【循環器疾患】脳血管疾患(くも膜下出血・脳出血・脳梗塞)の重要ポイント総まとめ(要点解説)

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👉  5択クイズで学ぶ!くも膜下出血・脳出血・脳梗塞の違いと特徴まとめ

🔰 この記事について

本記事は、脳血管疾患の要点を整理する解説記事です(クイズは別記事へ)。
くも膜下出血・脳出血・脳梗塞の特徴や違いなどをまとめています。

最初に基礎知識を復習してから、問題演習に進みたい方におすすめです。

この記事で学べる内容

以下の疾患について、特徴や違いのポイントをまとめています。

  • 脳血管疾患
    • くも膜下出血
    • 脳出血
    • 脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞・心原性脳塞栓)
  • 硬膜下血腫

🩺 学習の進め方

この脳血管障害のシリーズは、
「5択クイズ編」と「要点解説編」 の2本立てになっています。

おすすめの使い方👇

  1. 最初に 5択クイズ に挑戦して理解度チェック
  2. できなかった部分を、要点解説記事 でしっかり整理
  3. 最後にもう一度クイズを解いて、知識を定着

💡 学習のポイント

  • 最初にクイズに挑戦することで、「どこが出題ポイントなのか」が自然と見えてきます。
  • その後に要点解説を読むと、疾患の関連や違いが理解しやすくなります。
  • 理解を深めたあとにもう一度クイズに挑戦すれば、知識がしっかり定着します。
  • 本記事は、診療情報管理士をはじめ、理学療法士・作業療法士・看護師など
    幅広い医療系資格の勉強に対応しています。

🔍 出題ポイントのまとめ|くも膜下出血・脳出血・脳梗塞

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▶ くも膜下出血脳出血脳梗塞硬膜下血腫

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脳血管疾患(cerebrovascular disease)

  • 脳血管疾患とは、脳の血管に生じる異常(狭窄・閉塞・破綻など)によって脳組織が障害される疾患の総称です。
脳卒中(Stroke)とは?
  • 脳卒中」は、脳血管障害によって突然、神経症状が出現する状態の総称です。
  • 英語の “stroke” は「突然の発作」という意味で、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血をまとめた呼び方になります。
  • 医学的には「脳血管疾患」の一種であり、両者はほぼ同義で使われることが多いです。
  • 原因によって「出血性」と「虚血性」に分類されます。
分類原因主な疾患
虚血性疾患血管の狭窄・閉塞による血流遮断脳梗塞
出血性疾患血管の破綻による出血脳出血くも膜下出血
  • 日本では脳血管疾患(脳卒中)は死因の第4位(2023年)
  • 寝たきり要介護の原因としても上位を占めます。
  • 高齢化に伴い、再発予防リハビリの重要性が増しています。

くも膜下出血(Subarachnoid Hemorrhage:SAH)

  • くも膜下出血とは、脳の表面を走る血管が破れて、くも膜下腔に出血が広がる疾患です。

👉 髄膜の構造については、以下の記事をチェック!

髄膜の構造とくも膜下出血の発生機序を示す図。
硬膜・くも膜・軟膜の3層構造を拡大図で示し、脳表面の動脈瘤が破裂してくも膜下腔に出血が広がる様子を描いている。
図1:髄膜の構造とくも膜下出血の発生機序
髄膜は外側から硬膜、くも膜、軟膜の3層で構成される。
くも膜下出血は、脳表面の動脈瘤の破裂などにより、
くも膜下腔に血液が流出する病態である。
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原因割合・特徴
脳動脈瘤の破裂約80%中高年女性に多い。最も一般的な原因。
脳動静脈奇形約5〜10%。20〜40代の男性に多い。
その他もやもや病、脳出血、脳腫瘍、血液疾患など。
  • もやもや病は、脳を栄養する内頸動脈の終末部(ウィリス動脈輪の一部)が、原因不明進行性狭窄・閉塞を起こす疾患です。
  • 血流が不足すると、脳はそれを補うために細かい側副血行路(新しい血管)を作ります。
  • この血管網が脳血管造影で煙(もやもや)のように見えることから、この名がついています。
  • 出血型ではくも膜下出血脳内出血の原因になることもあります。

