【循環器疾患】静脈血栓塞栓症と静脈疾患を図解で総整理

8章 循環器疾患・呼吸器疾患

🧠 5択クイズ から復習に来た方へ
下のボタンから、
要点解説の本文へジャンプできます 👇

🧩 まだクイズを解いていない方は、
  こちらから挑戦!
👉 5択クイズで学ぶ!主要な血管疾患

🔰 この記事について

  • 本記事は、
    静脈疾患についての要点解説記事です
    (※クイズは別記事)。
  • 基礎から整理して学びたい方は、
    この要点解説から読み進めてください。

🔗 関連記事

▶️ 動脈硬化・大動脈瘤・大動脈解離
▶️ 閉塞性動脈硬化症・バージャー病

🖊️ この記事で学べる内容

以下の疾患について、
特徴や違いのポイントをまとめています。

  • 静脈血栓塞栓症
  • 下肢静脈瘤
  • 上大静脈症候群
  • バッド・キアリ症候群

🩺 学習の進め方

本シリーズは
「5択クイズ編」+「要点解説編」 の2本立てです。

📌 おすすめの学習ステップ

  • まず クイズ で理解度チェック
  • 本記事で知識を整理
  • もう一度クイズに挑戦して知識を定着

🎯 こんな人におすすめ

  • 試験前に効率よく復習したい方
  • 重要ポイントを短時間で整理したい方
  • クイズに挑戦する前に基礎を固めたい方
  • 授業資料として活用できる内容
    を探している講師の方

🔍 基礎から理解する|静脈疾患の総まとめ

🧭 本文内の主要項目へジャンプ
▶ 静脈血栓塞栓症
▶︎ 下肢静脈瘤
▶︎ 上大静脈症候群
▶︎ バッド・キアリ症候群

重要ポイントだけ復習したい方はこちら👇

静脈血栓塞栓症(Venous Thromboembolism:VTE)

概念

  • 静脈血栓塞栓症(VTE)は、
    深部静脈血栓症(DVT) と
    肺塞栓症(PE) を合わせた総称です。
  • まず、下肢の深部静脈に血栓が形成され
    (深部静脈血栓症:DVT)
    その一部が血流に乗って肺動脈へ飛ぶと、
    肺塞栓症(PE)を発症します。

👉 肺塞栓症については、
  肺循環障害 の記事で詳しく解説しています。

下肢の深部静脈にできた血栓が剝がれ、血流に乗って移動し始める様子を示した図。
拡大図では静脈内の血栓と矢印が描かれ、血栓が血流へ流れていく過程が示されている。
図1:下肢深部静脈で形成された血栓の遊離
深部静脈血栓症(DVT)では、
下肢の静脈に形成された血栓が剝がれて血流へ流入し、
肺動脈へ到達すると肺塞栓症(PE)の原因となる。
Created with BioRender.com

原因(Virchowの3徴)

  • VTEの発生は、
    血流の停滞静脈壁の障害血液凝固亢進
    の3つが組み合わさって起こります。
  • この3つの原因を
    Virchow(ウィルヒョウ)の3徴といいます。
分類具体例
血流停滞長期臥床長時間の座位(ロングフライト)、
妊娠・産褥、脱水など
静脈壁の障害手術、外傷、中心静脈カテーテル留置
血液凝固能
の亢進
悪性腫瘍、感染・炎症、膠原病、
血栓性素因、経口避妊薬など
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

長時間の座位によりうDVTが起こり、
その後にPEを引き起こした状態を
エコノミークラス症候群
といいます。

症状

  • DVTは無症状のことも多く、
    肺塞栓症(PE)を起こして
    初めて気付くケースもあります。
  • 症状が出る場合は、
    次のような所見がみられます。
病態主な症状
DVT
(深部静脈血栓症)
片側性下肢腫脹(最も典型的)
下肢の痛み・重だるさ
色調変化(紫色・赤色)
Homans徴候
PE(肺塞栓症)急な呼吸困難胸痛(胸膜炎様)
冷汗・不安感、動悸
失神(重症例)など
  • つま先を上に反らす(足関節背屈)と、
    ふくらはぎに痛みが出る所見です。
  • 深部静脈血栓症(DVT)でみられることがありますが、
    感度・特異度は高くなく、
    診断の決め手にはなりません。
  • 片側性の下肢腫脹・圧痛」とあわせて評価します。

