2.組織と胚葉の分化・神経組織・筋組織・上皮組織

2章 人体構造・機能論

問題

問1:正しいのはどれか。

  1. 表皮は、中胚葉から分化して作られる。
  2. 神経系は、内胚葉から分化して作られる。
  3. 消化管粘膜は、中胚葉由来である。
  4. 副腎髄質は、外胚葉由来である。
  5. 筋組織は、内胚葉由来である。
解答

正しい記述は、4 です。

解説
  1. 表皮(皮膚の外層)は、外胚葉Ectoderm)由来です。
  2. 神経系は、外胚葉由来です。外胚葉の神経板神経管を形成し、脊髄へ分化します。
  3. 消化管の粘膜上皮は、内胚葉Endoderm)由来です。
  4. 正しい記述です。副腎髄質(Adrenal Medulla)は、外胚葉神経堤細胞から分化します。一方、副腎皮質中胚葉由来で、ステロイドホルモンを分泌します。
  5. 筋組織(骨格筋・心筋・平滑筋)は、中胚葉Mesoderm)由来です。

問2:正しいのはどれか。

  1. グリア細胞は、筋組織に含まれる。
  2. グリア細胞は、活動電位を発生させる。
  3. アストロサイト(星状膠細胞)は、末梢に存在する。
  4. シュワン細胞は、グリア細胞の1種である。
  5. 無髄神経では、グリア細胞が軸索に取り巻いて多層の脂質膜を形成する。
解答

 正しい記述は、4 です。

解説
  1. グリア細胞は、神経系に属する支持細胞であり、筋組織には存在しません。
  2. 一般に、グリア細胞は活動電位を発生させません。神経細胞(ニューロン)が活動電位を発生させ、情報伝達を担います。
  3. アストロサイト中枢神経系(脳・脊髄)に存在するグリア細胞であり、末梢神経系には存在しません。
  4. シュワン細胞は、末梢神経系に存在するグリア細胞で、軸索を取り巻き、髄鞘を形成するなどの役割を果たします。
  5. 無髄神経ではなく、有髄神経の記述です。オリゴデンドロサイトシュワン細胞などのグリア細胞が軸索の周りを何重にも取り囲み、脂質に富んだ構造である髄鞘が形成されます。この髄鞘を有する神経を有髄神経といいます。


問3:正しいのはどれか。

  1. 神経細胞体は、神経伝達物質を放出する。
  2. 神経の樹状突起は、シナプスを介して情報を受け取る。
  3. 有髄神経は、活動電位の伝導速度が無髄神経より遅い。
  4. 神経細胞同士は、 ギャップジャンクションで繋がっている。
  5. 血液脳関門は、オリゴデンドロサイト(寡突起膠細胞)によって形成される。
解答

 正しい記述は、2 です。

解説
  1. 神経伝達物質の放出は通常、軸索終末(シナプス終末)で行われます。神経細胞体は、主にタンパク質RNA合成及び代謝神経伝達物質の合成などに関与します。
  2. 正しい記述です。樹状突起は、他の神経細胞からのシナプス入力を受け取る主要な構造です。
  3. 有髄神経では、活動電位の伝導速度は無髄神経よりも速いです。
  4. 神経細胞同士は、シナプスを介して接続しており、ギャップジャンクション心筋同士などの接続に関与します。
  5. 血液脳関門(Blood-Brain Barrier, BBB)の形成に関与するグリア細胞は、星状膠細胞アストロサイトです。オリゴデンドロサイトは、髄鞘の形成に関与します。

問4:正しいのはどれか。

  1. 平滑筋は、随意的支配を受ける。
  2. 骨格筋は、自律神経により支配される。
  3. 心筋は、横紋をもたない。
  4. 平滑筋は、合胞体である。
  5. 膀胱の筋層は、平滑筋で構成される。
解答

 正しい記述は、5 です。

解説
  1. 平滑筋自律神経系によって支配されるため、随意的支配は受けません。
  2. 骨格筋随意筋であり、主に運動神経により支配されます。
  3. 心筋横紋をもつ筋組織です。横紋がないのは平滑筋です。
  4. 合胞体は、複数の個別の細胞が融合して、一つの大きな細胞として機能する構造をいいます。典型的な合胞体の例としては、骨格筋があります。骨格筋は発生過程で多くの筋芽細胞が融合して形成されるため、一本の筋線維(=筋細胞)内に多数の核が存在します。
    平滑筋は通常単核の細胞がギャップジャンクションを介して連絡し合うことで協調した収縮を行います。心筋単核または二核の細胞が多く、隣接する心筋細胞同士は発達したギャップジャンクションで連絡し、機能的には合胞体のように働きます(一つの細胞にように働く)が、真の意味での合胞体(細胞融合による多核体)ではありません。
  5. 正しい記述です。膀胱の筋層(主に内側の粘膜下筋層および外側の筋層)は平滑筋で構成されています。

