問題
問1:ホルモンについて、正しいのはどれか。
- GnRHは、ACTH放出ホルモンである。
- LHは、下垂体前葉から分泌される。
- PRLは、視床下部から分泌される。
- TRHは、下垂体前葉から分泌される。
- GHは、下垂体後葉から分泌される。
解答
正しい記述は、2 です。
解説
- GnRHはゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)放出ホルモンです。ACTH放出ホルモンは、CRH(コルチコトロピン放出ホルモン)です。
- 正しい記述です。LH(黄体形成ホルモン)は、下垂体前葉から分泌され、性腺(卵巣や精巣)の機能を調節します。
- PRL(プロラクチン)は、下垂体前葉から分泌されます。
- TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)は視床下部から分泌され、下垂体前葉に作用してTSH(甲状腺刺激ホルモン)の分泌を促進します。
- GH(成長ホルモン)は、下垂体前葉から分泌されます。下垂体後葉からは、オキシトシンやバソプレッシン(抗利尿ホルモン)が分泌されます。
問2:ホルモンについて、正しいのはどれか。
- 甲状腺刺激ホルモンは、甲状腺から分泌される。
- 成長ホルモンは、血糖低下作用をもつ。
- ACTHは、コルチゾールの分泌を促進する。
- FSHは、黄体形成ホルモンである。
- プロラクチンは、性腺機能を亢進する。
解答
正しい記述は、1 です。
解説
- 甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、下垂体前葉(下垂体前部)から分泌されます。甲状腺から分泌されるのは、主に甲状腺ホルモン(T3、T4)です。
- 成長ホルモン(GH)は、血糖値を上昇させる作用を持ちます。GHは、インスリン感受性の低下や糖新生促進により、血糖値を上昇させます。
- 正しい記述です。ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)は下垂体前葉から分泌され、副腎皮質に作用してコルチゾールの分泌を促進します。
- FSHは卵胞刺激ホルモンで、卵胞の成熟を促進します。黄体形成ホルモンは、LHです。
- プロラクチン(PRL)は性腺機能を抑制します。具体的には、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌を抑制し、結果としてゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン:LHとFSH)の分泌を減少させ、性腺の機能を抑制します。
問3:ホルモンについて、正しいのはどれか。
- 抗利尿ホルモンは、視床下部で合成される。
- バソプレッシンは、子宮収縮作用をもつ。
- ADHは、血糖上昇作用をもつ。
- オキシトシンは、副腎皮質から分泌される。
- オキシトシンは、血中Ca濃度を上昇させる。
解答
正しい記述は、1 です。
解説
- 正しい記述です。抗利尿ホルモン(ADH)、別名バソプレッシンは、視床下部で合成されます。合成された後、下垂体後葉に輸送され、そこから血中に分泌されます。
- バソプレッシン(ADH)は主に水の再吸収に関与し、体内に水分を保持させます。子宮収縮作用はオキシトシンの主な役割です。オキシトシンは、分娩時の子宮収縮や授乳時の乳腺からの乳汁分泌(射乳)を促進します。
- ADHの主な機能は水分保持であり、血糖値の調節には直接関与しません。血糖値の上昇には、グルカゴン、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモン、甲状腺ホルモンなどが関与します。
- オキシトシンは視床下部で合成され、下垂体後葉から分泌されます。副腎皮質はコルチゾールやアルドステロンなどを分泌します。
- オキシトシンの主な作用は、子宮収縮や射乳作用です。血中カルシウム濃度の調節には、パラトルモン(PTH)やカルシトニン、ビタミンDが関与します。
問4:ホルモンについて、正しいのはどれか。
- ストレスは、ACTHの分泌を抑制する。
- ドパミンは、プロラクチンの分泌を抑制する。
- 成長ホルモンが過剰になると、色素沈着を起こす。
- FSHは、排卵誘発作用を持つ。
- バソプレッシンは、血漿浸透圧低下により分泌が促進される。
解答
正しいのは、2 です。
解説
- ストレスは、ACTHの分泌を促進します。具体的には、ストレスにより視床下部からのCRHの分泌が促進され、その結果、下垂体前葉からのACTHの分泌が増加します。
- 正しい記述です。ドパミンは、プロラクチン抑制因子(PIF)として機能します。視床下部から分泌されたドパミンは下垂体前葉に作用し、プロラクチンの分泌を抑制します。
- 分泌過剰により色素沈着を起こすのは、ACTHです。
- 排卵誘発作用はLHによるものです。FSHの主な作用は卵胞の発育です。
- バソプレッシンは、血漿浸透圧上昇により分泌が促進されます。
ポイント
視床下部のホルモン
- 視床下部から分泌されるホルモンは、下垂体前葉ホルモンの分泌を促進または抑制します。
- 以下のホルモンは視床下部より分泌されて下垂体前葉に作用し、それぞれ成長ホルモン(GH)、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)の分泌を促進します。
視床下部ホルモン | 略称 |
---|---|
成長ホルモン放出ホルモン | GRH |
プロラクチン放出ホルモン | PRH |
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン | TRH |
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン | CRH |
ゴナドトロピン放出ホルモン | GnRH |

”〜放出ホルモン(〜Releasing Hormone:〜RH )”は、視床下部から分泌されると覚えておきましょう。
- 以下のホルモンは、視床下部から分泌され下垂体前葉からのホルモン分泌を抑制します。
視床下部ホルモン | 作用 |
---|---|
ソマトスタチン | 成長ホルモンの分泌を抑制する。 |
ドパミン | プロラクチンの分泌を抑制する。 |
下垂体前葉のホルモン
- 下垂体前葉からは、成長ホルモン(GH)、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、ゴナドトロピン(=性腺刺激ホルモン)が分泌されます。
成長ホルモン(GH)
分泌調節
- GRH(GHRH)により分泌が促進され、ソマトスタチンにより抑制されます。
- 睡眠初期に分泌が増加し、加齢とともに低下します。

