今回は、スピロヘータ感染症、クラミジア感染症、リケッチア感染症からの出題です。
問題
問1:疾患と病原体の組み合わせで正しいのはどれか。
- 回帰熱 ー リケッチア
- 日本紅斑熱 ー 原虫
- 梅毒 ー ウイルス
- オウム病 ー 真菌
- 発疹チフス ー リケッチア
解答
正しい組み合わせは、5 です。
解説
- 回帰熱の病原体は、スピロヘータ(ボレリア・レカレンティス)です。
- 日本紅斑熱の病原体は、リケッチア(リケッチア・ジャポニカ)です。
- 梅毒の病原体は、スピロヘータ(梅毒トレポネーマ)です。
- オウム病の病原体は、クラミジア(クラミジア・シッタシ)です。
- 正しい組み合わせです。
問2:疾患と病原体の組み合わせで正しいのはどれか。
- トラコーマ ー ウイルス
- ライム病 ー リケッチア
- ツツガムシ病 ー 原虫
- レプトスピラ症 ー スピロヘータ
- Q熱 ー クラミジア
解答
正しい組み合わせは、4 です。
解説
- トラコーマの病原体は、クラミジア(クラミジア・トラコマティス)です。
- ライム病の病原体は、スピロヘータ(ボレリア・ブルグドルフェリ)です。
- ツツガムシ病の病原体は、リケッチアです。
- 正しい組み合わせです。
- Q熱の病原体は、以前はリケッチアの一種と考えられていましたが、現在はレジオネラ目の細菌であるとされています。クラミジアではありません。
問3:疾患と媒介動物の組み合わせで正しいのはどれか。
- 日本紅斑熱 ー コモロジラミ
- 発疹チフス ー ネズミ
- 回帰熱 ー コガタアカイエカ
- ツツガムシ病 ー ノミ
- ライム病 ー マダニ
解答
正しい組み合わせは、5 です。
解説
- 日本紅斑熱は、リケッチアを保有するマダニの刺口により感染します。
- 発疹チフスは、患者の血液を吸血したコロモジラミによって媒介されます。ネズミが関連する感染症には、ペストやレプトスピラ症、ラッサ熱などがあります。ペスト菌はネズミなどのげっ歯類に保有され、それらを吸血したノミがヒトを刺すことで感染します。レプトスピラ菌は、ネズミなどの保菌動物の尿から排泄され、汚染された土壌などと接触することにより感染します。ラッサ熱は、ウイルスを保有するネズミ(マストミス)からヒトに感染し、ヒトからヒトに感染が拡大します。
- 回帰熱は、シラミやダニに媒介されるスピロヘータ感染症です。コガタアカイエカは、日本脳炎ウイルスを媒介する蚊の一種です。
- ツツガムシ病は、リケッチアを保有するツツガムシ(ダニの一種)により媒介されます。
- 正しい組み合わせです。ライム病はスピロヘータ感染症で、マダニによって媒介させます。
問4:正しいのはどれか。
- 発疹チフスの検査に、ワイル・フェリックス反応が用いられる。
- 日本紅斑熱では、抗ストレプトリジンO抗体が陽性となる。
- ワイル病は、リケッチア感染症である。
- Q熱は、ヒトだけの病気である。
- 日本紅斑熱は、1950年代以降国内での発症者は出ていない。
解答
正しい記述は、1 です
解説
- ワイル・フェリックス反応は、リケッチア感染症(発疹チフス、日本紅斑熱、ツツガムシ病など)に対して行われるスクリーニング検査です。
- 抗ストレプトリジンO抗体が陽性となるのは、猩紅熱など溶連菌の感染症です。
- ワイル病は黄疸出血性レプトスピラ症で、スピロヘータ感染症です。
- Q熱は、人畜共通感染症です。
- 日本紅斑熱ではなく、発疹チフスの記述です。日本紅斑熱は、近年増加傾向を示しています。
問5:疾患と症状の組み合わせで正しいのはどれか。
- 日本紅斑熱 ー 盗汗
- ツツガムシ病 ー 有痛性の刺し口
- 回帰熱 ー 遊走性紅斑
- オウム病 ー 結膜炎
- ワイル病 ー 肺炎
解答
正しい組み合わせは、2 です。
解説
- 盗汗は病的な寝汗のことで、結核や癌など全身が衰弱するような状態の時にみられます。日本紅斑熱では、発熱、発疹、刺し口(主要三徴候)などがみられます。