👉 ウィリス動脈輪については、【脳・脊髄①】脳の構造と機能 の記事へ。

主な症状具体的な症状
突然の激しい頭痛
(雷鳴頭痛)
「人生で最悪の頭痛」と表現されることも。
頭痛を感じない例もあり。
髄膜刺激症状項部硬直、ケルニッヒ徴候
頭蓋内圧亢進症状悪心・嘔吐、眼内出血、うっ血乳頭
意識障害もうろう状態~昏睡
  • 髄膜刺激症状とは、髄膜(脳や脊髄を包む膜)が感染や炎症で刺激されたときに現れる身体反応のことです。
  • 髄膜炎くも膜下出血などでみられます。
  • 代表的な症状は次の2つです👇
徴候名検査方法・特徴
項部硬直
(こうぶこうちょく)
仰向けの患者の頭を持ち上げようとすると、
首が硬くなり抵抗を感じる
最も代表的な所見。
ケルニッヒ徴候仰向けで片脚の股関節と膝を直角に曲げた
状態から膝を伸ばすと抵抗が生じる。
  • 頭蓋内圧が上昇すると、視神経に沿って血液や髄液の流れが滞り、視神経乳頭(視神経が眼球に入る部分)が腫れて浮腫を起こした状態をいいます。
  • 脳腫瘍、硬膜下出血、くも膜下出血、脳膿瘍、水頭症などが原因となります。
  • なお、視神経炎(視神経乳頭炎)に伴う乳頭浮腫とは異なり、うっ血乳頭では初期に視力障害を伴わないのが特徴です。
うっ血乳頭の発症機序を示した図。
脳圧の上昇により静脈血の還流が妨げられ、視神経乳頭にうっ血と浮腫が生じる過程を、脳から眼球、視神経の断面図を用いて段階的に示している。
図:うっ血乳頭の発症機序
頭蓋内圧の亢進により、視神経を通る静脈血の還流が障害され、
視神経乳頭にうっ血と浮腫が生じる。
この状態をうっ血乳頭(視神経乳頭の腫脹)という。
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  • くも膜下出血では、「CTで出血を確認」
    →「必要に応じて腰椎穿刺」の順に検査を行います。
検査目的・特徴
頭部CT・MRI最も重要な検査。
くも膜下腔への出血を直接確認できる。
急性期(発症直後)はCTが最も有用
腰椎穿刺
(ルンバール)
CTで出血がはっきりしない場合に行う。
髄液を採取し、血性またはキサントクロミー(黄橙色)
を呈することで診断を補強する。
キサントクロミーとは?
  • 髄液が橙黄色に変化する所見です(正常髄液は無色透明)。
  • 古い出血を示し、出血後3〜4週間ほど持続します。
  • くも膜下出血は、致死率の高い疾患です。
  • 治療法の進歩により死亡率はやや低下していますが、発症後の死亡率は約20〜30%とされています。
  • さらに、発症後24時間以内に再破裂する例が10〜20%あり、再出血による死亡率は約50%に達します。

 ⚠️ 発症直後の再出血を防ぐことが最重要ポイントです。

  • くも膜下出血の最大の目的は再出血(再破裂)の予防です。
  • 発症直後は再破裂のリスクが高いため、早期の止血処置が重要になります。
  • 再出血を防ぐ代表的な治療法には、脳動脈瘤コイル塞栓術脳動脈瘤クリッピング術があります。
  • カテーテルを使って動脈瘤内に金属コイルを詰め、血流を遮断する方法です。
  • 開頭せずに行えるため、体への負担が少なく、高齢者にも適応しやすい治療法です。
  • 頭蓋骨を開けて、動脈瘤の根元を金属クリップで閉じる方法です。
  • 再出血を確実に防止できますが、開頭手術のため侵襲が大きい点に注意が必要です。
脳動脈瘤の2つの治療法を示す図。
左にコイル塞栓術、右にクリッピング術を描く。
コイル塞栓術では動脈瘤内に金属コイルを詰めて血流を遮断し、クリッピング術では動脈瘤の根元をクリップで挟み破裂を防止する様子を示している。
図:脳動脈瘤の治療法(コイル塞栓術とクリッピング術
コイル塞栓術では、カテーテルを用いて動脈瘤内にコイルを詰め、血流を遮断する。
クリッピング術では、開頭して動脈瘤の根元(ネック)をクリップで閉鎖し、破裂を防ぐ。
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脳出血(Cerebral hemorrhage、脳内出血)

