【循環器疾患】5択クイズで学ぶ!先天性心疾患のポイント(主要6疾患)

5択クイズで学ぶ
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先天性心疾患って、どれも重症なんですよね?

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(管理人)

確かにチアノーゼが出る場合は重症度が高いことが多いです。
でも一方で、無症状のまま進行する軽症の疾患も多いんですよ。
チアノーゼの有無で分類することは、試験でも大事なポイントです。

🔰 この記事について

本記事は、「解いて覚える基礎医学」をコンセプトに、診療情報管理士の認定試験(基礎・医学編)や医療系国家試験を目指す学習者向けに作成したクイズ形式の教材です。

今回取り上げる疾患は次のとおりです。

  • 心室中隔欠損症
  • 心房中隔欠損症
  • 動脈管開存
  • 肺動脈狭窄症
  • ファロー四徴症
  • アイゼンメンゲル症候群
    (診療情報管理士 基礎・医学編 8章 臨床医学各論Ⅴ)

📝 おすすめの学習方法

本記事は、5択クイズ+丁寧な解説を組み合わせ、短時間で効率よく学べる構成になっています。

学習ステップは以下のとおり👇

  1. まずは 5択クイズ に挑戦して理解度をチェック
  2. 解答・解説 を読みながら正しい知識を確認
  3. 要点まとめ解説 で知識を整理
  4. もう一度クイズにチャレンジし、知識を定着

💡 学習のポイント

  • 最初にクイズに挑戦することで出題のポイントが明確になり、効率的に勉強できます。
  • 診療情報管理士だけでなく、理学療法士・作業療法士・看護師・柔整師・鍼灸師など 幅広い医療系国家試験の受験生 にとっても短時間で復習できる記事となっています。

📄 PDFダウンロード対応
印刷しての復習はもちろん、講師の方が授業資料小テスト用としてもご利用いただけます。
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✏️ 5択クイズに挑戦!先天性心疾患のポイントをチェック

問1:先天性心疾患について、正しい記述はどれか。

  1. チアノーゼは、左 → 右短絡性疾患で出現する。
  2. ファロー四徴症は、非チアノーゼ先天性心疾患である。
  3. 先天性心疾患のうち、心室中隔欠損症の頻度は高くない。
  4. 肺動脈狭窄症は、比較的頻度の高い先天性心疾患である。
  5. 心室中隔欠損症は、アイゼンメンゲル化することはない。
解答

 正しい記述は、4 です。

解説
  1. 誤り。チアノーゼは 右→左短絡性疾患 で出現します。右心系の静脈血が大動脈を介して全身に流入することで、動脈血の酸素飽和度が低下し、全身性のチアノーゼがみられます。
    👉 チアノーゼについては【循環器疾患】主要症候と診断 をチェック
  2. 誤り。ファロー四徴症は代表的な チアノーゼ性心疾患 です。大動脈騎乗のため、右心室の血液が直接大動脈に流入し、右→左短絡となります。
  3. 誤り。心室中隔欠損症(VSD)は先天性心疾患の中で 最も頻度が高く(約20〜30%)、決して「頻度が高くない」わけではありません(大動脈二尖弁は統計から除外)。
  4. 正しい記述です。肺動脈狭窄症(PS)は全先天性心疾患のうち 7〜10 を占め、比較的頻度の高い疾患です。
  5. 誤り。アイゼンメンゲル化とは、左 → 右短絡性疾患が進行して右 → 左短絡に転じることを指します。心室中隔欠損症(VSD)も左 → 右短絡性疾患であり、進行すると肺高血圧を伴ってアイゼンメンゲル化する可能性があります
詳しい解説が見たい人へ