問5:正しいのはどれか。

  1. 胃粘膜は、扁平上皮細胞で構成される。
  2. 膀胱は、移行上皮からなる。
  3. 心膜は、粘膜の一種である。
  4. 関節腔は、漿膜で覆われている。
  5. 肺胞上皮は、円柱上皮で構成される。
解答

 正しい記述は、2 です。

解説
  1. 胃粘膜の表面上皮は単層円柱上皮であり、扁平上皮ではありません。
  2. 正しい記述です。膀胱の内腔は移行上皮で覆われており、内容を膨張・収縮させることができます。
  3. 心膜は心臓を覆う膜であり、内層は漿膜漿液を分泌する)です。
  4. 関節腔内部は滑膜(関節内膜)によって覆われています。滑膜は血管神経を多く含み、関節液を分泌します。
  5. 肺胞上皮は、単層扁平上皮で構成されます。

ポイント

組織と胚葉

  • 組織は同じ機能や特徴を持つ細胞の集団とその周囲の物質からなり、生体内の組織は神経組織、組織、上皮組織、結合組織の4種類に分類されます。
  • 胚葉とは、発生初期(受精卵が細胞分裂を繰り返して形成される初期段階)において形成される三つの主要な細胞層のことを指します。
  • 各胚葉が分化し、特定の組織や器官が形成されます。
胚葉概要
外胚葉
Ectoderm
主に外部環境に接する組織や
中枢・末梢神経系に分化します。
皮膚の表皮、毛髪、爪などの表皮組織
神経管から分化した脊髄末梢神経系
眼の一部、歯のエナメル質など
中胚葉
Mesoderm
身体の内部構造の多くを形成し、
支持・運動・循環・分泌などに
関わる組織となります。
骨格系(骨、軟骨、筋肉)
血液血管
腎臓生殖器などの内臓およびその支持組織
結合組織、脂肪組織
内胚葉
Endoderm
消化管や呼吸器系の内側を構成し、
内分泌腺などを形成します。
消化管全体の内膜、肝臓、膵臓、胆嚢など
呼吸器系(気管、肺)の内側
一部の内分泌腺や甲状腺、上皮細胞など
管理人
管理人

全て覚えるのは大変なので、外胚葉表皮神経系内胚葉消化管などの内側中胚葉その他、と簡単に覚えておくと良いでしょう。

神経組織

  • 神経組織は外胚葉由来の組織で、神経細胞グリア細胞(神経膠細胞)から構成されます。
  • 以下は中枢神経系の構成細胞のイメージです。神経細胞や血管の周りに、多数のグリア細胞(アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイト)が存在します。

神経細胞

  • 神経細胞は、刺激に応じて興奮(=活動電位)を発生し、他の神経細胞や臓器などの効果器情報(=活動電位)を伝達する機能を持ちます。
  • 神経細胞の軸索活動電位が伝わることを伝導といい、神経細胞から他の神経細胞活動電位が伝わることを伝達といいます。
  • 神経細胞の情報伝達は、シナプス(神経細胞同士または神経細胞と効果器の接続部位)を介して行われます。

神経細胞の構造

  • 神経細胞は主に、細胞体神経突起から構成されます。
  • 細胞体はを含み、神経伝達物質の合成や活動電位の発生に関与しています。
    ※実際には、活動電位は細胞体から軸索が出る起始部付近(軸索小丘)から、軸索の最初の部分(軸索初節)にかけて発生しますが、テキストでは「細胞体から活動電位を出す」となっています。
  • 細胞体から分岐して伸びる短い突起を樹状突起といいます。
  • 樹状突起は、シナプスを介して他の神経細胞からの信号を受け取ります。
  • 細胞体から伸びる長く細い突起を軸索といいます。
  • 軸索は髄鞘で覆われている場合があり、軸索髄鞘を合わせて神経線維といいます。
  • 軸索は活動電位軸索終末まで伝導し、軸索終末からは神経伝達物質放出されます。

活動電位

  • 活動電位とは、神経細胞の膜電位が急激に変化する現象です。
  • 通常、細胞内静止電位(刺激がない状態)でマイナスに保たれていますが、刺激により一時的プラスに変わり、その後再びマイナスに戻ります。
  • この電位変化(=活動電位)が軸索伝導し、情報を遠くまで送ります。