  • 脳実質内の血管が破れて脳内に血液が流れ込む疾患です。
  • 形成された血腫(血のかたまり)が脳を圧迫し、局所の神経症状頭蓋内圧亢進症状を引き起こします。
  • 多くは日中の活動中に突然発症します。
脳出血とくも膜下出血の出血部位の違いを示す脳断面図。
脳出血は脳実質内での出血として赤く示され、
くも膜下出血は脳表面のくも膜下腔に出血が広がる様子として描かれている。
それぞれの出血部位がラベル付きで対比されている。
図2:脳出血とくも膜下出血の違い
脳出血は脳実質内での出血であるのに対し、
くも膜下出血は脳実質外に出血する。
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  • 最も多い原因は 高血圧 です。
  • 慢性的な高血圧により小動脈の壁が脆くなり、破裂しやすくなります。
出血部位主な症状・特徴眼球の位置・偏位
被殻出血最も多い(約40%)。
反対側運動麻痺・失語・意識障害
両眼が病側を向く
(病側への共同偏視
視床出血約30%。
感覚障害・視床痛・運動麻痺
両眼が内下方(鼻先)
を向く
脳幹(橋)
出血
最も重症意識障害・呼吸障害・
四肢麻痺・縮瞳
正中固定
(動かない)
小脳出血後頭部痛・めまい・嘔吐・
歩行障害(四肢麻痺なし)。
両眼が健側を向く
(健側への共同偏視
皮質下出血出血部位によるが、てんかん発作・
局所麻痺を伴うことがある。
―(特記なし)
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講師
(管理人)

視床は感覚の中継地点
脳幹には生命維持に必須の延髄があり、
小脳は平衡機能を担う場所でしたね。

各部位の働きを思い出すと、出血時の症状が覚えやすくなります。
👉 各脳部位の機能は【脳・脊髄①】脳の構造と機能

  • 出血の大きさや意識レベルに応じて治療方針が決まります。
  • 意識清明・脳ヘルニアなし → 内科的治療・経過観察
  • 意識低下・脳ヘルニアあり → 外科的治療(血腫除去術など)
  • 脳出血や脳梗塞、脳腫瘍などで頭蓋内圧が上昇すると、脳の一部が押し出されてしまうことがあります。
  • これを 脳ヘルニア といいます。
  • 押し出された脳組織では血流障害脳幹の圧迫が起こり、生命に関わる危険な状態になります。
  • そのため、早期発見と迅速な治療が重要です。

    ⚠️ 脳出血で頭蓋内圧が高い場合、髄液検査は禁忌です。
    (脳圧差により脳ヘルニアを誘発するおそれがあります)

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脳梗塞(Cerebral Infarction)

  • 脳動脈が狭窄または閉塞して血流が途絶え、脳組織が虚血・壊死に陥る疾患です。
  • 脳卒中(脳血管障害)の中で最も頻度が高いタイプです。
脳梗塞の発生機序を示した図。
脳動脈内に血栓が詰まって血流が途絶え、血管の支配領域に虚血が生じている様子を示す。
脳の断面図と血管拡大図を組み合わせ、閉塞部位と虚血領域の位置関係を視覚的に表している。
図3:脳梗塞の発生機序
脳動脈が血栓などで閉塞すると、その先の血流が途絶え、
酸素や栄養が届かなくなった領域(虚血領域)
に脳細胞の壊死が生じる。
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  • 脳血管疾患は日本の死因第4位(2023年・厚労省)
  • そのうち 約7割が脳梗塞
  • 寝たきり原因の第1位が脳卒中(主に脳梗塞)
分類主な原因・特徴
① アテローム血栓性脳梗塞動脈硬化による血管の狭窄・閉塞
② ラクナ梗塞細い穿通枝(小動脈)の閉塞
③ 心原性脳塞栓症心臓由来の血栓が脳動脈を塞ぐ(例:心房細動)
  • 急性期は、むやみに降圧しない(脳血流がさらに低下するため)
  • tPA(血栓溶解療法):発症4.5時間以内、BP 185/110以下で適応
  • 血管内治療:太い血管が詰まった場合に早期実施
  • 極端な高血圧のみ慎重に調整する
  • 慢性期(再発予防):抗血小板薬/抗凝固薬、血圧・脂質管理

