【循環器疾患】静脈血栓塞栓症・下肢静脈瘤など静脈疾患の要点まとめ

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👉 【循環器疾患】5択クイズで学ぶ!主要な血管疾患(動脈・静脈)

🔰 この記事について

  • 本記事は、静脈疾患についての要点解説記事です(※クイズは別記事)。
  • 基礎から整理して学びたい方は、この要点解説から読み進めてください。

👇 動脈硬化の病態や大動脈瘤・大動脈解離などの大血管疾患についてはこちら

👇 閉塞性動脈硬化症バージャー病についてはこちら

🖊️ この記事で学べる内容

以下の疾患について、特徴や違いのポイントをまとめています。

  • 静脈血栓塞栓症
  • 下肢静脈瘤
  • 上大静脈症候群
  • バッド・キアリ症候群

🩺 学習の進め方

この静脈疾患シリーズは、
「5択クイズ編」と「要点解説編」 の2本立てになっています。

おすすめの使い方👇

  1. 最初に 5択クイズ に挑戦して理解度チェック
  2. できなかった部分を、要点解説記事(本記事) でしっかり整理
  3. 最後にもう一度クイズを解いて、知識を定着

💡 学習のポイント

  • 最初にクイズに挑戦することで、「どこが出題ポイントなのか」が自然と見えてきます。
  • その後に要点解説を読むと、疾患の関連や違いが理解しやすくなります。
  • 理解を深めたあとにもう一度クイズに挑戦すれば、知識がしっかり定着します。
  • 本記事は、診療情報管理士をはじめ、理学療法士・作業療法士・看護師など
    幅広い医療系資格の勉強に対応しています。

🔍 基礎から理解する|静脈疾患の総まとめ

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▶ 静脈血栓塞栓症
▶︎ 下肢静脈瘤
▶︎ 上大静脈症候群
▶︎ バッド・キアリ症候群

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静脈血栓塞栓症(Venous Thromboembolism:VTE)

  • 静脈血栓塞栓症(VTE)は、
    深部静脈血栓症(DVT) と
    肺塞栓症(PE) を合わせた総称です。
  • まず、下肢の深部静脈に血栓が形成され(深部静脈血栓症:DVT)
    その一部が血流に乗って肺動脈へ飛ぶと、肺塞栓症(PE)を発症します。

👉 肺塞栓症については、こちらの記事で詳しく解説しています。

下肢の深部静脈にできた血栓が剝がれ、血流に乗って移動し始める様子を示した図。
拡大図では静脈内の血栓と矢印が描かれ、血栓が血流へ流れていく過程が示されている。
図1:下肢深部静脈で形成された血栓の遊離
深部静脈血栓症(DVT)では、
下肢の静脈に形成された血栓が剝がれて血流へ流入し、
肺動脈へ到達すると肺塞栓症(PE)の原因となる。
  • VTEの発生は、
    血流の停滞静脈壁の障害血液凝固亢進
    の3つが組み合わさって起こります。
  • この3つの原因をVirchow(ウィルヒョウ)の3徴といいます。
分類具体例
血流停滞長期臥床長時間の座位(ロングフライト)、
妊娠・産褥、脱水など
静脈壁の障害手術、外傷、中心静脈カテーテル留置
血液凝固能
の亢進
悪性腫瘍、感染・炎症、膠原病、
血栓性素因、経口避妊薬など
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