診断

  • 下肢静脈エコー
  • DVT診断の第一選択です。
  • 血栓の有無や静脈の圧迫所見
    を確認します。
  • 血液検査(Dダイマー)
  • 血栓形成があると上昇します。
  • ただし、
    感染症・悪性腫瘍・妊娠などでも上昇する
    ため、“上昇=DVT確定” ではありません。
  • 造影CT
  • DVTや肺塞栓症(PE)の評価に用います。
  • 特にPEが疑われる場合に有用です。
  • Dダイマーは
    血栓分解される(=線溶)ときに
    生じる分解産物です。
  • 血栓形成線溶亢進している時に、
    血中濃度が上昇します。
  • 血栓ができる病態は多岐にわたり、
    感染症、悪性腫瘍、外傷、妊娠などでも上昇します。
  • そのため、Dダイマー高値だけでは
    DVTを確定できません。
  • しかし、Dダイマーが正常であれば、
    DVTやPEの可能性は低く、
    除外に有用です。

治療

  • 抗凝固療法が基本
  • ヘパリン、ワルファリン、
    DOAC(直接経口抗凝固薬)
    などを使用します。
  • 血栓の拡大や新たな血栓形成を防ぐ目的です。
  • 下大静脈フィルター
  • 抗凝固療法ができない場合
    (出血リスクが高いなど)に選択されます。
  • 血栓が肺へ飛ぶのを機械的に防ぎます。
    👉 肺循環障害|肺塞栓症
      の記事で詳しく説明しています。
  • 予防(重要)
  • 弾性ストッキングの着用、早期離床
    下肢の運動などが有効です。
  • 長時間の座位が予想される場合
    (旅行・手術後など)にも推奨されます。

🧭 本文内の主要項目へジャンプ
▶ 静脈血栓塞栓症
▶︎ 下肢静脈瘤
▶︎ 上大静脈症候群
▶︎ バッド・キアリ症候群

下肢静脈瘤(Varicose Veins)

概念

  • 下肢の表在静脈(皮下を走る静脈)
    拡張・蛇行した状態です。
  • 静脈の血流がうっ滞し、
    こぶのように浮き出て見えるのが特徴です。
下肢の表在静脈を示した図。静脈弁がうまく閉じず、血液が逆流・うっ滞し、
その結果として表在静脈が拡張・蛇行する過程が描かれている。
図2:下肢静脈瘤の発生機序
静脈弁の機能不全により血液が逆流・うっ滞し、
表在静脈が蛇行・拡張する様子を示す。
Created with BioRender.com

原因

  • 主な原因は 静脈弁の機能不全 です。
  • 血液の逆流静脈内での血液のうっ滞により、
    表在静脈が拡張・蛇行 します。
  • また、以下のような誘因も発症に関与します。
    • 体質的な静脈壁の弱さ
    • 妊娠(腹圧上昇・ホルモン変化)
    • 長時間の立位・立ち仕事

頻度

  • 40歳以上の女性に多く、
    出産経験のある女性では約半数にみられる
    とされています。
  • 生活習慣や職業背景(立ち仕事
    とも関連があります。

症状

  • 足の血管が浮き出る
    (蛇行した青い血管が見える)
  • 足のむくみ・だるさ・重さ
  • 夜間のこむら返り
  • 皮膚の色素沈着(進行例)
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

軽症でも 見た目の変化(美容面) 
を主訴に受診するケース
がよくあります。

診断

  • 視診・触診
    蛇行した表在静脈を確認します。
  • 超音波(エコー)検査で、
    静脈弁の逆流の有無を評価します。

治療

  • 基本は圧迫療法(弾性ストッキングです。
  • 見た目や症状が強い場合は、
    硬化療法
    血管内焼灼術(レーザー・高周波)、
    ストリッピング手術が行われます。
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

VTEは、深部静脈の血栓で
命に関わる疾患ですが、
下肢静脈瘤は、

表在静脈が膨らむだけ
命に関わる疾患ではありません。

🧭 本文内の主要項目へジャンプ
▶ 静脈血栓塞栓症
▶︎ 下肢静脈瘤
▶︎ 上大静脈症候群
▶︎ バット・キアリ症候群

上大静脈症候群(Superior Vena Cava Syndrome:SVCS)

概念

  • 上大静脈(SVC)が外から圧迫されたり、
    内部が閉塞したりすることで、
    頭頸部上半身への静脈還流が障害される状態です。
  • その結果、
    顔面や頸部のうっ血・浮腫が生じます。
右上葉の肺腫瘍が上大静脈を圧迫し、狭窄が生じている様子を示した図。
頭頸部や上肢の静脈にうっ血が起こり、浮腫や静脈怒張が発生することを示している。
心臓・肺・上大静脈の位置関係と、病態の流れが描かれている。
図3:上大静脈症候群の病態模式図
肺がん(右上葉腫瘍)が上大静脈を圧迫・狭窄することで、
頭頸部や上肢の静脈還流が障害され、
うっ血・浮腫・静脈怒張が生じる。
Created with BioRender.com

