【呼吸器疾患】呼吸機能検査(スパイロメトリー)と換気障害を図解で総整理(要点解説)

8章 循環器疾患・呼吸器疾患

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👉 【呼吸器疾患】5択クイズで学ぶ!主要症候と検査の基礎

🔰 この記事について

  • 本記事は、呼吸器疾患(総論) についての要点解説記事です(※クイズは別記事)。
  • 基礎から整理して学びたい方は、この要点解説から読み進めてください。

🖊️ この記事で学べる内容

以下の内容について、特徴や違いのポイントをまとめています。

  • 呼吸機能検査(スパイロメトリー)の基礎
  • 換気障害の分類
  • 呼吸器疾患のその他の検査
    (診療情報管理士 基礎・医学編 8章 臨床医学各論Ⅴ に対応)

🩺 学習の進め方

この 呼吸器疾患(総論) シリーズは、
「5択クイズ編」と「要点解説編」 の2本立てになっています。

おすすめの使い方👇

  1. 最初に 5択クイズ に挑戦して理解度チェック
  2. できなかった部分を、要点解説記事(本記事) でしっかり整理
  3. 最後にもう一度クイズを解いて、知識を定着

💡 学習のポイント

  • 最初にクイズに挑戦することで、「どこが出題ポイントなのか」が自然と見えてきます。
  • その後に要点解説を読むと、疾患の関連や違いが理解しやすくなります。
  • 理解を深めたあとにもう一度クイズに挑戦すれば、知識がしっかり定着します。
  • 本記事は、診療情報管理士をはじめ、理学療法士・作業療法士・看護師など
    幅広い医療系資格の勉強に対応しています。

🔍 出題ポイントのまとめ|呼吸機能検査・その他の検査

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▶ 呼吸機能検査(スパイロメトリー)
▶︎ 換気障害の分類
▶︎ 呼吸器疾患のその他の検査

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呼吸機能検査(スパイロメトリー)

呼吸機能検査(スパイロメトリー)とは

  • スパイロメトリーは、スパイロメーターを用いて呼吸機能障害の程度を評価する検査です。
  • 測定で得られる呼吸曲線(スパイログラム)から、肺気量分画肺容量を読み取り、換気障害の有無やタイプ(閉塞性・拘束性など)を判断します。
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

スパイロメトリーは「検査の名前」、
スパイログラムは「結果の波形」です。

肺気量分画と肺容量

  • 肺気量分画は、呼吸の各段階で出入りする空気量を表します。
  • 一方、肺容量は、これらの肺気量分画を組み合わせた肺全体の空気量を示します。
  • 以下の図で、肺気量分画肺容量の全体像を確認しましょう。
    ※図では、青が肺気量分画、赤が肺容量を示しています。
スパイロメトリーで得られる呼吸曲線と、肺気量分画および肺容量の関係を示した図。左に自然呼吸と最大呼吸の呼吸曲線、中央に青色で1回換気量・予備吸気量・予備呼気量・残気量、右に赤色で肺活量・吸気容量・機能的残気量・全肺気量を示している。
図1:スパイロメトリーで評価する肺気量分画と肺容量
青は肺気量分画(TV・IRV・ERV・RV)、
赤は肺容量(VC・IC・FRC・TLC)を示す。
項目略語定義覚え方・補足
1回換気量TV安静呼吸時に1回の呼吸
で出入りする空気量
500 mL
(成人男性)
予備吸気量IRV安静吸息の後、
さらに吸い込める吸気量
「まだ吸える分」
予備呼気量ERV安静呼息の後、
さらに吐き出せる呼気量
「まだ吐ける分」
残気量RV最大呼息後
肺内に残る空気量
スパイロメトリーでは
直接測定不可
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

スパイロメーターで測定できるのは、吸った空気量吐いた空気量です。
肺内に残って外に出てこない残気量(RV)は測定できません。

項目略語定義・計算式補足
機能的残気量FRCERV + RV安静呼息後の肺内気体量
肺活量VCIRV + TV + ERV3〜4.5 L
全肺気量TLCVC + RV肺に入る最大量
最大吸入量ICTV + IRV安静呼息位からの最大吸気量
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

肺活量は、最大呼吸のときに肺に出入りできる空気量で、
その人の「呼吸の予備能力」を含めた最大値を表します。

努力肺活量(FVC)と1秒量・1秒率(FEV₁・FEV₁%)

