【循環器疾患】5択クイズで学ぶ!心弁膜症(僧帽弁・大動脈弁)の代表4疾患を図解で整理

5択クイズで学ぶ
学生
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先生、心弁膜症が苦手です…。
狭窄とか閉鎖不全とか、特徴がごちゃごちゃになってしまいます。。

講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

それは病態を理解せずに丸暗記してしまっているからですね。
まず正常な弁の動きを押さえてから、クイズで疾患ごとの重要ポイントを確認しっていきましょう!

🔰 この記事について

本記事は、診療情報管理士の認定試験(基礎・医学編)の受験者をはじめ、医療系国家試験を目指す学習者のために作成したクイズ形式で学べる教材です。

今回取り上げる疾患は次のとおりです。

  • 僧帽弁狭窄症
  • 僧帽弁閉鎖不全
  • 大動脈弁狭窄症
  • 大動脈閉鎖不全
    (診療情報管理士 基礎・医学編 8章 臨床医学各論Ⅴ)

📝 おすすめの学習方法

本記事は、5択クイズ+丁寧な解説を組み合わせ、短時間で効率よく学べる構成になっています。

学習ステップは以下のとおり👇

  1. まずは 5択クイズ に挑戦して理解度をチェック
  2. 解答・解説 を読みながら正しい知識を確認
  3. 要点まとめ解説 で知識を整理
  4. もう一度クイズにチャレンジし、知識を定着

💡 学習のポイント

  • 最初にクイズに挑戦することで出題のポイントが明確になり、効率的に勉強できます。
  • 診療情報管理士だけでなく、理学療法士・作業療法士・看護師・柔整師・鍼灸師など 幅広い医療系国家試験の受験生 にとっても短時間で復習できる記事となっています。

📄 PDFダウンロード対応
印刷しての復習はもちろん、講師の方が授業資料小テスト用としてもご利用いただけます。
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✏️ 5択クイズに挑戦!心弁膜症のポイントをチェック

問1:心臓弁や心弁膜症について、正しい記述はどれか。

  1. 正常では、大動脈弁は心収縮期に閉じる。
  2. 正常では、三尖弁は心拡張期に開く。
  3. 僧帽弁は、右心室から右心房への逆流を防止する。
  4. 弁狭窄症では、血液の逆流が生じる。
  5. 弁閉鎖不全症は、先天性心疾患として発症することが多い。
解答

 正しい記述は、2 です。

解説
  1. 誤り。正常では、大動脈弁は心収縮期に開き、左心室の血液が大動脈に送り出されます。
  2. 正しい記述です。正常では、三尖弁は心拡張期に開き、右心房の血液が右心室に流入します。
  3. 誤り。僧帽弁は左心房左心室の間にあり、左心室から左心房への逆流を防止します。
  4. 誤り。弁狭窄症では、弁が十分に開かないために血液の通過が障害されます。逆流が生じるのは弁閉鎖不全症です。
  5. 誤り。弁閉鎖不全症などの心弁膜症は、リウマチ熱や感染性心内膜炎などの後天性要因が多く、先天性はまれです。
詳しい解説が見たい人へ

👉 心弁膜症(心弁膜性疾患) の解説へジャンプ

問2:僧帽弁狭窄症について、正しい記述はどれか。

  1. 原因は、僧帽弁逸脱症が多い。
  2. 収縮期に血液の逆流が生じる。
  3. 左心房圧が低下する。
  4. 心房細動を併発することはまれである。
  5. 拡張期に遠雷様の雑音が聴取される。
解答

 正しい記述は、5 です。

解説
  1. 誤り。主な原因はリウマチ熱です。僧帽弁逸脱症は、僧帽弁閉鎖不全の代表的な原因の一つです。
  2. 誤り。僧帽弁狭窄症では拡張期左心房から左心室への血流が障害されます。収縮期の逆流は僧帽弁閉鎖不全症の所見です。
  3. 誤り。血液が左心房に貯留するため、左心房圧は上昇します。その結果、肺高血圧右心不全につながります。
  4. 誤り左心房が拡大すると電気の流れが不安定になり、心房細動をしばしば合併します。心房細動は脳塞栓症のリスク因子となります。
  5. 正しい記述です。拡張期に狭い弁口を血液が通過するとき、「遠雷様の拡張期ランブル」と呼ばれる雑音が聴取されます。
詳しい解説が見たい人へ