原因

  • 最も多い原因は、
    肺癌(特に上葉や縦隔リンパ節転移
    による圧迫・浸潤です。
  • そのほか、
    悪性リンパ腫、縦隔腫瘍、
    血栓(中心静脈カテーテル留置後など)
    が原因となります。
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

悪性腫瘍
SVCSの原因の大半を占めます。

症状

  • 静脈還流障害によって、
    上半身に特徴的な症状が現れます。
  • 顔面・頸部浮腫に悪化しやすい)
  • 上肢浮腫(両側性が多い)
  • 頸静脈怒張
  • 頭痛・頭重感(脳圧亢進のため)
  • 起坐呼吸(横になると症状が悪化)
  • 皮膚の静脈怒張
    (胸壁の“側副血行路”が目立つ)

診断

  • 画像検査が中心となります。
検査項目内容(ポイント)
造影CT最も重要
上大静脈の狭窄・閉塞と
原因腫瘍を評価する。
胸部X線縦隔陰影の拡大、
肺腫瘍の存在を確認する。
頸静脈エコー頸静脈の血流うっ滞を
補助的に評価する。

治療

  • 原因に対する治療
    (腫瘍に対する放射線・化学療法など)
    が基本となります。
  • その他、以下のような治療が行われます。
治療の種類内容(ポイント)
ステント留置狭窄した上大静脈に
ステントを入れて血流を改善する。
効果が速く、
呼吸困難症状や顔面浮腫を
速やかに軽減できる。
症状緩和ステロイドによる抗炎症や、
利尿薬による浮腫軽減を行う。
抗凝固療法血栓形成が原因の場合に行われる。

🧭 本文内の主要項目へジャンプ
▶ 静脈血栓塞栓症
▶︎ 下肢静脈瘤
▶︎ 上大静脈症候群
▶︎ バット・キアリ症候群

バッド・キアリ(Budd–Chiari)症候群

概念

  • 肝静脈肝部下大静脈閉塞により、
    肝臓からの静脈血の流出が障害されることで、
    肝うっ血が生じ、
    その結果として門脈圧亢進をきたす病態です。
肝静脈や肝部下大静脈の閉塞により、肝臓からの血流が流出できなくなり、
肝うっ血・門脈圧亢進・側副血行路の発達が生じている様子を示す図。
図4:バット・キアリ症候群の病態
肝静脈や肝部下大静脈が閉塞すると、
肝臓からの静脈血の流出が障害される。
その結果、肝うっ血が生じ、門脈圧が亢進し、
側副血行路が発達する。。
Created with BioRender.com

原因

  • 日本では、
    肝部下大静脈の膜様閉塞による
    慢性的な血流障害が多いとされます。
  • 一方、肝静脈の血栓による閉塞もみられ、
    その背景として
    以下のような凝固亢進状態が関与します。
  • 血栓性素因
    (プロテインC/S欠損、抗リン脂質抗体症候群など)
  • 骨髄増殖性疾患
  • 妊娠・経口避妊薬
  • 悪性腫瘍
  • なお、
    明らかな原因が特定できない症例も多く、
    特発性とされることがあります。

症状

  • 初期は無症状のことも多いですが、
    進行すると以下がみられます。
症状の種類主な症状
門脈圧亢進
による症状
腹水
腹壁静脈怒張(腹部の血管が浮き上がる)
食道・胃静脈瘤
肝うっ血・
静脈還流障害

による症状
肝腫大
・下腿浮腫
・右季肋部痛
  • 重症化すると
    肝不全へ進行することもあります。
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

急性例では、
腹痛急速な腹水貯留
を呈することがあります。

診断

  • 腹部エコーで疑い、
    CTMRIで詳細に評価します。
検査項目内容(ポイント)
腹部エコー(US)スクリーニングとして有用。
肝静脈の狭窄・うっ血や、
ドプラで血流低下・逆流を確認する。
造影CT/MRI肝静脈の閉塞や肝部下大静脈の狭窄を
明確に評価できる。
肝静脈造影閉塞部位を正確に把握できる
(確定診断・治療前評価に有用)。

治療

原因や病態に応じて、以下の治療が行われます。

  • 抗凝固療法
     → 血栓が背景にある場合の基本治療
  • バルーン拡張術・ステント留置
     → 肝部下大静脈の狭窄解除に有効
  • シャント術(TIPS など)
     → 門脈圧亢進の改善を目的に行われる
  • 利尿薬
     → 腹水に対する対症療法
  • 肝移植(重症例)

🧭 本文内の主要項目へジャンプ
▶ 静脈血栓塞栓症
▶︎ 下肢静脈瘤
▶︎ 上大静脈症候群
▶︎ バッド・キアリ症候群

📝 チェックリストで末梢動脈疾患の重要ポイントを一気に確認!