アテローム性血栓性脳梗塞

  • 比較的太い脳動脈(中大脳動脈、内頸動脈など)が、
    アテローム性動脈硬化(粥状動脈硬化)によって狭窄・閉塞することで起こる脳梗塞です。
アテローム血栓性脳梗塞の発生機序を示した図。
脳の断面図において、動脈硬化による粥状変化と血栓形成が示され、閉塞部位の支配領域に虚血が広がる様子を表している。
図4:アテローム血栓性脳梗塞の発生機序
動脈硬化によって血管内にアテローム(粥状物質)が形成され、
そこに血栓が付着して閉塞を起こす。
これにより、閉塞部位の支配領域に脳梗塞が生じる。
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  • 動脈硬化の進行を促す生活習慣病が関係します。
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症(高コレステロール血症など)
  • 喫煙
  • 大量飲酒
  • 前駆症状として 一過性脳虚血発作(TIA) がみられることがあります。
  • 代表的な症状:片麻痺・構音障害・失語 など。
  • 発症は 安静時(睡眠中〜起床時)に多く、階段状に悪化するのが特徴です。
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講師
(管理人)

「階段状に悪化」とは、
ある日を境に症状がはっきり悪化し、それが段階的に進むことをいいます。
アルツハイマー病のようなゆるやかな進行(スロープ状)とは異なります。

  • 一時的に脳の血流が低下して、一時的な神経症状が出現する状態です。
  • 症状は数分〜数時間で回復しますが、10〜15%が3か月以内に脳梗塞を発症します。
  • 塞栓性:動脈内の血栓の一部が剥がれて一時的に詰まる。
  • 血行性:血圧低下などで脳血流が一時的に減少。
  • 心原性:心臓内の血栓が脳血管に流れて詰まる。
虚血部位主な症状
内頸動脈系片麻痺、感覚障害、失語症、
一過性黒内障片目が見えなくなる)
椎骨・脳底動脈系構音障害、めまい、複視、嚥下障害など

ラクナ梗塞

  • 脳動脈の細い枝(穿通枝)が詰まって起こる、小さな脳梗塞です。
  • 梗塞の大きさは通常 15 mm以下で、深部の脳(基底核・内包・視床・橋など)に好発します。
ラクナ梗塞の発生機序を示した図。
脳の断面図で、細動脈の閉塞によって脳深部に小さな梗塞巣(ラクナ)が形成されている様子を描く。
拡大図では、細動脈内が血栓で詰まり血流が遮断されている様子が示されている。
図5:ラクナ梗塞の発生機序
高血圧などにより脳の深部を走る細動脈が閉塞し、
米粒大(15mm以下)の小梗塞(ラクナ)が生じる。
主に被殻、視床、橋などの穿通枝領域にみられる。
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  • 高血圧をもつ高齢者
  • 糖尿病

👉 長年の高血圧によって細動脈が硬くなり、血流が途絶えやすくなります。

  • 軽いことが多く、運動麻痺のみまたは感覚障害のみなどの限局した症状
  • 無症候性(自覚症状なし)で偶然発見されることもあります。
    ⚠️ 失語・失行などの皮質症状やけいれん、意識障害はみられません
  • 大脳の表面(大脳皮質)が障害されたときにみられる高次脳機能の異常(言葉・行動・認識の障害)のことで、以下のようなものが含まれます。
  • 失語:言葉が出ない、理解できない
  • 失行:行動の手順がわからなくなる
  • 失認:見たり触れたりしても物を認識できない
  • 一般に予後は良好ですが、多発すると脳血管性認知症パーキンソン症候群様症状をきたすことがあります。

心原性脳塞栓症

  • 心臓の中でできた血栓が血流に乗ってに飛び、脳動脈を塞ぐことで起こる脳梗塞です。
心原性脳塞栓症の発生機序を示した図。
心臓内にできた血栓が血流により脳に運ばれ、脳動脈を閉塞して広範囲の脳梗塞を生じる様子を表している。
脳断面図と心臓の拡大図を用いて、塞栓の経路と影響範囲を示している。
図6:心原性脳塞栓症の発生機序
心房細動などにより心臓内に血栓が形成され、
それが血流に乗って脳動脈を閉塞し、広範囲の脳梗塞を起こす。
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  • 心房細動(原因の約9割)
  • 僧帽弁狭窄症
  • 心筋梗塞

👉 これらの疾患では、心臓の中で血液がよどみ、血栓ができやすくなります。

関連疾患をおさらいしよう
  • 発症が急激で、突発的に症状が完成します。
  • 脳梗塞の中で最も重症で予後不良とされています。
  • 塞栓が大きいため、広範囲の脳組織が障害されやすいことが特徴です。
  • 日中の活動時突然発症することが多いです。
  • 主な症状は、片麻痺、構音障害、失語(皮質症状)、意識障害などです。
  • 広い範囲に虚血が及ぶため、重度の神経障害が残ることもあります。