作用
①代謝作用
- 糖新生を促進し、血糖値を上昇させます。
- 脂肪分解を促進し、血中遊離脂肪酸濃度を上昇させます。
- ナトリウム再吸収促進作用があります。

遊離脂肪酸は、肝臓や筋肉でエネルギー源として利用されます。
また、Naが再吸収されるときに水分も一緒に再吸収されるため、血液量が増加します。
そのため、GH過剰では血圧が上昇します。
②成長促進作用
- 骨端骨形成促進作用や蛋白合成促進作用を持ちます。

成長ホルモンは、身長を伸ばしたり、筋肉を大きくするホルモンと覚えておきましょう。
分泌異常症
- 成長期(骨端線閉鎖前)に分泌が過剰になると下垂体性巨人症、成長後(骨端線閉鎖後)に分泌が過剰になると末端肥大症(先端巨大症)を引き起こします。
- 分泌低下症として、成長ホルモン分泌不全性低身長があります。本疾患では知能の発達は正常です。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)
分泌調節
- 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)によって分泌が促進され、甲状腺ホルモン(T3、T4)の血中濃度が上昇すると抑制されます(負のフィードバック機構)。
作用
- 甲状腺ホルモン(T3、T4)の 合成促進や甲状腺の形態と重量の維持に関与します。
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
分泌調節
- 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)により分泌が促進され、糖質コルチコイド(コルチゾール)の血中濃度が増加すると、分泌が抑制されます。
- ストレスや低血糖により分泌が増加します。
作用
- 副腎皮質に作用し、副腎皮質ホルモンの合成分泌を促進します。
- 高濃度ではメラニン細胞刺激作用を示します。
分泌異常
- 下垂体腺腫によりACTHが過剰分泌されるとコルチゾール分泌が増加し、クッシング病を引き起こします。

クッシング病はクッシング症候群(コルチゾール過剰症)の一つです。
同義ではないので注意しましょう。
クッシング病ではACTHが過剰となるため、メラニン合成が促進され、症状として色素沈着を引き起こします。
性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)
- 性腺刺激ホルモンには、FSHとLHがあります。
分泌調節
- ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)により分泌が促進され、負のフィードバック機構により分泌が抑制されます(左下図)。
- 女性では、排卵直前にエストロゲンにより分泌が促進される正のフィードバック調節も受けます。

作用
①FSH
- 女性では、卵胞刺激ホルモンと呼ばれ、卵胞の発育を促進します。
- 男性では、精子形成ホルモンと呼ばれ、精巣の発育や精子形成を促進します。
②LH
- 女性では、黄体形成ホルモンと呼ばれ、成熟卵胞からのエストロゲン分泌促進作用、排卵誘発作用、黄体形成促進作用、黄体からのエストロゲン、プロゲステロンの分泌促進作用などを持ちます。
- 男性では、間質細胞刺激ホルモンと呼ばれ、テストステロンの分泌促進作用を持ちます。

問題に出題されるのは、FSH:卵胞刺激ホルモン、LH:黄体形成ホルモンなので、女性の場合をメインで覚えておいてください。
プロラクチン
分泌調節
- プロラクチン放出ホルモン(PRH)によって分泌が促進され、 ドパミンにより分泌が抑制されます。
- 妊娠や授乳によって分泌が促進されます。
作用
- 乳腺発育促進、乳汁産生・分泌促進
- 性腺機能抑制
分泌異常症
- 分泌過剰症として、高プロラクチン血症があります。
- 高プロラクチン血症では、乳汁漏出や無月経などの症状がみられます。
下垂体後葉のホルモン
- 下垂体後葉ホルモンは、視床下部の神経細胞(の細胞体)で合成され、軸索を通り下垂体後葉に運ばれ、そこから血液中に分泌されます。
- これを神経内分泌と呼びます。

バソプレッシン(AVP)/ 抗利尿ホルモン(ADH)
分泌調節
- 血漿浸透圧増加、循環血漿量減少、血圧低下などにより、分泌が促進されます。
- アルコールによって分泌が抑制されます。

お酒を飲むとトイレが近くなる理由の一つは、バソプレッシンの分泌が抑制されるからです。
作用
- 腎集合管における水の再吸収を促進し、体内に水分を保持します(体液量は増加し、浸透圧が低下します)。その結果、尿量が減少します。
- 大量では末梢血管収縮により血圧を上昇させます。


体液量が減少すると血漿中のNa+濃度が増加して浸透圧が上昇します。
浸透圧は、溶液中の溶質(この場合Na+)が水を引きつける力です。
このような時にADHの分泌が増加して体内に水分を保持し、Na+濃度を低下させて浸透圧を低下させます。
“体液が濃くなるとADHが分泌され、体液を薄める”と考えると理解しやすいかもしれません。
分泌異常症
- 下垂体後葉からの分泌が低下すると、(中枢性)尿崩症を引き起こします。
- 尿崩症はADHの作用不足により、多尿になる疾患です。
オキシトシン
分泌調節
- 妊娠、分娩(子宮頸管の伸展)、授乳(乳頭吸引刺激)などで分泌が増加します。
作用
- 乳腺腺房の平滑筋の収縮により、乳汁分泌を促します。これを射乳作用といいます。
- 子宮平滑筋を収縮させ、陣痛を誘発します。

プロラクチンは乳汁の産生を促進し、オキシトシンは赤ちゃんが乳頭に吸い付いたときに乳汁を射出します。
いずれも乳汁分泌促進作用を持ちますが、役割は異なります。
コメント