  • 努力呼吸時のスパイロメトリーでは、
    どれだけ速く、どれだけ多く息を吐けるかを指標として評価します。
  • 代表的なのが 努力肺活量(FVC)・1秒量(FEV₁)・1秒率(FEV₁%) です。
  • 最大吸気後できるだけ速く一気に、吐けなくなるまで吐いたときの呼気量です。
    • 「努力して吐いたときの肺活量」
    • 肺に出入りできる最大量を表す指標
    • 拘束性換気障害では低下しやすい
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

肺活量(VC)を「ゆっくり測る」のに対し、
FVCは「一気に吐いて測る」のがポイントです。

  • 努力肺活量のうち、最初の1秒間に吐き出された空気量です。
    • 「どれだけ速く吐けるか」を表す指標
    • 気道の狭さの影響を受けやすい
    • 閉塞性換気障害で低下しやすい説明
  • 1秒量 ÷ 努力肺活量 × 100(%) で求めます。
    • 吐き出せた空気のうち、
      最初の1秒でどれだけ吐けたかの割合
    • 基準値:70%以上
    • 気流制限の有無をみる重要指標
    • 閉塞性換気障害の判定に特に重要
最大吸気後に行う努力呼気の呼吸曲線を示した図。左に自然呼吸、右に努力呼気の曲線を示し、努力呼気全体の量が努力肺活量(FVC)、開始から最初の1秒間に吐き出された量が1秒量(FEV₁)として色分けされている。
図2:努力呼吸曲線における努力肺活量(FVC)と1秒量(FEV₁)
最大吸気後の努力呼気で、全体がFVC、
最初の1秒間に吐き出された量がFEV₁を示す。

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▶︎ 換気障害の分類
▶︎ 呼吸器疾患のその他の検査

換気障害の分類

  • スパイロメトリーでは、
    1秒率(FEV₁%) と %肺活量(%VC) を用いて、換気障害を分類します。
  • まず、1秒率と%肺活量を用いた換気障害の分類を図で確認しましょう。
  • 横軸に%肺活量、縦軸に1秒率を示しています。
縦軸に1秒率(FEV₁%)、横軸に%肺活量(%VC)をとった換気障害の分類図。右上が正常、右下が閉塞性換気障害、左上が拘束性換気障害、左下が混合性換気障害を示している。
図3:1秒率と%肺活量による換気障害の分類
縦軸に1秒率(FEV₁%)、横軸に%肺活量(%VC)を示し、
正常、閉塞性換気障害、拘束性換気障害、混合性換気障害を区分している。

閉塞性換気障害

  • %肺活量は正常(80%以上) である一方、
    1秒率(FEV₁%)が低下 します。
    • 吐き出す速さが低下するのが特徴
    • 気道の狭窄や閉塞が主な原因
    • 代表疾患:COPD(慢性閉塞性肺疾患)、気管支喘息

拘束性換気障害

  • 1秒率(FEV₁%)は正常(70%以上) ですが、
    %肺活量(%VC)が低下 します。
    • 肺が十分に広がらず、肺容量が減少
    • 肺実質や胸郭の障害が主な原因
    • 代表疾患:間質性肺疾患(間質性肺炎)
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

閉塞性換気障害は、気道が狭くなっていて「吐き出しにくい」障害、
拘束性換気障害は、肺が十分に広がらず「吸い込みにくい」障害です。

(補足)混合性換気障害
  • 1秒率と%肺活量の両方が低下 する場合は、混合性換気障害 と考えます。
%肺活量(%VC)とは
  • %肺活量は、実測値予測値に対してどの程度かを示す指標です。

%肺活量(%VC=実測肺活量予測肺活量×100

※ 予測肺活量 は、性別・年齢・身長から算出される理論値です。

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呼吸器疾患のその他の検査

  • スパイロメトリーは呼吸機能評価の基本ですが、
    病変の部位重症度を把握するためには、他の検査も併用します。
  • ここでは、呼吸器疾患でよく用いられる代表的な検査を整理します。