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問3:大動脈弁狭窄症について、正しい記述はどれか。

  1. 左心に容量負荷がかかる。
  2. 狭心痛・労作性呼吸困難・チアノーゼが三徴である。
  3. 大脈・速脈となる。
  4. II音の固定性分裂により診断される。
  5. 重症例では、経カテーテル大動脈弁治療が行われる。
解答

 正しい記述は、5 です。

解説
  1. 誤り。大動脈弁狭窄により、左心室圧負荷がかかります。一方、大動脈弁閉鎖不全では、逆流により左心室に容量負荷がかかります。
  2. 誤り。大動脈弁狭窄症の三徴は狭心痛・労作時呼吸困難・失神であり、チアノーゼはむしろ先天性心疾患(例:ファロー四徴症)で代表的にみられる所見です。
  3. 誤り。心拍出量が制限されるため、脈は小さく立ち上がりが遅い小脈・遅脈)のが特徴です。
  4. 誤り。II音の固定性分裂は心房中隔欠損症(ASD)の特徴です。大動脈弁狭窄症では、胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音が聴取されます。
  5. 正しい記述です。重症の大動脈弁狭窄症では、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI/TAVR)が行われます。開胸手術に比べ体への負担が少なく、高齢者やハイリスク例で広く用いられています。
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問4:心弁膜症について、誤っているのはどれか。

  1. 僧帽弁閉鎖不全の原因として、心筋梗塞がある。
  2. 大動脈狭窄症の原因として、先天性二尖弁がある。
  3. 大動脈弁閉鎖不全では、突然死の頻度が高い。
  4. 僧帽弁狭窄症では、左心房内に血栓ができやすい。
  5. 僧帽弁閉鎖不全では、左心不全症状がみられる。
解答

 誤っている記述は、3 です。

解説
  1. 正しい記述です。心筋梗塞後では、乳頭筋の障害左心室拡大によって弁尖の閉鎖が不十分となり、僧帽弁閉鎖不全が生じます。
  2. 正しい記述です。大動脈弁狭窄症の原因としては、先天性二尖弁・リウマチ性・加齢による変性(石灰化)が代表的です。
  3. 誤り。突然死の頻度が多いのは大動脈弁狭窄症です。特に狭心痛・失神・労作時呼吸困難など症状が出現してからが危険で、無症候の間はリスクは比較的少ないとされています。
  4. 正しい記述です。僧帽弁狭窄症では、左心房圧上昇により左心房が拡大し、心房細動の合併+血流うっ滞を背景に、特に左心耳に血栓ができやすくなります。
  5. 正しい記述です。僧帽弁閉鎖不全症では、左室から左房への逆流により左心不全症状(労作時呼吸困難・肺うっ血など)が出現します。

🔍 要点まとめ|心弁膜症の特徴を整理

心弁膜症(心弁膜性疾患)

  • 心弁膜症とは、心臓弁やその支持組織(腱索・乳頭筋など)の異常によって、弁の開閉が障害される疾患です。
  • その結果、血流の一方向性が保てなくなり、心臓に過負荷がかかります。
  • 主な病態は次の3つに分類されます。
  • 弁狭窄症:弁が十分に開かず、血液が流れにくくなる状態
  • 弁閉鎖不全症(逆流症):弁が完全に閉じず、血液が逆流する状態
  • 混合型:狭窄と逆流が同時にみられる状態

正常な弁の動き

  • 心臓の弁は、血液が一方向に流れるように「開閉」をくり返しています。
  • 弁膜症の理解には、まず正常時にどの弁がいつ開き、いつ閉じるのかを把握することが大切です。
時期心室の状態開いている弁閉じている弁
拡張期心室が拡張し、
血液を受け入れる
房室弁
(僧帽弁・三尖弁)
動脈弁
(大動脈弁・肺動脈弁)
収縮期心室が収縮し、
血液を送り出す
動脈弁
(大動脈弁・肺動脈弁)
房室弁
(僧帽弁・三尖弁)
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心弁膜症を理解するためには、「正常な弁の動き」を理解することが必須です。
心臓弁については、2章の【循環器】心臓の弁(heart valve)の記事でも復習しておきましょう。