神経線維の構造

  • 神経線維には、軸索に髄鞘がある有髄線維と髄鞘を持たない無髄線維があります。
  • 髄鞘ミエリン鞘)は、軸索の周りを何重にも取り囲む脂質に富んだ層構造をいいます。
  • 髄鞘は、グリア細胞により形成されます(後述)。
  • 神経伝導速度は、有髄線維の方が無髄線維よりも大きくなります。

グリア細胞(神経膠細胞)

  • 神経細胞以外の細胞の総称で、神経細胞の支持栄養を担う細胞です。
  • 中枢神経系(脳と脊髄)と末梢神経系では、存在するグリア細胞の種類が異なります。
  • それぞれの代表的なグリア細胞とその機能を以下に示します。
中枢神経系(CNS)のグリア細胞
グリア細胞主な機能
アストロサイト
星状膠細胞
神経細胞への栄養の供給や、
過剰なイオンや神経伝達物質の除去
血液脳関門の形成などに関与
オリゴデンドロサイト
寡突起膠細胞
髄鞘の形成
ミクログリア
小膠細胞
病原体の排除や細胞の残骸・
異常物質の除去などの免疫機能
末梢神経系(PNS)のグリア細胞
グリア細胞主な機能
シュワン細胞髄鞘の形成

血液脳関門(BBB:Blood Brain Barrier)

  • 血液脳関門は、血液中枢神経系(脳、脊髄)の組織液との間の物質交換制限する機構です。
  • 中枢神経系の血管は末梢組織と異なり、周囲をアストロサイト周皮細胞が覆った特徴的な構造をしており、血液からの物質の侵入を防いでいます。

筋組織

  • 筋組織は、形態学的、生理学的に骨格筋、心筋、平滑筋に分けられます。
  • 意識的に動かすことができる筋肉を随意筋、意識的に動かすことができない筋肉を不随意筋といいます。
  • 顕微鏡で見ると筋線維に横に走る細かい縞模様を持つ筋肉を横紋筋といいます。

筋肉の分類

  • 心筋細胞は単細胞ですが、心筋細胞同士はギャップジャンクションで繋がっており、一つの(機能的)合胞体を形成します。
  • 機能的合胞体とは、細胞間の密接な結合を通じて、複数の細胞が連携し、組織全体が単一の細胞のように動作する状態を指します。
  • 代表的な機能的合胞体は心筋で、個々の心筋細胞が同期して収縮し、心臓全体が効果的にポンプ機能を果たします。

骨格筋の構造

  • 骨格筋は多くの筋線維束が集まってできています。
  • これらの筋線維束はさらに多数の筋線維(=筋細胞)が集まって構成されています。
  • 筋線維は非常に長い細胞で、多数の核を持ちます。
  • 筋線維の細胞質内には収縮を司る筋原線維が規則正しく配列します。
  • 複数の筋線維が集まって筋線維束が形成され、その外側は筋周膜で覆われています。
  • 筋線維束がさらに集まって筋全体が形成され、その外側は筋外膜で覆われています。
  • 筋の末端部にはが連結しており、腱を通じて筋の収縮力がに伝わり、関節を動かします。
  • 以下に骨格筋の構造を示します。

上皮組織

  • 上皮組織は、外部と内部の境界を形成する組織で、分泌、吸収、感覚、輸送、保護などの機能も持っています。
  • 上皮組織は細胞の層構造形状に基づいて分類され、扁平上皮、立方上皮、円柱上皮、移行上皮などがあります(以下にその一部を示します)。
上皮組織特徴
扁平上皮潰れたような平たい細胞(扁平上皮細胞)で構成される。
単層扁平上皮:血管内皮肺胞、漿膜など。
重層扁平上皮:口腔・咽頭・食道、肛門、膣など。
円柱上皮円柱状の細胞から構成される。
単層円柱上皮:粘膜上皮などにみられる。
•(単層)線毛円柱上皮:細胞表面に線毛をもつ。卵管気管
移行上皮腎盂尿管膀胱尿道の一部の表面を覆う上皮。 
臓器の拡張および収縮機能に応じて形態が変化する

膜組織

  • 膜組織は主に結合組織と上皮組織から構成されており、漿膜粘膜滑膜などがあります。
膜組織特徴
漿膜腹膜胸膜心膜などの体腔内面
内臓器官の表面を覆う薄い半透明の膜
粘膜消化管などの内表皮を覆う膜で、
上皮組織で構成される。
粘液を分泌し、吸収粘膜保護を行う。
滑膜関節の周りに存在する関節腔を覆う組織で、
関節包を形成する。

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