問題
問1:ホルモンと分泌部位について、正しいのはどれか。
- 甲状腺刺激ホルモン ー 視床下部
- サイロキシン ー 副甲状腺
- カルシトニン ー 甲状腺
- パラトルモン ー 下垂体
- インスリン ー 膵臓ランゲルハンス島α細胞
解答
正しい組み合わせは、3 です。
解説
- 甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、下垂体前葉から分泌されます。視床下部からは、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が分泌されます。
- サイロキシン(T4)は、甲状腺から分泌されます。副甲状腺からは、パラトルモン(PTH)が分泌されます。
- 正しい組み合わせです。カルシトニンは、甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞)から分泌されます。
- パラトルモン(PTH)は、副甲状腺から分泌されます。
- インスリンは、膵臓ランゲルハンス島のβ細胞から分泌されます。α細胞からは、グルカゴンが分泌されます。
問2:甲状腺ホルモンの作用として、誤っているのはどれか。
- 基礎代謝の亢進
- 血糖上昇
- 心拍数増加
- 血中コレステロール濃度の上昇
- 中性脂肪分解促進
解答
誤っているのは、4 です。
解説
甲状腺ホルモンは、肝臓でのコレステロール合成抑制やコレステロール分解促進、また血中コレステロールの細胞内への取り込み促進などの作用により、血中コレステロール濃度を低下させます。
問3:甲状腺ホルモンについて、正しいのはどれか。
- 血中濃度が上昇すると、TSHの分泌が促進される。
- ステロイドホルモンである。
- ヨウ素が含まれる。
- 分泌過剰症として、橋本病がある。
- 先天性の分泌低下症として、クッシング病がある。
解答
正しい記述は、3 です。
解説
- 甲状腺ホルモン(T3およびT4)の血中濃度が上昇すると、負のフィードバック機構により視床下部からの甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)および下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が抑制されます。
- 甲状腺ホルモンは、アミン型ホルモンです。
- 正しい記述です。甲状腺ホルモンのうち、トリヨードサイロニン(T3)には3つのヨウ素が、サイロキシン(T4)には4つのヨウ素が含まれています。
- 甲状腺ホルモンの分泌過剰症では、バセドウ病が最もよく知られています。橋本病は、甲状腺ホルモンの分泌低下症の一つです。
- 先天性の甲状腺ホルモンの分泌低下症には、クレチン症(現在は、先天性甲状腺機能低下症と呼ばれます)があります。クッシング病は、下垂体腺腫によりACTHが過剰に分泌され、コルチゾールの分泌過剰をきたす疾患です。
問4:パラトルモンについて、正しいのはどれか。
- 骨形成促進作用をもつ。
- 血中カルシウム濃度の上昇により、分泌が促進される。
- ビタミンK活性化作用をもつ。
- 腎臓におけるカルシウムの再吸収を促進する。
- 分泌が低下する疾患として、骨軟化症がある。
解答
正しい記述は、4 です。
解説
- パラトルモンは主に骨吸収を促進し、血中カルシウム濃度を上昇させます。骨形成促進作用をもつホルモンには、カルシトニンがあります。
- パラトルモンは、血中カルシウム濃度の低下により、分泌が促進されます。血中カルシウム濃度が上昇すると、分泌が抑制されます。
- パラトルモンは、腎臓でのビタミンDの活性化作用を持ちます。
- 正しい記述です。パラトルモンは腎臓の遠位尿細管においてカルシウムの再吸収を促進し、尿中へのカルシウム排泄を減少させます。
- 骨軟化症はビタミンD欠乏などにより骨の石灰化が障害される疾患で、パラトルモンの分泌はむしろ増加することが多いです(続発性副甲状腺機能亢進症)。
問5:ホルモンについて、正しいのはどれか。
- インスリンは、糖新生促進作用をもつ。
- グルカゴンは、グリコーゲン合成を促進する。
- インスリンは、脂肪の合成を促進する。
- グルカゴンは、血糖低下作用をもつ。
- ソマトスタチンは、インスリンの分泌を促進する。
解答
正しい記述は、3 です。
解説
- 糖新生は、糖ではない物質(アミノ酸やグリセロール、乳酸など)から糖(グルコース)を合成することで、糖新生の促進により血糖値が上昇します。インスリンは血糖値を低下させるホルモンなので、糖新生を抑制します。糖新生を促進するホルモンには、グルカゴンやコルチゾール、アドレナリン、成長ホルモンなどがあります。
- グルカゴンは、グリコーゲンの分解を促進します。グリコーゲンの合成を促進するホルモンには、インスリンがあります。
- 正しい記述です。
- グルカゴンは、肝臓でのグリコーゲン分解や糖新生を促進し、血糖値を上昇させます。
- ソマトスタチンは、インスリンやグルカゴンの分泌を抑制します。
ポイント
甲状腺
- 甲状腺は、濾胞とその周囲の傍濾胞細胞(C細胞)から構成されます。
- 濾胞は濾胞上皮細胞に取り囲まれた球状の構造で、内部は空洞になっており、粘性のコロイド※で満たされています。
※物質の微細な粒子が、沈降せずに気体中や液体中に分散している状態。 - 濾胞上皮細胞からは甲状腺ホルモン(T3、T4)が合成、分泌され、濾胞腔に蓄えられています。
- 傍濾胞細胞からはカルシトニンが分泌されます。
※カルシトニンは、甲状腺から分泌されますが、”甲状腺ホルモン”とは呼ばないので注意。
甲状腺ホルモン
- 甲状腺ホルモンには、T4(チロキシンまたはサイロキシン)、T3(トリヨードチロニンまたはトリヨードサイロニン)があり、ヨウ素を含んでいます(“4”や“3”は含まれるヨウ素の数です)。
- これらのホルモンは濾胞上皮細胞で合成され、コロイド状のチログロブリンとして蓄えられています。
- 蛋白質であるチログロブリンにヨウ素が結合し、蛋白質の部分が切り離されることで甲状腺ホルモンが生成します。
- T3は作用が強く、T4は分泌量が多い(98%)という特徴があります。
分泌調節
- 甲状腺刺激ホルモン(TSH)により分泌が促進され、 血中甲状腺ホルモン濃度の上昇で抑制されます(負のフィードバック機構)。