拡張期の心臓模式図。僧帽弁・三尖弁が開き、動脈弁が閉じて心房から心室へ血液が流入している様子。
図1:正常な弁の動き(拡張期)
心室拡張期には房室弁(僧帽弁・三尖弁)が開き、動脈弁(大動脈弁・肺動脈弁)は閉じている。血液が心房から心室へ流入する。
出典:SMART SERVIER MEDICAL ART(CC BY 3.0)
収縮期の心臓模式図。大動脈弁・肺動脈弁が開き、僧帽弁・三尖弁は閉じて心室から動脈へ血液が送り出されている様子。
図2:正常な弁の動き(収縮期)
心室収縮期には動脈弁(大動脈弁・肺動脈弁)が開き、房室弁(僧帽弁・三尖弁)は閉じている。血液が心室から大動脈・肺動脈へ駆出される。
出典:SMART SERVIER MEDICAL ART(CC BY 3.0)

僧帽弁狭窄症:Mitral Stenosis (MS)

概念

  • 僧帽弁が狭くなり、拡張期左心房から左心室への血液流入が障害される状態です。

原因

  • 主な原因は リウマチ熱の後遺症 で、女性に多くみられます。
    👉 リウマチ熱について詳しくはこちら
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リウマチ熱は現在では減少していますが、試験では “僧帽弁狭窄症=リウマチ熱の後遺症”として、問われることも多いです。

病態

  • 僧帽弁口が狭くなることで、拡張期左心房から左心室への血流が障害されます。
  • その結果、左心房圧が上昇して左心房拡大をきたし、心房細動のリスクが増加します。
  • 左心房圧の上昇は肺静脈・肺毛細血管に波及し、肺うっ血・肺高血圧へと進行します。
  • さらに進行すると右心系に負荷がかかり、右室肥大・右心不全をきたすようになります。
僧帽弁狭窄症の病態図。僧帽弁が開かず左房圧上昇、左房拡大・心房細動リスク、肺うっ血から右心不全へ進行する流れを示す。
図3:僧帽弁狭窄症の病態
僧帽弁が十分に開かず、左心房圧上昇から左房拡大・肺うっ血・肺高血圧・右心不全へと進展する血行動態の模式図。
出典:北海道心臓協会 フリーイラスト集

👉 圧負荷については こちらで解説

症状

  • 肺うっ血による労作性呼吸困難が出現します。
  • 心房細動によって動悸脈不整を起こすことがあります。
  • 進行すると右心不全症状がみられることもあります。

診断のポイント

  • 心音ではⅠ音の亢進や、拡張期の「遠雷様雑音」が特徴です。
     👉 心音(Ⅰ音やⅡ音)については、こちら
  • 心エコーでは弁口面積の減少が確認されます。

僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流症):Mitral Regurgitation (MR)

概念

  • 僧帽弁が完全に閉じず、収縮期左心室から左心房へ血液が逆流する状態です。
  • Regurgitation は「逆流」という意味で、僧帽弁逆流症とも呼ばれます。

原因

  • 主な原因は以下の通りです。
    • 僧帽弁逸脱症(僧帽弁が収縮期に左心房側へ膨らむ病態。弁がしっかり閉じず逆流を生じる)
    • リウマチ性変化
    • 腱索断裂
    • 左心室拡大(心筋梗塞や心不全によるもの)

病態

  • 僧帽弁が完全に閉じなくなると、収縮期左心室から左心房へ血液が逆流します。
  • 逆流によって左心房が容量負荷を受けて拡大し、心房細動のリスクが高まります。
  • 左心房への逆流は肺静脈に圧を伝え、肺うっ血を引き起こします。
  • 左心室もまた、逆流により有効な拍出量が減少し、代償的に拡大・肥大をきたします。
  • 進行すると、肺高血圧から右心系にも負荷がかかり、最終的には右心不全に至ることがあります。
僧帽弁閉鎖不全症の病態図。収縮期に左室から左房へ逆流、左房拡大、肺うっ血へとつながる様子。
図4:僧帽弁閉鎖不全症の病態
僧帽弁が閉じず、収縮期に左室から左房へ血液が逆流し、左房拡大・肺うっ血をきたす血行動態の模式図。
出典:北海道心臓協会 フリーイラスト集