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硬膜下血腫(Subdural Hematoma)

  • 硬膜とくも膜の間に血液がたまる疾患です。
  • 多くは外傷によって起こり、血液が袋状に貯留して脳を圧迫します。
架橋静脈の損傷などにより静脈血が硬膜下腔に拡がり、三日月形に血腫が形成される様子を示したイラスト。硬膜・くも膜・くも膜下腔・軟膜の層構造と、出血が脳表を圧迫している状態が描かれている。
図7:硬膜下血腫の発生機序
頭蓋骨と硬膜の間を走る架橋静脈が損傷し、
出血が硬膜下腔に貯留する様子を示した図。
高齢者や頭部外傷で生じやすく、
静脈性出血であるため進行が比較的ゆっくりである。
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(管理人)

硬膜下血腫は「外傷による出血」で、
脳血管疾患(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)には含まれません。
内因性の血管病変ではなく、外傷によって静脈が破れることが原因です。

  • 主な原因は頭部外傷です。
  • 転倒や交通事故などで頭を打つと、脳表と硬膜をつなぐ架橋静脈脳表の小動脈が損傷し、血液がゆっくり硬膜下腔にたまります。
  • 硬膜下血腫は、急性か慢性かによって症状が大きく異なります。
  • 急性は受傷直後から急速に悪化しますが、臨床で最も多いのは慢性型で、ゆっくり進行するのが特徴です。
  • 下の表で、発症時期と症状の違いを整理しておきましょう。
分類発症時期主な症状
急性
硬膜下血腫
受傷直後
〜数時間以内
強い頭痛、嘔吐、
意識障害(数時間以内に急速に悪化
慢性
硬膜下血腫
受傷後数週間
〜数か月後
徐々に下肢の脱力、歩行障害、
構音障害、認知症様症状が出現
  • 頭部CT:脳表面に沿った三日月型高吸収域(血腫)が特徴です。
     (急性期は高吸収、慢性期では低〜等吸収になることもあります)
頭部CTの模式図。脳の外側に三日月形の血腫が描かれており、硬膜下血腫に特徴的な半月状の広がりが示されている。
図8:硬膜下血腫のCTイメージ(半月状の血腫)
硬膜と脳表の間に三日月形に広がる血腫が描かれており、
硬膜下血腫に特徴的な所見を示す。
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  • 急性期:外科的血腫除去が必要なことがあります。
  • 慢性期:穿頭洗浄術(ドレナージ)で血腫を排出します。

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📝 チェックリストで重要ポイントを一気に確認!

脳血管疾患
  • 脳血管の異常による脳組織障害(≒脳卒中)
  • 出血性: くも膜下出血・脳出血
  • 虚血性: 脳梗塞
  • 寝たきり・要介護の主要原因
くも膜下出血(SAH)
  • 脳動脈瘤破裂によるくも膜下腔への出血
  • 突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)
  • 髄膜刺激症状(項部硬直・ケルニッヒ)
  • 頭蓋内圧亢進(嘔吐・うっ血乳頭)
  • 髄液:血性、キサントクロミー
  • コイル塞栓/クリッピングで再破裂予防
脳出血(脳内出血)
  • 高血圧による脳実質内の出血
  • 日中活動時に突然発症
  • 局所神経症状+頭蓋内圧亢進
  • 被殻:最多
  • 視床:感覚障害
  • 橋:最重症
  • 小脳:歩行障害
  • 脳圧亢進時は腰椎穿刺(髄液検査)禁忌
脳梗塞
  • 脳動脈の狭窄・閉塞 → 虚血・壊死
  • 脳血管障害で最も多い
  • アテローム血栓性/ラクナ/心原性脳塞栓症
アテローム血栓性脳梗塞
  • 動脈硬化が原因
  • TIAが前兆
  • 安静時に発症、階段状に悪化
ラクナ梗塞
  • 細動脈の閉塞(小さな梗塞
  • 高齢者に多い
  • 症状は軽い/無症候性もあり
  • 多発で重症化
心原性脳塞栓症
  • 心臓内血栓(心房細動が最多)
  • 日中活動時の突発完成型
  • 障害範囲が広い(脳卒中で最重症タイプ)
硬膜下血腫
  • 架橋静脈の損 → 静脈血が硬膜下腔へ
  • 原因は頭部外傷(高齢者で軽微外傷が多い)
  • 慢性型が多く、認知症様症状・歩行障害
  • CTで三日月形血腫

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