👉 先天性心疾患 の各項目へジャンプ

問2:ファロー四徴症でみられないのはどれか。

  1. 心房中隔欠損
  2. 心室中隔欠損
  3. 大動脈騎乗
  4. 肺動脈狭窄
  5. 右室肥大
解答

 ファロー四徴症でみられないのは、1 です。

解説

 ファロー四徴症は、肺動脈狭窄心室中隔欠損大動脈騎乗右室肥大の4つの心奇形を特徴とする疾患です。心房中隔欠損は含まれません

詳しい解説が見たい人へ

👉 ファロー四徴症 の解説へジャンプ

問3:先天性心疾患の病態や症状について、誤っている記述はどれか。

  1. 心室中隔欠損症では、左室の容量負荷が増大する。
  2. アイゼンメンゲル症候群では、チアノーゼやばち指がみられる。
  3. 心房中隔欠損症は、軽症ではほぼ無症状である。
  4. 動脈管開存症では、大脈・速脈となる。
  5. 肺動脈狭窄症では、左室の圧負荷が増大する。
解答

 誤っている記述は、5 です。

解説
  1. 正しい記述です。心室中隔欠損症(VSD)では、欠損孔を介して左室から右室へ血液が流入します。その結果、肺血流量が増加し、肺静脈を経て左房・左室への血流が増加するため、左心系に容量負荷がかかります。
  2. 正しい記述です。アイゼンメンゲル症候群は、長期間の左→右短絡が進行し、肺高血圧をきたして右→左短絡に転じた状態です。その結果、チアノーゼばち指 がみられます。
  3. 正しい記述です。心房中隔欠損症(ASD)は欠損孔の大きさにより重症度が異なります。小欠損の場合はほぼ無症状で経過することが多いです。
  4. 正しい記述です。動脈管開存症(PDA)では左室に容量負荷がかかり、拍出量増加収縮期血圧が上昇します。一方、拡張期には大動脈から肺動脈へ血液が流れるため拡張期血圧が低下します。結果として脈圧が開大し、大脈・速脈がみられます。
  5. 誤り。肺動脈狭窄症(PS)では、肺動脈への流出が障害されるため右室に圧負荷がかかります。左室ではありません。
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問4:先天性心疾患の診断について、正しい記述はどれか。

  1. 心室中隔欠損症では、Ⅱ音の固定性分裂がみられる。
  2. 心房中隔欠損症では、連続性雑音が聴取される。
  3. 動脈管開存症では、全収縮期逆流性雑音が聴取される。
  4. 肺動脈狭窄症では、心尖部の挙上と左第2弓の突出がみられる。
  5. アイゼンメンゲル症候群では、胸部X線の木靴型陰影が特徴的である。
解答

 正しい記述は、4 です。

解説
  1. 誤りⅡ音の固定性分裂は 心房中隔欠損症(ASD) の特徴所見です。VSDではみられません。
  2. 誤り連続性雑音 は 動脈管開存症(PDA) に特徴的です。ASDでは拡張期雑音駆出性雑音を聴取することがありますが、連続性雑音は聴かれません。
  3. 誤り全収縮期逆流性雑音 は 心室中隔欠損症(VSD) に特徴的です。PDAでは連続性雑音が聴かれます。
  4. 正しい記述です。肺動脈狭窄症(PS)では、右室圧負荷による 右室肥大 → 心尖部挙上 がみられます。また、狭窄後に拡張した肺動脈幹が胸部X線で 左第2弓の突出 として描出されます。
  5. 誤り木靴型心陰影 は ファロー四徴症(TOF) の典型所見です。右室肥大による心尖部挙上と、肺動脈狭窄による肺動脈陰影の減少が関与します。
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問5:先天性心疾患の治療や予後について、正しい記述はどれか。

  1. 心室中隔欠損症では、カテーテル治療が第一選択である。
  2. 心房中隔欠損症では、自然閉鎖することが多い。
  3. 動脈管開存症の手術後の予後は、良好である。
  4. 肺動脈狭窄症では、カテーテル治療は禁忌である。
  5. アイゼンメンゲル症候群では、早期にシャント閉鎖手術を行う。
解答