静脈血栓塞栓症(VTE)

□ 概念:
  静脈内に血栓が形成される疾患の総称
  深部静脈血栓症(DVT)
  肺塞栓症(PE) を含む

□ 原因:Virchowの3徴
  血流停滞長期臥床、手術後、妊娠など
  静脈壁障害:手術、外傷、カテーテルなど
  凝固亢進悪性腫瘍、経口避妊薬など

□ 症状:
  DVT:片側下肢の腫脹・疼痛・発赤
  PE:突然の呼吸困難、胸痛、頻呼吸

□ 検査:
  DVT:下肢静脈エコー(第一選択)
  PE:造影CT(CT肺動脈造影)
  血液検査:D-ダイマー↑(スクリーニング)

□ 治療:
  抗凝固療法
 (ヘパリン・ワルファリン・DOACなど)

□ 予防:早期離床、弾性ストッキング

下肢静脈瘤

□ 概念:
  下肢の表在静脈拡張・蛇行した状態

□ 原因・病態
  静脈弁の機能不全 → 静脈血の逆流
          → 静脈圧↑(静脈うっ血)
          → 血管の拡張・蛇行

□ 誘因:体質、妊娠長時間の立位など

□ 好発:中高年女性(特に出産経験あり)

□ 症状:
  血管の怒張・蛇行(見た目の変化)
  下肢のむくみ、だるさ、重さ

□ 診断:
  視診・触診:蛇行・怒張を確認
  エコー:逆流の評価(確定診断)

□ 治療:
  弾性ストッキング(基本)
  硬化療法・血管内治療・ストリッピング手術

上大静脈症候群

□ 概念:
  上大静脈の圧迫・閉塞により、
  上半身の静脈還流が障害される状態

□ 原因:
  悪性腫瘍
  肺癌(最多)
  ・悪性リンパ腫
  ・縦隔腫瘍

  その他:血栓(カテーテル関連など)

□ 症状:
  顔面・頸部・上肢の浮腫(両側性)
  頸静脈怒張、胸壁静脈怒張

  その他:呼吸困難、咳、嗄声

□ 診断:
  造影CT(最重要)

□ 治療:
  ステント留置(迅速な血流再開)
  原因治療(腫瘍治療など)

バッド・キアリ症候群

□ 概念:
  肝静脈肝部下大静脈閉塞により、
  肝うっ血から門脈圧亢進をきたす病態

□ 原因:
  肝部下大静脈の膜様閉塞(日本で多い)
  血栓による閉塞(肝静脈血栓)
  ※原因不明(特発性)も多い

□ 症状:
  初期:無症状も多い
  門脈圧亢進 → 腹水・腹壁静脈怒張・
       胃・食道静脈瘤
  肝うっ血・静脈還流障害 → 肝腫大

□ 診断:
  腹部エコー(ドプラ)で疑う
  → 造影CT・MRIで評価
  → 肝静脈造影で閉塞部位を確認

□ 治療:
  血栓 → 抗凝固療法
  バルーン拡張・ステント
  利尿薬・肝移植

※ 記事作成には正確を期しておりますが、
 内容に誤りや改善点がございましたら、
 お知らせいただけますと幸いです。
 今後の教材作成の参考
にさせていただきます。

🧭 本文内の主要項目へジャンプ
▶ 静脈血栓塞栓症
▶︎ 下肢静脈瘤
▶︎ 上大静脈症候群
▶︎ バッド・キアリ症候群

🔗 関連記事

👇 5択クイズを解く前に、以下の記事もチェック!

▶️ 動脈硬化・大動脈瘤・大動脈解離
▶️ 閉塞性動脈硬化症・バージャー病

💯 静脈疾患の理解度をクイズでチェック!

👇 血管疾患の5択クイズはこちらから

🔗 循環器疾患の学習に役立つ関連記事

📚 循環器疾患を体系的に学ぶ

▶️ 学習ガイド(要点解説・クイズ・テストまとめ)

📝 学習ステップ別リンク

▶️ 5択クイズ記事一覧
▶️ 要点解説記事一覧
▶️ テスト記事(総合テスト)

🔍 基礎から確認したい方はこちら

▶️ 循環器の解剖生理(人体構造・機能論)

コメント

タイトルとURLをコピーしました