スピロヘータ・クラミジア・リケッチアは、分類や構造が一般的な細菌と異なり、覚えにくいと感じる学生も多い分野です。
特にクラミジアやリケッチアは「細菌なのにウイルスのような性質を持つ」と言われることもあり、混乱しやすいポイントです。
「細菌・ウイルス・真菌・寄生虫の違いを整理しておきたい」という方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
👉 【病原体の種類】5択クイズで理解!細菌・ウイルス・真菌・寄生虫の違いを整理しよう
今回は、これらの“変わり種”細菌による感染症について、5択クイズ5問+解答解説つきで確認します。
後半の
📚 感染症まとめ|クイズで登場した疾患を再チェック!
では、原因微生物・症状・感染経路・検査や治療などをわかりやすく整理。
試験前の総復習や、苦手分野の克服にぜひご活用ください!
🖊️ クイズで学ぶ|スピロヘータ・クラミジア・リケッチア
問1:疾患と病原体の組み合わせで正しいのはどれか。
- 回帰熱 ー リケッチア
- 日本紅斑熱 ー 原虫
- 梅毒 ー ウイルス
- オウム病 ー 真菌
- 発疹チフス ー リケッチア
解答
正しい組み合わせは、5 です。
解説
- 回帰熱の病原体は、スピロヘータの一種である ボレリア・レカレンティス(Borrelia recurrentis)です。リケッチアではありません。
- 日本紅斑熱の病原体は、リケッチア科の リケッチア・ジャポニカ(Rickettsia japonica)です。原虫ではありません。
- 梅毒の病原体は、スピロヘータである トレポネーマ・パリダム(梅毒トレポネーマ)です。ウイルスではありません。
- オウム病の病原体は、クラミジア属の クラミジア・シッタシ(Chlamydia psittaci)です。真菌ではありません。
- 発疹チフスの病原体は、リケッチア属の リケッチア・プロワゼキ(Rickettsia prowazekii)によって起こるため、正しい組み合わせです。
問2:疾患と病原体の組み合わせで正しいのはどれか。
- トラコーマ ー ウイルス
- ライム病 ー リケッチア
- ツツガムシ病 ー 原虫
- レプトスピラ症 ー スピロヘータ
- Q熱 ー クラミジア
解答
正しい組み合わせは、4 です。
解説
- トラコーマの病原体は、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)です。ウイルスではありません。
- ライム病の病原体は、スピロヘータの ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)です。リケッチアではありません。
- ツツガムシ病の病原体は、リケッチア科のオリエンタ・ツツガムシ(Orientia tsutsugamushi)原虫ではありません。
- 正しい組み合わせです。
レプトスピラ症は、スピロヘータの一種である レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)が原因です。ネズミなどのげっ歯類の尿中に存在し、汚染水などを介して感染します。 - Q熱の病原体は、以前はリケッチアの一種と考えられていましたが、現在はレジオネラ目の細菌であるとされています。クラミジアではありません。
問3:疾患と媒介動物の組み合わせで正しいのはどれか。
- 日本紅斑熱 ー コロモジラミ
- 発疹チフス ー ネズミ
- 回帰熱 ー コガタアカイエカ
- ツツガムシ病 ー ノミ
- ライム病 ー マダニ
解答
正しい組み合わせは、5 です。
解説
- 日本紅斑熱は、リケッチア・ジャポニカを保有するマダニの刺口により感染します。
コロモジラミは関与しません。 - 発疹チフスは、患者の血液を吸血したコロモジラミ(Pediculus humanus corporis)によって媒介されます。ネズミが関連する感染症には、ペスト(ノミ経由)やレプトスピラ症(尿経由)、ラッサ熱などがあります。ペスト菌はネズミなどのげっ歯類に保有され、それらを吸血したノミがヒトを刺すことで感染します。レプトスピラ菌は、ネズミなどの保菌動物の尿から排泄され、汚染された土壌などと接触することにより感染します。ラッサ熱は、ウイルスを保有するネズミ(マストミス)からヒトに感染し、ヒトからヒトに感染が拡大します。
- 回帰熱は、シラミまたはダニに媒介されるスピロヘータ感染症です。
コガタアカイエカは、日本脳炎ウイルスを媒介する蚊の一種であり、関係ありません。 - ツツガムシ病は、ダニの一種であるツツガムシ(Leptotrombidium属)により媒介されます。
ノミは関与しません。 - 正しい組み合わせです。
ライム病はスピロヘータのボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)による感染症で、マダニによって媒介されます。
問4:正しいのはどれか。
- 発疹チフスの検査に、ワイル・フェリックス反応が用いられる。
- 日本紅斑熱では、抗ストレプトリジンO抗体が陽性となる。
- ワイル病は、リケッチア感染症である。
- Q熱は、ヒトだけの病気である。
- 日本紅斑熱は、1950年代以降国内での発症者は出ていない。
解答
正しい記述は、1 です
解説
- ワイル・フェリックス反応は、リケッチア感染症(発疹チフス、日本紅斑熱、ツツガムシ病など)に対して行われるスクリーニング検査※です。