長時間の座位が原因で深部静脈血栓症が起こり、
その血栓が肺に飛んで肺塞栓症を引き起こした状態を
エコノミークラス症候群”といいます。

  • DVTは無症状のことも多く、
    肺塞栓症(PE)を起こして初めて気付くケースもあります。
  • 症状が出る場合は、次のような所見がみられます。
病態主な症状
DVT
(深部静脈血栓症)
片側性下肢腫脹(最も典型的)
下肢の痛み・重だるさ
色調変化(紫色・赤色)
Homans徴候
PE(肺塞栓症)急な呼吸困難胸痛(胸膜炎様)
冷汗・不安感、動悸
失神(重症例)など
  • つま先を上に反らす(足関節背屈)と、ふくらはぎに痛みが出る所見です。
  • 深部静脈血栓症(DVT)でみられることがありますが、感度・特異度は高くなく、診断の決め手にはなりません。
  • 片側性の下肢腫脹・圧痛」とあわせて評価します。
  • 下肢静脈エコー
  • DVT診断の第一選択です。
  • 血栓の有無や静脈の圧迫所見を確認します。
  • 血液検査(Dダイマー)
  • 血栓形成があると上昇します。
  • ただし、感染症・悪性腫瘍・妊娠などでも上昇するため、“上昇=DVT確定” ではありません。
  • 造影CT
  • DVTや肺塞栓症(PE)の評価に用います。
  • 特にPEが疑われる場合に有用です。
  • Dダイマーは血栓分解される(=線溶)ときに生じる分解産物です。
  • 血栓形成線溶亢進している時に、血中濃度が上昇します。
  • 血栓ができる病態は多岐にわたり、感染症、悪性腫瘍、外傷、妊娠などでも上昇します。
  • そのため、Dダイマー高値だけではDVTを確定できません。
  • しかし、Dダイマーが正常であれば、DVTやPEの可能性は低く、除外に有用です。
  • 抗凝固療法が基本
  • ヘパリン、ワルファリン、DOAC(直接経口抗凝固薬)などを使用します。
  • 血栓の拡大や新たな血栓形成を防ぐ目的です。
  • 下大静脈フィルター
  • 予防(重要)
  • 弾性ストッキングの着用、早期離床下肢の運動などが有効です。
  • 長時間の座位が予想される場合(旅行・手術後など)にも推奨されます。

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下肢静脈瘤(Varicose Veins)

  • 下肢の表在静脈(皮下を走る静脈)が拡張・蛇行した状態です。
  • 静脈の血流がうっ滞し、こぶのように浮き出て見えるのが特徴です。
下肢の表在静脈を示した図。静脈弁がうまく閉じず、血液が逆流・うっ滞し、
その結果として表在静脈が拡張・蛇行する過程が描かれている。
図:下肢静脈瘤の発生機序
静脈弁の機能不全により血液が逆流・うっ滞し、
表在静脈が蛇行・拡張する様子を示す。
Created with BioRender.
  • 主な原因は 静脈弁の機能不全 です。
  • 血液の逆流静脈内での血液のうっ滞により、
    表在静脈が拡張・蛇行 します。
  • また、以下のような誘因も発症に関与します。
    • 体質的な静脈壁の弱さ
    • 妊娠(腹圧上昇・ホルモン変化)
    • 長時間の立位・立ち仕事
  • 40歳以上の女性に多く、
    出産経験のある女性では約半数にみられるとされています。
  • 生活習慣や職業背景(立ち仕事)とも関連があります。
  • 足の血管が浮き出る(蛇行した青い血管が見える)
  • 足のむくみ・だるさ・重さ
  • 夜間のこむら返り
  • 皮膚の色素沈着(進行例)

💡軽症でも 見た目の変化(美容面) を主訴に受診するケースがよくあります。

  • 視診・触診で蛇行した表在静脈を確認します。
  • 超音波(エコー)検査で、静脈弁の逆流の有無を評価します。
  • 基本は圧迫療法(弾性ストッキング)です。
  • 見た目や症状が強い場合は、硬化療法やストリッピング手術(レーザー治療)が行われます。
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

“静脈”という名前がつくので混同しがちですが、
VTE=深部静脈の血栓で命に関わる疾患、
下肢静脈瘤=表在静脈が膨らむだけ
で命に関わらない疾患
と覚えておくと混乱しません。

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上大静脈症候群(Superior Vena Cava Syndrome:SVCS)

  • 上大静脈(SVC)が外から圧迫されたり、
    内部が閉塞したりすることで、
    頭頸部上半身への静脈還流が障害される状態です。
  • その結果、顔面や頸部のうっ血・浮腫が生じます。
右上葉の肺腫瘍が上大静脈を圧迫し、狭窄が生じている様子を示した図。
頭頸部や上肢の静脈にうっ血が起こり、浮腫や静脈怒張が発生することを示している。
心臓・肺・上大静脈の位置関係と、病態の流れが描かれている。
図:上大静脈症候群の病態模式図
肺がん(右上葉腫瘍)が上大静脈を圧迫・狭窄することで、
頭頸部や上肢の静脈還流が障害され、
うっ血・浮腫・静脈怒張が生じる。
Created with BioRender.
  • 最も多い原因は 肺癌(特に右上葉縦隔リンパ節転移)による圧迫 です。
  • そのほかにも、悪性リンパ腫、縦隔腫瘍、血栓(中心静脈カテーテル留置後など)などが原因となります。
  • 静脈還流障害によって、上半身に特徴的な症状が現れます。
  • 顔面・頸部浮腫に悪化しやすい)
  • 上肢(特に片側)の浮腫
  • 頸静脈怒張
  • 頭痛・頭重感(脳圧亢進のため)
  • 起坐呼吸(横になると症状が悪化)
  • 皮膚の静脈怒張(胸壁の“側副血行路”が目立つ)
  • 画像検査が中心となります。
検査項目内容(ポイント)
造影CT最も重要
上大静脈の狭窄・閉塞と原因腫瘍を評価する。
胸部X線縦隔陰影の拡大、肺腫瘍の存在を確認する。
頸静脈エコー頸静脈の血流うっ滞を補助的に評価する。
  • 原因に対する治療(腫瘍に対する放射線・化学療法など)が基本となります。
  • その他、以下のような治療が行われます。
治療の種類内容(ポイント)
ステント留置狭窄した上大静脈にステントを入れて血流を改善する。
効果が速く、呼吸困難症状や顔面浮腫を速やかに軽減できる。
症状緩和ステロイドによる抗炎症や、利尿薬による浮腫軽減を行う。
抗凝固療法血栓形成が原因の場合に行われる。