 正しい記述は、3 です。

解説
  1. 誤り。心室中隔欠損症(VSD)は軽症であれば 自然閉鎖する例が多く、カテーテル治療は一般的ではありません。重症例では外科的閉鎖術が行われます。
  2. 誤り。心房中隔欠損症(ASD)は 自然閉鎖は少なく、多くはカテーテル閉鎖術や外科的手術が必要です。
  3. 正しい記述です。動脈管開存症(PDA)は、カテーテル治療や手術で動脈管を閉鎖すれば、予後は良好です。
  4. 誤り。肺動脈狭窄症(PS)では、経皮的バルーン肺動脈弁形成術(PTPV) が第一選択であり、カテーテル治療は禁忌ではありません。
  5. 誤り。アイゼンメンゲル症候群では、肺高血圧が高度に進行しているため シャント閉鎖は禁忌 です。心肺移植などの対応が検討されます。
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🔍 要点まとめ|先天性心疾患の特徴を整理

先天性心疾患

  • 先天性心疾患は、胎生期における心臓や大血管の形成異常によって発症します。
  • 多くは右心系と左心系の間交通シャント:短絡)を生じる構造異常です。
  • シャント部分では、圧の高い側から低い側へ血流が流れます。
  • チアノーゼは、右 → 左シャントまたは両方向性シャントで出現します。
  • 左 → 右シャントでは、チアノーゼは通常みられません。
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代表的なチアノーゼ性心疾患(右 → 左シャント)は、

  • ファロー四徴症
  • アイゼンメンゲル症候群 です。

心室中隔欠損症:Ventricular Septal Defect (VSD)

概念

  • 心室中隔に欠損孔があり、その孔を通して左心室から右心室・肺動脈へ動脈血の一部が流入する疾患です(左→右シャント)。

頻度

  • 大動脈二尖弁を除けば、先天性心疾患の中で最も頻度が高い疾患です。
    通常3枚の大動脈弁が2枚しかない先天異常で、比較的頻度が高く、大動脈弁狭窄症や閉鎖不全症の原因となります。

病態

  • 心室中隔欠損症では、左心室の血液が欠損孔を介して右心室へ流入し(左→右シャント)、肺動脈へ過剰な流が送られます。
  • その結果、肺血流増加 → 左心房・左心室への容量負荷 → 左房・左室の拡大が生じます。
  • 進行すると肺血流の増加により肺高血圧を生じ、右室圧負荷が増大して右室肥大をきたします。
    👉 容量負荷・圧負荷については、【循環器疾患】心弁膜症 をチェック
  • 重症例ではEisenmenger症候群に移行し、右→左シャントとなってチアノーゼを呈します。
心室中隔欠損症(VSD)の図解。左室から右室への左→右シャントにより肺血流が増加し、肺高血圧や右室肥大を経てアイゼンメンゲル症候群に進展する先天性心疾患の流れを示す。
図1:心室中隔欠損症(Ventricular Septal Defect, VSD)
左室から右室へ血流が流れる「左→右シャント」により肺血流量が増加する。
進行すると肺高血圧から右室肥大を生じ、アイゼンメンゲル症候群へ移行する場合がある。
出典:北海道心臓協会 フリーイラスト集

分類(Kirklin分類)

  1. Ⅰ型:肺動脈弁下部欠損(流出部・漏斗部欠損)
  2. Ⅱ型:膜性部欠損(最も多い)
  3. Ⅲ型:流入部欠損
  4. Ⅳ型:筋性中隔欠損
心室中隔欠損孔はなぜ膜性部欠損が多いのか?

心室中隔は大部分が心筋でできていますが、流出路付近には小さな膜性部があります。
膜性部は発生学的に複数の組織が合流して形成されるため閉鎖不全が起こりやすく、VSDの多くはこの部位に生じます(膜性部欠損)。

症状

  • 小〜中欠損:無症状または易疲労性
  • 大欠損:多呼吸、哺乳困難、体重増加不良、発汗
  • 感染性心内膜炎の合併に注意が必要です
VSDで感染性内膜炎を合併する理由は?