- 正しい組み合わせです。日本紅斑熱と同様、ツツガムシ病の主要な三徴候として、発熱、発疹、刺し口があり、ほとんどの症例でみられます。典型的なツツガムシ病の刺し口は、黒色痂皮を伴う有痛性紅斑です。
- 遊走性紅斑は、マダニに咬まれた部位が紅斑となり、ゆっくりと拡大していくもので、ライム病でみられます。回帰熱では、周期熱が特徴的な症状です。
- オウム病は吸入感染によるクラミジア感染症で、軽症であれば風邪症状、重症化すると肺炎症状がみられます。結膜炎は、トラコーマ(クラミジア感染症)でみられます。
- ワイル病は重症型のレプトスピラ症で、黄疸や出血傾向がみられます(黄疸出血性レプトスピラ症)。
ポイント
スピロヘータ感染症
- スピロヘータはらせん状のグラム陰性菌で、ヒトに病原性を示す菌には以下のようなものがあります。
分類 | 病原体(疾患) |
---|---|
トレポネーマ属 | 梅毒トレポネーマ(梅毒) |
ボレリア属 | ボレリア・ブルグドルフェリ(ライム病)、ボレリア・レカレンティス(回帰熱) |
レプトスピラ属 | レプトスピラ・インターロガンス [ 黄疸出血性レプトスピラ症(ワイル病)] |
回帰熱
- シラミやダニが媒介するスピロヘータ感染症です。
- 高熱が持続し、その後無熱期と有熱期を繰り返す周期熱となります。
ライム病
- マダニが媒介するスピロヘータ感染症です。
- 初期症状として、遊走性紅斑があります。
クラミジア感染症
- クラミジアは細胞内でのみ増殖可能な偏性細胞内寄生菌で、ヒトに感染する菌には以下のようなものが知られています。
代表菌 | 代表疾患 |
---|---|
クラミジア・トラコマティス | クラミジア結膜炎(トラコーマ)、性器クラミジア感染症 |
クラミジア・ニューモニエ | 肺炎クラミジア肺炎 |
クラミジア・シッタシ | オウム病 |
- 性器クラミジア感染症については、性感染症を参照してください。
オウム病
- クラミジア・シッタシの吸入感染による人畜共通感染症です(トリからヒトへ感染)。
- 乾性咳嗽、39℃以上の発熱、頭痛、比較的徐脈、肝脾腫などがみられます。
トラコーマ
- クラミジア・トラコマティスの接触感染により、結膜炎を起こす疾患です。
- 発展途上国で失明の原因となっています。
リケッチア感染症
- リケッチアは細胞内に寄生しないと増殖できない小さな細菌で、ダニ、ノミ、シラミなどの節足動物(ベクター:運び屋さん)を通じて感染します。
- 代表疾患とそれぞれのベクターを以下の表に示します。
代表疾患 | ベクター |
---|---|
発疹チフス | コロモジラミ |
ツツガムシ病 | ツツガムシ(ダニの一種) |
日本紅斑熱 | マダニ |
発疹チフス
- シラミによって媒介されるリケッチア感染症です。
- 患者の血液を吸血したコロモジラミに吸血されることで、感染します。
- 1~2週間の潜伏期後の稽留熱と紅斑性発疹が特徴的です。
- 重症例では、発疹が点状出血斑となり精神症状が出現します。
- 血清診断として、ワイル・フェリックス反応があります。
- 日本では1950年代以降、発症者はでていません。
ツツガムシ病
- ダニの一種であるツツガムシを媒介動物とする感染症です(4類感染症)。
- 悪寒、頭痛、発熱、全身の麻疹様皮疹、虫による刺し口(有痛性紅斑)などがみられます。
- 発熱、発疹、刺し口が主要三徴候です。
- 治療が遅れるとDIC(播種性血管内凝固症候群)を合併し、死因となります。
日本紅斑熱
- マダニに媒介されるリケッチア感染症で、近年増加傾向にあります。
- 発熱(38~40℃)後、四肢末端から紅斑が出現し、次第に出血性となります。
- 特有の刺し口がみられます。
- ツツガムシ病と同じく、発熱、発疹、刺し口が主要な三徴候です。
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