症状

  • 左心不全症状(労作時呼吸困難、動悸、息切れ、易疲労感)
  • 進行例では発作性夜間呼吸困難起坐呼吸がみられます

診断のポイント

  • 聴診:Ⅰ音の減弱Ⅲ音の出現全収縮期逆流性雑音が特徴です
  • 心電図:左室肥大心房細動(AF)がみられることがあります
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雑音の時期は「弁がトラブルを起こすタイミング」で考えると整理できます。
僧帽弁が狭窄すると、拡張期にトラブルが生じる → 拡張期雑音
僧帽弁が閉まらないと、収縮期にトラブルが生じる→ 収縮期雑音
※大動脈弁では逆になるので注意しましょう。

治療

  • 内科的治療:心不全に対する薬物治療を行います
  • 外科的治療:僧帽弁形成術僧帽弁置換術が選択されます
  • 開胸し、一時的に人工心肺装置を用いて行います。
  • 外科的治療には 弁形成術 と 弁置換術 があります。

弁形成術

  • 人工弁輪などを用いて、患者自身の弁を修復し、機能を回復させる方法です。
  • 可能であれば第一選択となります。

弁置換術

  • 障害された弁を取り除き、生体弁や機械弁に置き換える方法です。
  • それぞれの弁には特徴があり、患者の年齢や合併症に応じて選択されます。

大動脈弁狭窄症:Aortic Stenosis (AS)

概念

  • 大動脈弁が狭くなり、収縮期左心室から大動脈への血液駆出が障害される病態です。

原因

  • 大動脈二尖弁(本来3つの弁尖が2つしかなく、若年で弁狭窄をきたしやすい)
  • 動脈硬化による弁の石灰化
  • リウマチ性変化

病態

  • 大動脈弁が十分に開かなくなると、左心室から大動脈へ血液駆出が障害されます。
  • その結果、心拍出量が低下し、血圧低下失神・めまいなどを引き起こすことがあります。
  • 左心室は駆出抵抗に対して収縮期圧が上昇し、圧負荷により肥大します。
  • 肥大した左心室は拡張不全を起こし、左心房圧上昇から肺うっ血へとつながります。
  • 進行すると冠血流が低下し、労作時の狭心痛の原因となります。
大動脈弁狭窄症の病態図。大動脈弁が開かず圧負荷が左室肥大・拡張不全、冠血流低下、狭心痛や失神につながる流れ。
図5:大動脈弁狭窄症の病態
大動脈弁が開かず、左室圧負荷により左室肥大・拡張不全をきたし、心拍出量低下や狭心痛・失神のリスクが生じる模式図。
出典:北海道心臓協会 フリーイラスト集

👉 圧負荷については こちらで解説

症状

  • 初期は無症状で経過することが多いです。
  • 左心不全により息切れ狭心痛が出現します。
  • 心拍出量の低下により、失神発作遅脈・小脈・血圧低下がみられることがあります。
  • 重症例では突然死をきたすこともあります。
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大動脈弁狭窄症では “三徴” が試験で定番 です。

狭心痛・失神発作・労作時呼吸困難
この3つが出てきたら大動脈弁狭窄症をまず疑う、と覚えておきましょう。
突然死のリスクもあるので臨床的にも重要です。

大脈(だいみゃく)

  • 脈圧(最高血圧-最低血圧)大きい脈を指します。
  • 動脈硬化、大動脈弁逆流、バルサルバ洞動脈瘤破裂、動脈管開存などでみられます。

小脈(しょうみゃく)

  • 脈圧小さい脈を指します。
  • 心ポンプ機能が低下しているときや、大動脈弁狭窄心室中隔欠損などでみられます。

速脈(そくみゃく)

  • 脈が急速に立ち上がり、急速に消失する状態です。
  • 大脈は速脈となります。
  • 「頻脈」とは異なる概念です。

遅脈(ちみゃく)

  • 脈が徐々に立ち上がり、徐々に消失する状態です。
  • 小脈は遅脈となります。
  • 「徐脈」とは異なる概念です。

診断のポイント

  • 心音:収縮期駆出性雑音、胸壁でスリルを触知することがあります。
  • 心電図・胸部X線:左室肥大左脚ブロックの所見がみられます。
  • 心エコー:弁口面積を評価し、重症度を判定します。