VSDでは欠損孔を通る乱流により内膜が障害され、そこに細菌が付着しやすいため、感染性心内膜炎のリスクが高まります。

診断のポイント

  • 心音:全収縮期逆流性雑音、スリル(胸壁で触知できる振動)
  • 心電図:小〜中欠損では左室肥大、大欠損では両室肥大
  • 胸部X線:大欠損では肺動脈の突出

治療

  • 軽症例:経過観察。小欠損の多くは2歳までに自然閉鎖します。
  • 大欠損例:外科的に欠損孔を閉鎖します。
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VSDは 自然閉鎖することがある のが大きな特徴です。
特に小欠損では2歳までに閉じることが多いです。
ただし、大欠損では合併症リスクが高く、感染性心内膜炎にも注意が必要です。

📍Eisenmenger(アイゼンメンゲル)症候群
アイゼンメンゲル症候群の模式図。先天性心疾患における左→右シャントが進行し、肺高血圧により右心圧>左心圧となり、右→左シャントへ逆転してチアノーゼが生じる過程を示す。
図2:アイゼンメンゲル症候群(Eisenmenger syndrome)
左→右シャント性心疾患が進行して肺高血圧を来すと、右心圧が左心圧を上回り「右→左シャント」に転じる。
これによりチアノーゼが出現する。
出典:北海道心臓協会 フリーイラスト集

概念

  • 左→右シャント性心疾患が進行し、続発性の肺高血圧をきたした結果、右心圧が左心圧を上回り、右→左シャントへと転換した病態を指します。

原因となる疾患

  • 心室中隔欠損症(VSD)
  • 動脈管開存症(PDA)
  • 心房中隔欠損症(ASD:特に一次孔欠損型)
  • 房室中隔欠損症(AVSD:心房中隔・心室中隔・房室弁の形成異常を含む疾患群)
    など

症状

  • 主な症状は チアノーゼ・労作性呼吸困難・易疲労感 です。
    👉 チアノーゼについては【循環器疾患】主要症候と診断 をチェック
  • 長期的なチアノーゼの持続によりばち指が出現します。
  • そのほか、狭心痛動悸がみられることがあります。
  • 進行例では喀血失神をきたすこともあります。
ばち指とは?

手指末端の爪が丸く太鼓のバチのように膨らむ状態で、慢性の低酸素血症により生じます。
チアノーゼ性先天性心疾患慢性肺疾患でみられます。

治療

  • 肺高血圧が増悪するため、原疾患に対する手術は禁忌とされます。
  • 対症療法や肺移植などが検討されますが、予後は不良です。
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アイゼンメンゲル症候群は “手術禁忌” が最大のポイントです。
左→右シャントが右→左に転換してしまった後は、原疾患を閉じても肺高血圧が悪化するだけなので、手術はできません。

心房中隔欠損症:Atrial Septal Defect (ASD)

概念

  • 心房中隔の発育障害によって欠損孔が生じ、左心房から右心房に血液が流入する疾患です。

病態

  • 心房中隔欠損症(ASD)では、左房の血液が右房へ流入する左→右シャントが生じます。
  • その結果、右心房・右心室に容量負荷がかかり、右心系が拡大します。
    👉 容量負荷・圧負荷については、【循環器疾患】心弁膜症 をチェック
  • また、肺血流が増加するため肺動脈の拡大を伴い、進行すると肺高血圧Eisenmenger症候群(右→左シャント)に至ることがあります。
心房中隔欠損症(ASD)の図解。左房から右房への左→右シャントにより右心系の容量負荷と肺血流増加を起こし、進行すると肺高血圧やアイゼンメンゲル症候群へ移行する。
図3:心房中隔欠損症(Atrial Septal Defect, ASD)
心房中隔に欠損孔があることで左→右シャントが生じる。
右心系の容量負荷と肺血流増加が進行すると、肺高血圧やアイゼンメンゲル症候群に移行することがある。
出典:北海道心臓協会 フリーイラスト集