画像診断

  • 呼吸器疾患では、病変の存在や広がりを視覚的に評価するために画像診断が重要です。
  • 以下のような検査が行われます。
検査特徴・評価できること
胸部X線検査最も基本的な検査。
肺炎、胸水、気胸、心拡大などの評価に用いる。
胸部CT肺野や気道を詳細に評価できる。
間質性肺炎腫瘍性病変の診断に有用。
胸部MRI縦隔病変血管病変の評価に用いられることがある。
気管支鏡検査気道内内視鏡を挿入して直接観察を行う検査。
気管支肺胞洗浄(BAL)生検なども行える。
胸腔鏡検査胸壁に小さな孔を開け、胸腔内内視鏡を挿入して
直接観察を行う検査。
胸膜病変や肺表面病変の評価、組織採取に用いられる。
  • 気管支肺胞洗浄(BAL:bronchoalveolar lavage)は、気管支鏡を用いて肺の末梢気道に生理食塩水を注入し、回収した洗浄液を分析する検査です。
  • 主に、肺炎の原因検索間質性肺疾患の診断補助として用いられます。

動脈血ガス分析

  • 呼吸障害の程度を数値を用いて、客観的に評価する検査です。
  • 動脈血を採取し、血液中のガス成分を測定します。
  • 主に以下の項目を評価します。
項目略語意味・評価すること基準値
(成人・安静時)
動脈血
酸素分圧
PaO₂血液中に溶けている酸素量。
酸素化の指標
80~100 mmHg
動脈血
酸素飽和度
SaO₂ヘモグロビンに酸素が
結合している割合
95%以上
動脈血
二酸化炭素分圧
PaCO₂血液中の二酸化炭素量。
換気状態の指標
35~45 mmHg
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

PaO₂のPpressure(分圧)、
SaO₂のSsaturation(飽和)を表します。
a はいずれも arterial(動脈)を意味します。

SaO₂ と SpO₂ の違い

  • どちらも血液中の酸素飽和度を示しますが、測定方法が異なります。
  • ヘモグロビンに結合している酸素の割合を評価し、ほぼ同等の値を示します。
項目SaO₂(動脈血酸素飽和度)SpO₂(経皮的酸素飽和度)
測定方法動脈血を採血して測定パルスオキシメータ
用いて経皮的に測定
使用機器動脈血ガス分析装置パルスオキシメータ
測定部位動脈血指先・耳朶など
特徴正確な評価が可能簡便・非侵襲的
  • パルスオキシメーターは、指先などに赤色光赤外光を照射し、その吸収の違いから経皮的に酸素飽和度(SpO₂)を測定する機器です。
  • 採血を必要としない
  • 非侵襲的で簡便
  • SaO₂とほぼ同等の値を示す
    ため、呼吸状態のモニタリングに広く用いられます。
講師<br>(管理人)
講師
(管理人)

SaO₂採血して正確に測る指標、
SpO₂簡便に推定する指標です。

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呼吸機能検査(スパイロメトリー)
  • スパイロメーターを用いて、呼吸機能を評価する検査
    • 測定結果はスパイログラム(呼吸曲線)として示される。
  • 残気量
    • 最大呼気後も肺内に残る空気量
    • スパイロメトリーでは直接測定できない
  • 1回換気量
    • 安静呼吸時に、1回の呼吸で出入りする空気量
    • 約500mL
  • 肺活量
    • 最大呼吸のときに、肺に出入りする空気量。
    • 予備吸気量+1回換気量+予備呼気量
  • 努力肺活量
    • 最大吸気後、できるだけ速く一気に吐き出した空気量
  • 1秒率
    • 努力肺活量のうち、最初の1秒間に吐き出された空気量の割合
    • 1秒量 ÷ 努力肺活量 × 100
換気障害の分類
  • 閉塞性換気障害
    • 1秒率が低下(70%未満)、肺活量は正常
    • 気道の狭窄により、空気を吐き出しにくい障害。
    • COPD、気管支喘息でみられる
  • 拘束性換気障害
    • %肺活量が低下(80%未満)、1秒率は正常
    • 肺や胸郭が十分に広がらず、空気を吸い込みにくい障害。
    • 間質性肺疾患でみられる
呼吸器疾患のその他の検査
  • 画像診断:X線・CT・MRI・気管支鏡胸腔鏡
  • 動脈血ガス分析
    • PaO₂:動脈血酸素分圧(80−100 mmHg)
    • PaCO₂:動脈血二酸化炭素分圧(35–45 mmHg)
    • SaO₂:動脈血酸素飽和度(95%以上)
  • SpO2パルスオキシメーターで測定されるSaO2

※ 記事作成には正確を期しておりますが、内容に誤りや改善点がございましたら、お知らせいただけますと幸いです。
今後の教材作成の参考にさせていただきます。

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