治療

  • 内科的治療:心不全に対する薬物療法を行います。
  • 外科的治療:大動脈弁置換術(AVR)が基本であり、症例によっては大動脈弁形成術も行われます。
  • 重症の大動脈弁狭窄症に対する治療法です。
  • カテーテルを用いて人工弁を心臓の大動脈弁部に留置します。
  • 2002年にヨーロッパで初めて施行され、日本では 2013年に保険適用 となりました。
  • 従来の外科的人工弁置換術(開胸・人工心肺使用)とは異なり、開胸せず人工心肺を用いないため、体への負担が少ないのが特徴です。
  • そのため 高齢者や手術リスクが高い患者でも適応可能 であり、近年は標準的な治療法の一つとなっています。
TAVI用の人工弁と、心臓内の大動脈弁部に留置された人工弁の模式図。
図6:TAVIで留置された人工弁
大動脈弁狭窄症に対して用いられる経カテーテル大動脈弁治療(TAVI)の人工弁と、その留置部位を示す模式図。
Created with BioRender.com

大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症):Aortic Regurgitation (AR)

概念

  • 大動脈弁が完全に閉じず、拡張期左心室へ血液が逆流する疾患です。
  • Regurgitation は「逆流」という意味で、大動脈弁逆流症とも呼ばれます。

原因

  • 主な原因は以下の通りです。
    • リウマチ性変化
    • 大動脈二尖弁
    • マルファン症候群(結合組織異常による大動脈基部拡張)
    • 大動脈解離
    • 感染性心内膜炎
  • その他、梅毒や膠原病、動脈硬化なども原因となることがあります。

病態

  • 大動脈弁が完全に閉じないため、拡張期に大動脈から左心室へ血液が逆流します。
  • 左心室は逆流によって容量負荷を受け、拡大します。
  • 左心室拡大に伴って拡張期圧が上昇し、左心房へと波及して左心房圧上昇をきたします。
  • その結果、肺静脈系に血液がうっ滞し、肺うっ血が生じます。
  • 進行すると左心室の収縮機能が低下し、心不全へと至ることがあります。
大動脈弁閉鎖不全症の病態図。拡張期に大動脈から左室へ逆流し、容量負荷で左室拡大、肺うっ血につながる流れ。
図7:大動脈弁閉鎖不全症の病態
大動脈弁が閉じず、拡張期に大動脈から左室へ逆流が生じ、左室拡大・肺うっ血をきたす血行動態の模式図。
出典:北海道心臓協会 フリーイラスト集

👉 容量負荷については こちらで解説

症状

  • 慢性例では初期は無症状で経過することがあります。
  • 進行すると左心不全症状が出現します。
  • 主な症状:動悸、呼吸困難、狭心痛
  • 大脈(脈圧増大)、速脈などの脈の異常が特徴的です。
  • 突然死は比較的少ないとされています。

診断のポイント

  • 心音:拡張期灌水様雑音(拡張早期雑音で漸減性・高調音)
  • 心電図・胸部X線:左心室肥大の所見

治療

  • 内科的治療:心不全に対する薬物治療
  • 外科的治療:大動脈弁置換術(AVR)が基本となります。
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弁膜症の病態を理解するうえでは、血流による心臓への「圧負荷」や「容量負荷」の違いを意識すると整理しやすくなります。

圧負荷

  • 狭窄症などで血液を送り出すのに高い圧力が必要になる状態です。
  • 心室は厚く肥大して対応します(心筋の肥大)。
  • 例:大動脈弁狭窄症、肺動脈狭窄症

容量負荷

  • 閉鎖不全症などで血液が逆流し、処理すべき血液の量が増える状態です。
  • 心腔は拡大して対応します(心腔の拡張)。
  • 例:僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁閉鎖不全症
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肥大は心筋そのものが厚くなること、拡大は心腔が広がることです。
似ている言葉ですが、意味は全然違うので混同しないようにしましょう。

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各疾患の重要キーワードだけをリストアップしました。
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MS(僧帽弁狭窄症)
  • リウマチ熱の後遺症
  • 心房細動・血栓症リスク
  • 拡張期遠雷様雑音
MR(僧帽弁閉鎖不全症)
  • 原因:現在は僧帽弁逸脱症が最多
  • 収縮期逆流 → 左房拡大・肺うっ血
  • 全収縮期逆流性雑音
AS(大動脈弁狭窄症)
  • 原因:大動脈二尖弁・加齢性石灰化
  • 三徴:労作時呼吸困難・狭心痛・失神
  • 収縮期駆出性雑音+スリル
  • 突然死リスクあり
AR(大動脈弁閉鎖不全症)
  • 原因:リウマチ性・大動脈基部拡張(マルファンなど)
  • 大脈・脈圧増大
  • 拡張期灌水様雑音

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