分類

  • 欠損孔の位置により以下の型に分類されます。
    • 二次孔欠損型(最も多い。卵円窩に穴が残存するタイプ)
    • 一次孔欠損型
    • 静脈洞欠損型
    • 冠静脈洞型(下位欠損型)

※卵円窩とは、胎生期に心房中隔に存在する卵円孔が出生後に閉じてくぼみとなったものです。

症状

  • 小児期:代償機構により無症状のことが多いです。
  • 思春期〜中年期以降:労作性呼吸困難易疲労性が出現します。

診断のポイント

  • 心音:Ⅱ音の固定性分裂(ASDの特徴的所見)
  • 心電図:不完全右脚ブロック(右脚伝導遅延)
  • 心エコー:欠損孔の位置・大きさを確認
  • その他:心カテーテル、胸部X線などで評価
  • Ⅱ音は、大動脈弁の閉鎖音(IIA肺動脈弁の閉鎖音(IIPから成ります。
  • 正常では、吸気時に静脈還流が増えて右室収縮時間が延長するため、肺動脈の閉鎖(IIPが遅れて2つの音が分裂します。
  • 心房中隔欠損症(ASD)では、右心系への血流が常に増加しているため、呼吸にかかわらずIIAとIIP間隔が固定されます
心音図で示すⅡ音の固定性分裂。正常では呼吸によりⅡ音の分裂幅が変動するが、心房中隔欠損症(ASD)では分裂幅が一定となる特徴的な所見。
図4:Ⅱ音の固定性分裂
正常では吸気時にⅡ音(大動脈弁成分A2と肺動脈弁成分P2)の分裂幅が変動するが、ASDでは常に分裂幅が一定となり「固定性分裂」が認められる。

治療

  • 軽症例では無治療で経過観察されますが、自然閉鎖は少ないです。
  • 心室中隔欠損症(VSD)とは異なり、カテーテル治療が可能です。
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ASDでは、Ⅱ音の固定性分裂が最重要ポイント です。
また、VSDは自然閉鎖しやすいけれど、ASDは自然閉鎖が少なくカテーテル治療が可能なのが特徴です。

動脈管開存症(Botallo管開存):Patent Ductus Arteriosus (PDA)

動脈管開存症(PDA)の図。大動脈と肺動脈をつなぐ動脈管が閉鎖せず残存し、左→右シャントによって肺血流増加、左心系容量負荷、肺高血圧を引き起こす先天性心疾患。
図5:動脈管開存(Patent Ductus Arteriosus, PDA)
大動脈と肺動脈の間に胎児期の動脈管が残存し、左→右シャントが生じる。
肺血流増加により左心系容量負荷や肺高血圧を来す。
出典:OpenStax “Blausen 0707 – Patent ductus arteriosus” by Blausen.com staff (2014), CC BY. Source: WikiJournal of Medicine/Medical gallery of Blausen Medical 2014

概念

  • 胎生期には肺循環をバイパスする血管(動脈管)が存在します。
  • 通常は出生後まもなく閉鎖しますが、閉じずに開いたまま残ると 動脈管開存(PDA) となり、大動脈から肺動脈へ血液が流入します。

原因・リスク

  • 未熟児
  • 先天性風疹症候群(母体が妊娠初期に風疹に罹患するとリスクが上がる)

病態

  • 動脈管開存症(PDA)では、大動脈から肺動脈へ血液が流入する左→右シャントが生じます。
  • その結果、肺血流が増加して肺動脈に容量負荷がかかり、左房・左室にも容量負荷が生じて拡大します。
    👉 容量負荷・圧負荷については、【循環器疾患】心弁膜症 をチェック
  • 進行すると肺高血圧をきたし、重症例ではEisenmenger症候群(右→左シャント)へ移行することがあります。

症状

  • 脈圧の増大速脈
  • 労作時呼吸困難や心不全症状が出ることもあります
  • 無症状で経過する例も少なくありません。
PDAで大脈・速脈になるのはなぜ?