※スクリーニング検査とは、症状のない人を対象に、病気を早期に見つけるための簡易な検査です。
健康診断やがん検診でよく使われる方法で、病気の「入り口チェック」のような役割をします。
異常が見つかれば、次に本格的な検査(診断)へ進みます。 - 抗ストレプトリジンO抗体が陽性となるのは、猩紅熱など溶連菌の感染症です。
- ワイル病は黄疸出血性レプトスピラ症で、スピロヘータ感染症です。
- Q熱は、人畜共通感染症です。
- 日本紅斑熱ではなく、発疹チフスの記述です。日本紅斑熱は、近年増加傾向を示しています。
問5:疾患と症状の組み合わせで正しいのはどれか。
- 日本紅斑熱 ー 盗汗
- ツツガムシ病 ー 無痛性の刺し口
- 回帰熱 ー 遊走性紅斑
- オウム病 ー 結膜炎
- ワイル病 ー 肺炎
解答
正しい組み合わせは、2 です。
解説
- 盗汗は病的な寝汗のことで、結核や癌など全身が衰弱するような状態の時にみられます。
日本紅斑熱では、発熱、発疹、刺し口(主要三徴候)などがみられます。 - 正しい組み合わせです。
日本紅斑熱と同様、ツツガムシ病の主要な三徴候として、発熱、発疹、刺し口があり、ほとんどの症例でみられます。刺し口は無痛性で黒色痂皮を形成するのが特徴的です。 - 遊走性紅斑は、マダニに咬まれた部位が紅斑となり、ゆっくりと拡大していくもので、ライム病でみられます。回帰熱では周期的な発熱と解熱の繰り返しが主症状となります。
- オウム病は吸入感染によるクラミジア感染症で、軽症であれば風邪症状、重症化すると肺炎症状がみられます。結膜炎は、トラコーマ(クラミジア感染症)でみられます。
- ワイル病は黄疸出血性レプトスピラ症で、黄疸や出血傾向がみられます。
📚 感染症まとめ|クイズで登場した疾患を再チェック!
スピロヘータ感染症
- スピロヘータはらせん状のグラム陰性菌で、ヒトに病原性を示す菌には以下のようなものがあります。
分類 | 病原体(疾患) |
---|---|
トレポネーマ属 | 梅毒トレポネーマ(梅毒) |
ボレリア属 | ボレリア・ブルグドルフェリ(ライム病)、ボレリア・レカレンティス(回帰熱) |
レプトスピラ属 | レプトスピラ・インターロガンス [ 黄疸出血性レプトスピラ症(ワイル病)] |
回帰熱
- シラミやダニが媒介するスピロヘータ感染症です。
- 高熱が持続し、その後無熱期と有熱期を繰り返す周期熱となります。
ライム病
- マダニが媒介するスピロヘータ感染症です。
- 初期症状として、遊走性紅斑があります。
クラミジア感染症
- クラミジアは細胞内でのみ増殖可能な偏性細胞内寄生菌で、ヒトに感染する菌には以下のようなものが知られています。
代表菌 | 代表疾患 |
---|---|
クラミジア・トラコマティス | クラミジア結膜炎(トラコーマ)、性器クラミジア感染症 |
クラミジア・ニューモニエ | 肺炎クラミジア肺炎 |
クラミジア・シッタシ | オウム病 |
- 性器クラミジア感染症については、性感染症を参照してください。
オウム病
- クラミジア・シッタシの吸入感染による人獣共通感染症です(トリからヒトへ感染)。
- 高熱、頭痛、乾性咳嗽などの非定型肺炎症状を呈し、重症例では肝障害や脾腫、比較的徐脈がみられることもあります。
トラコーマ
- クラミジア・トラコマティスの接触感染により、結膜炎を起こす疾患です。
- 発展途上国で失明の原因となっています。
リケッチア感染症
- リケッチアは細胞内に寄生しなければ増殖できない小さな細菌で、ダニ、ノミ、シラミなどの節足動物(ベクター:運び屋さん)を通じて感染します。
- 代表疾患とそれぞれのベクターを以下の表に示します。
代表疾患 | ベクター |
---|---|
発疹チフス | コロモジラミ |
ツツガムシ病 | ツツガムシ(ダニの一種) |
日本紅斑熱 | マダニ |
発疹チフス
- シラミによって媒介されるリケッチア感染症です。
- 患者の血液を吸血したコロモジラミに吸血されることで、感染します。
- 1~2週間の潜伏期後の稽留熱と紅斑性発疹が特徴的です。
- 重症例では、発疹が点状出血斑となり精神症状(傾眠、錯乱、譫妄など)が出現します。
- 血清診断として、ワイル・フェリックス反応があります。
- 1950年代以降、国内での流行はみられていない。
ツツガムシ病
- ダニの一種であるツツガムシを媒介動物とする感染症です(4類感染症)。
- 悪寒、頭痛、発熱、全身の麻疹様皮疹および黒色痂皮を伴う刺し口(通常は無痛性)などがみられます(発熱、発疹、刺し口が主要三徴候です)。
- 治療が遅れるとDIC(播種性血管内凝固症候群)を合併し、死因となります。
日本紅斑熱
- マダニに媒介されるリケッチア感染症で、近年増加傾向にあります。
- 発熱(38~40℃)後、四肢末端から紅斑が出現し、次第に出血性となります。
- 特有の刺し口がみられることがあります。
- ツツガムシ病と同じく、発熱、発疹、刺し口が主要な三徴候です。
クイズ形式で覚えたい人はこちら
この記事と性感染症 の記事まで勉強が終わった人は、クイズで理解度をチェックしてみてください。
一問一答形式で選択肢一つ一つをじっくり復習できるクイズと5択クイズでサクッと復習できるクイズの2種類を用意しています。
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