア細胞とその機能を以下に示します。
中枢神経系(CNS)のグリア細胞
グリア細胞 | 主な機能 |
---|---|
アストロサイト (星状膠細胞) | 神経細胞への栄養の供給や、 過剰なイオンや神経伝達物質の除去、 血液脳関門の形成などに関与 |
オリゴデンドロサイト (寡突起膠細胞) | 髄鞘の形成 |
ミクログリア (小膠細胞) | 病原体の排除や細胞の残骸・ 異常物質の除去などの免疫機能 |
末梢神経系(PNS)のグリア細胞
グリア細胞 | 主な機能 |
---|---|
シュワン細胞 | 髄鞘の形成 |
血液脳関門(BBB:Blood Brain Barrier)
- 血液脳関門は、血液と中枢神経系(脳、脊髄)の組織液との間の物質交換を制限し、中枢神経を有害物質から保護する機構です。
- 中枢神経系の血管は末梢組織と異なり、周囲をアストロサイトや周皮細胞が覆った特徴的な構造をしており、血液からの物質の侵入を防いでいます。
筋組織
- 筋組織は、形態学的、生理学的に骨格筋、心筋、平滑筋に分けられます。
- 意識的に動かすことができる筋肉を随意筋、意識的に動かすことができない筋肉を不随意筋といいます。
- 顕微鏡で見ると筋線維に横に走る細かい縞模様を持つ筋肉を横紋筋といいます。
筋肉の分類

- 心筋細胞は単細胞ですが、心筋細胞同士はギャップジャンクションで繋がっており、一つの(機能的)合胞体を形成します。
- 機能的合胞体とは、細胞間の密接な結合を通じて、複数の細胞が連携し、組織全体が単一の細胞のように動作する状態を指します。
- 代表的な機能的合胞体は心筋で、個々の心筋細胞が同期して収縮し、心臓全体が効果的にポンプ機能を果たします。
骨格筋の構造
- 骨格筋は、多数の筋線維(=筋細胞)からなる筋線維束が集まってできています。
- 筋線維は非常に長い細胞で、辺縁部に多数の核を持ちます。
- 筋線維の細胞質内には収縮を司る筋原線維が規則正しく配列します。
- 複数の筋線維が集まって筋線維束が形成され、その外側は筋周膜で覆われています。
- 筋線維束がさらに集まって筋全体が形成され、その外側は筋外膜で覆われています。
- 筋の末端部には腱が連結しており、筋の収縮による力は腱を介して骨に伝わり、関節の運動を引き起こします。
- 以下に骨格筋の構造を示します。

上皮組織
- 上皮組織は、外部と内部の境界を形成する組織で、分泌、吸収、感覚、輸送、保護などの機能も持っています。
- 上皮組織は細胞の層構造や形状に基づいて分類され、扁平上皮、立方上皮、円柱上皮、移行上皮などがあります(以下にその一部を示します)。
上皮組織 | 特徴 |
---|---|
扁平上皮 | 潰れたような平たい細胞(扁平上皮細胞)で構成される。 •単層扁平上皮:血管内皮、肺胞、漿膜など。 •重層扁平上皮:口腔・咽頭・食道、肛門、膣など。 |
立方上皮 | 腺の導管(汗腺、唾液腺)、腎臓の尿細管などに見られる。 細胞は高さと幅がほぼ等しい |
円柱上皮 | 円柱状の細胞から構成される。 •単層円柱上皮:胃や腸の粘膜上皮などにみられる。 •(単層)線毛円柱上皮:細胞表面に線毛をもつ。卵管や気管。 |
移行上皮 | 腎盂、尿管、膀胱、尿道の一部の表面を覆う上皮。 臓器の拡張および収縮機能に応じて形態が変化する |
膜組織
- 膜組織は主に結合組織と上皮組織から構成されており、漿膜、粘膜、滑膜などがあります。
膜組織 | 特徴 |
---|---|
漿膜 | 腹膜、胸膜、心膜などの体腔内面や内臓器官の外表面を覆う薄い半透明の膜 |
粘膜 | 消化管などの内表皮を覆う膜で、上皮組織で構成される。 粘液を分泌し、吸収や粘膜保護を行う。 |
滑膜 | 関節の周りに存在する関節腔を覆う組織で、関節包を形成する。 滑膜は、他の膜と異なり上皮を持たない点が特徴で、関節液(滑液)の産生に関与します。 |
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以下の2つの分野まで復習が終わった方は、クイズで理解度を確認してみてください。
📚 クイズに含まれる対象範囲
🔗 【細胞】5択クイズで学ぶ!細胞膜、核、細胞内小器官の基礎知識
🔗【組織と胚葉】5択クイズで学ぶ!神経・筋・上皮組織と胚葉分化の基本を簡単に整理(本記事)
🔗【結合組織・血液・体液】5択クイズで学ぶ!支持組織や体内環境の基本を簡単に整理
一問一答形式で選択肢一つ一つをじっくり復習できるクイズと5択クイズでサクッと復習できるクイズの2種類を用意しています。
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