PDAでは大動脈から肺動脈への短絡により肺血流が増加し、左心系に容量負荷がかかります。その結果、左室拍出量が増えて収縮期血圧が上昇するとともに、拡張期には大動脈から血液が肺動脈へ漏れるため拡張期血圧が低下します。
これにより脈圧が開大し、大脈・速脈がみられます。

診断のポイント

  • 聴診:収縮期から拡張期にかけて持続する 連続性雑音 が特徴
  • 胸部X線:肺血管陰影の増強
  • 心電図:左室肥大
  • 心エコー・心臓カテーテル・血管造影で確定診断

治療

  • 基本的に早期に閉鎖術を行う(カテーテル閉鎖術や外科的手術)
  • 適切に治療すれば予後は良好です。
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PDAといえば、連続性雑音が重要ポイント!
他の疾患でも聴かれますが、試験では“連続性雑音=PDA”と覚えておけばOKです。

肺動脈狭窄症:Pulmonary Stenosis (PS)

概念

  • 先天的に肺動脈の狭窄があり、右心室に圧負荷がかかる疾患です。

頻度

  • 全先天性心疾患の約 10% を占めます。

病態

  • 肺動脈狭窄症(PS)では、先天的に肺動脈弁やその周囲が狭窄しているため、右心室から肺動脈への血液駆出が障害されます。
  • その結果、右心室に圧負荷がかかり、進行すると右室肥大をきたします。
  • 狭窄が高度になると、右房圧も上昇し、右心不全チアノーゼを呈することがあります。
肺動脈狭窄症(PS)の模式図。肺動脈弁の狭窄により右心室が圧負荷を受け、右室肥大をきたす先天性心疾患。
図6:肺動脈狭窄症(Pulmonary Stenosis, PS)
肺動脈弁またはその周囲の狭窄により右心室が圧負荷を受け、右室肥大をきたす。
重症例ではチアノーゼを伴うこともある。
出典:”LadyofHats – Drawing Pulmonary valve stenosis – English labels” by Mariana Ruiz Villarreal, Public Domain.

症状

  • 軽症〜中等症では 無症状 のことが多いです。
  • 重症例では 労作時呼吸困難チアノーゼ、易疲労感 などを認めます。

診断のポイント

  • 胸部X線:右心負荷により 心尖部の挙上 と 左第2弓(肺動脈弓)の突出
    👉 左第2弓については 【循環器疾患】胸部X線検査 を参照
  • 心電図:右室肥大所見
  • 心エコー:狭窄部位や圧較差を評価
圧較差とは?

肺動脈狭窄症(PS)の重症度は、心エコーで狭窄部を通る血流の速さを測定し、その結果から「右心室と肺動脈の圧の差(圧較差)」を推定して評価します。
圧較差が大きいほど狭窄は重症とされます。

治療

  • 軽症例:経過観察
  • 中等症〜重症例:経皮的バルーン肺動脈弁形成術(PTPV) が第一選択
  • 外科的弁切開術を行う場合もあります。
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胸部X線で“心尖部の挙上”といわれるのは、右室肥大によって心尖部が上に持ち上げられるからです。
治療は、カテーテル先端のバルーンで狭窄部を広げる PTPVが第一選択です。

ファロー四徴症:Tetralogy of Fallot (TOF)