作用
- 甲状腺ホルモンは、基礎代謝の亢進、心機能亢進、血糖上昇、交感神経興奮、蛋白異化、コレステロール・中性脂肪低下、身体の成長・成熟などの作用をもちます。
分泌異常
- 分泌過剰症には、バセドウ病があります。
- 分泌低下症には、橋本病があります。
カルシトニン
分泌調節
- 血中Ca濃度の上昇により、甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞)から分泌されます。
作用
- 骨吸収を抑制、骨形成を促進し、血中Ca濃度を低下させます。
- 腎からのCa排泄を増加させて、血中Ca濃度を低下させます。
上皮小体(副甲状腺)
- 上皮小体(副甲状腺)は、甲状腺の裏にある組織で、左右上下一つずつ、合計4個あります。
- 副甲状腺からは、パラトルモン(PTH) / 副甲状腺(上皮小体)ホルモンが分泌されます。

パラトルモン(PTH) / 副甲状腺(上皮小体)ホルモン
分泌調節
- 血中Ca濃度の低下により、分泌が促進されます。
作用
- 骨吸収を促進し、血中Ca濃度を上昇させます。
- 尿細管からのCa再吸収を促進し、血中Ca濃度を上昇させます。
- 腎でのビタミンD3※の活性化を促進し、血中Ca濃度を上昇させます。
※ビタミンD3は肝臓や腎臓で活性化され、腸管からのCa吸収を促進する作用を持ちます。
分泌異常
- 分泌過剰症として、副甲状腺機能亢進症、骨軟化症、くる病があります。
- 分泌低下症として、副甲状腺機能低下症があります。

骨軟化症やくる病は、ビタミンDの作用不足による骨石灰化障害です。
ビタミンDによる腸管でのCa吸収促進作用が低下するため、低Ca血症になります。
その結果、パラトルモンの分泌が増加する二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症となります。
膵臓
- 膵臓内の細胞の大部分(約90%)は消化酵素を産生する外分泌細胞ですが、その中にランゲルハンス島と呼ばれる内分泌細胞群が散在しています。
- ランゲルハンス島はα細胞、β細胞、δ細胞などの内分泌細胞をもち、それぞれ、グルカゴン、インスリン、ソマトスタチンを分泌します。

グルカゴン
分泌調節
- 血糖低下によりα細胞から分泌が促進され、血糖上昇により分泌が抑制されます。
作用
- グリコーゲン分解や糖新生※を促進し、血糖値を上昇させます。
※糖ではない物質(アミノ酸、乳酸、グリセロールなど)から糖を作ること。
(グリセロールは脂肪の分解産物です)


管理人
グリコーゲンは、グルコース(ブドウ糖)が繋がったもので、肝臓や筋肉に蓄えられています。
分解されるとグルコースとなって、血糖上昇やエネルギー源に利用されます。
インスリン
分泌調節
- 血糖上昇によりβ細胞から分泌が促進され、血糖低下により分泌が抑制されます。
作用
- 細胞への糖(グルコース)の取り込みを促進し、血糖値を低下させます。
- 筋・肝細胞におけるグリコーゲンの合成を促進します。
- 脂肪組織において、グルコースから脂肪への転化を促進します。
分泌異常
- 分泌過剰症としてインスリノーマがあり、低血糖になります。
- 分泌低下症として糖尿病があり、高血糖になります。
ソマトスタチン
分泌
- δ細胞より分泌されます(視床下部など他の部位からも分泌されます)。
作用
- α細胞、β細胞に作用し、グルカゴン、インスリンの分泌を抑制します(視床下部から分泌されたソマトスタチンは、下垂体前葉からの成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモンなどの分泌を抑制します)
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