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バッド・キアリ(Budd–Chiari)症候群

  • 肝静脈肝部下大静脈が閉塞し、
    肝臓からの静脈血が流れ出せなくなることで、
    肝うっ血・門脈圧亢進症をきたす病態です。
肝静脈や肝部下大静脈の閉塞により、肝臓からの血流が流出できなくなり、
肝うっ血・門脈圧亢進・側副血行路の発達が生じている様子を示す図。
図:バット・キアリ症候群の病態
肝静脈や肝部下大静脈が閉塞すると、
肝臓からの静脈血が流れにくくなり、
門脈圧が亢進して側副血行路が発達する。
Created with BioRender.
  • 日本では原因不明(特発性)が多く
  • そのほかに以下のような血栓傾向が背景となる場合があります。
  • 血栓性素因(プロテインC/S欠損、抗リン脂質抗体症候群など)
  • 経口避妊薬
  • 妊娠
  • 骨髄増殖性疾患
  • 腫瘍の圧迫・浸潤
  • 初期は無症状のことも多いですが、進行すると以下がみられます。
症状の種類主な症状
門脈圧亢進
による症状
・腹水
・腹壁静脈怒張(腹部の血管が浮き上がる)
・食道・胃静脈瘤
全身の
うっ血症状
・下腿浮腫
・肝腫大、右季肋部痛
  • 重症化すると肝不全へ進行することもあります。
  • 腹部エコーで疑い、CTやMRIで確定します。
検査項目内容(ポイント)
腹部エコー
(US)
最もよく使う検査。
肝静脈の狭窄・うっ血、側副血行路を確認する。
造影CT/MRI肝静脈の閉塞や肝部下大静脈の狭窄を明確に評価できる。
肝静脈造影閉塞部位を正確に把握できる。
  • 抗凝固療法:血栓が背景のときに基本治療。
  • バルーン拡張術・ステント留置:肝部下大静脈の狭窄解除に有効。
  • 肝移植(重症例)
  • 利尿薬使用(腹水が強い場合の対症療法)

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静脈血栓塞栓症(VTE)
  • 病態: DVT+PE
  • 原因: 血流停滞・静脈壁障害・凝固亢進
  • 症状: 片側下肢腫脹(DVT)、突然の呼吸困難(PE)
  • 検査: 下肢静脈エコー(第一選択)、D-ダイマー↑
  • 治療: 抗凝固薬(ヘパリン/ワルファリン/DOAC)
  • 予防: 弾性ストッキング、早期離床
下肢静脈瘤
  • 病態: 表在静脈の拡張・蛇行
  • 原因: 静脈弁不全
  • 症状: 血管の突出、だるさ(無症状も多い)
  • 治療: 弾性ストッキングによる圧迫
上大静脈症候群
  • 病態: 上大静脈の圧迫・閉塞 → 還流障害
  • 原因: 肺癌が最多(特に右上葉腫瘍)
  • 症状: 頭頸部・上肢の浮腫、頸静脈怒張
  • 検査: 造影CTで原因と狭窄部位を確認
バッド・キアリ症候群
  • 病態: 肝静脈/肝部下大静脈閉塞 → 門脈圧亢進
  • 原因: 特発性が多い
  • 症状:
    • 門脈圧亢進:腹水、腹壁静脈怒張、食道・胃静脈瘤
    • うっ血:下腿浮腫、肝腫大、右季肋部痛

※ 記事作成には正確を期しておりますが、内容に誤りや改善点がございましたら、お知らせいただけますと幸いです。
今後の教材作成の参考にさせていただきます。

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