概念

  • 4つの心奇形を伴う先天性心疾患です。特徴的なのは以下の4徴です:
  1. 肺動脈狭窄:右室流出路の狭窄により右室圧が上昇します。
  2. 心室中隔欠損症(VSD):欠損孔が大きいため、右左シャントが生じやすいです。
  3. 大動脈騎乗:心室中隔欠損孔が大動脈の根元にあるため、大動脈が左右の心室にまたがって位置します。
  4. 右室肥大:右室の圧負荷が持続することで二次的に生じます。
ファロー四徴症(TOF)の図解。①肺動脈狭窄、②心室中隔欠損、③大動脈騎乗、④右室肥大の4つの特徴を持つチアノーゼ性先天性心疾患で、代表的なチアノーゼ型心疾患。
図7:ファロー四徴症(Tetralogy of Fallot, TOF)
肺動脈狭窄、心室中隔欠損、大動脈騎乗、右室肥大の4つの心奇形からなる。
右→左シャントによりチアノーゼを呈する代表的な先天性心疾患。
出典:”LadyofHats – Drawing Tetralogy of Fallot – English labels” by Mariana Ruiz Villarreal, Public Domain.
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4つの奇形がバラバラにあるのではなく、
①肺動脈狭窄と②VSDが原因となって、③大動脈騎乗と④右室肥大が二次的に生じる
と理解すると覚えやすいです。

症状

  • 新生児期以降にチアノーゼが出現します。
  • 生後2〜3か月頃からは、動脈血酸素が低下する 無酸素発作(低酸素発作) を認めることがあります(泣いたときや授乳時に悪化するのが特徴です)。
無酸素発作とは?

無酸素発作とは、ファロー四徴症にみられる急激なチアノーゼ発作で、啼泣運動後に肺動脈狭窄が強まり、右→左シャントが増大して生じます。
小児ではしゃがみ込み姿勢(蹲踞;そんきょ)をとることが特徴的です。

診断のポイント

  • 聴診:収縮期駆出性雑音(肺動脈狭窄による)
  • 心電図:右軸偏位(右室肥大の所見)
  • 胸部X線:主肺動脈部の陥凹と心尖部の挙上を反映し、木靴型心陰影(Coeur en sabot) を呈します。

📝 チェックリストで心弁膜症の最重要ポイントを一気に確認!

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時間がない時は、この最重要ポイントだけチェック!
非チアノーゼ性疾患→
チアノーゼ性疾患→ で囲みました。

VSD(心室中隔欠損症)
  • 最も頻度が高い先天性心疾患
  • 小欠損は自然閉鎖が多い
  • 左→右シャント
    → 肺血流増加・左心系容量負荷
  • 進行するとEisenmenger症候群
ASD(心房中隔欠損症)
  • 左→右シャント → 右房・右室拡大
  • Ⅱ音の固定性分裂 が特徴
  • カテーテル治療が可能
  • 進行するとEisenmenger症候群
PDA(動脈管開存症)
  • 大動脈→肺動脈への左→右シャント
  • 連続性雑音、大脈・速脈
  • 肺血流増加
    → 左心系容量負荷・肺高血圧
  • 手術後は予後良好
PS(肺動脈狭窄症)
  • 肺動脈弁狭窄
    → 右心室圧負荷・右室肥大
  • X線:心尖部挙上・左第2弓の突出
  • 手術後は予後良好
TOF(ファロー四徴症)
  • ①肺動脈狭窄 ②心室中隔欠損
    ③大動脈騎乗 ④右室肥大
  • 代表的チアノーゼ性心疾患
  • 無酸素発作・蹲踞姿勢・ばち指
  • 胸部X線:木靴型心陰影
Eisenmenger症候群
  • 左→右シャント疾患が進行して発症
  • 肺高血圧により右心圧>左心圧
    → 右→左シャントへ逆転
  • 呼吸困難・チアノーゼ・ばち指
  • シャント閉鎖手術は禁忌

※ 記事作成には正確を期しておりますが、内容に誤りや改善点がございましたら、お知らせいただけますと幸いです。今後の教材作成の参考にさせていただきます。

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