真菌と細菌の違い、しっかり理解していますか?
「まだ不安…」という方は、まずは👉 病原体の種類を解説した記事 をチェックしておきましょう。
身近な真菌感染症といえば「水虫(足白癬)」が有名ですが、それ以外にもカンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコッカス症、ムーコル症、ニューモシスチス肺炎など、医療系の資格試験や国家試験でも頻出の疾患が多数あります。
この記事では、5択クイズを解きながら、代表的な真菌感染症6つの要点を効率よく学べる構成になっています。
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後半の📚 感染症まとめ|クイズで登場した疾患を再チェック!
で要点を確認してから取り組むのがおすすめです。
🖊️ クイズで学ぶ|真菌感染症
問1:正しいのはどれか。
- 白癬では、迅速なアムホテリシンB大量投与が必須となる。
- カンジダは、ハトの糞を介して肺や脳に侵入する。
- アスペルギルスは環境中に広く存在し、肺アスペルギローマなどを形成する。
- ムーコルは皮膚や消化管の常在真菌であり、人から人へ接触感染する。
- クリプトコッカスは足の角質層に感染し、「水虫」とも呼ばれる。
解答
正しい記述は、3 です。
解説
- 白癬は、皮膚、爪、粘膜などに発症する表在性真菌症で、通常は外用あるいは内服の抗真菌薬(アゾール系など)を用います。アムホテリシンBは、重症化しやすい深在性真菌症に用いられます。アムホテリシンBの早期・全身投与が必要となるのは、ムーコル症やクリプトコッカス髄膜炎などの深在性真菌症です。
- カンジダはヒトの口腔・消化管・膣などの常在菌であり、免疫低下や抗菌薬使用などで病原性を示します。ハトの糞を介して感染するのはクリプトコッカスです。
- 正しい記述です。アスペルギローマは、既存の肺空洞(結核後など)にアスペルギルスが球状に集積した構造物であり、非侵襲性アスペルギルス症でみられます。
- ムーコル(接合菌)は環境中に広く存在し、免疫低下時に日和見感染として鼻・脳・肺などへ急速に侵襲することが特徴であり、人から人へ接触感染するものではありません。皮膚や消化管の常在真菌で人から人へ接触感染を起こすのは、カンジダが代表的で、接触感染というよりも自己感染(内因性感染)が多くを占めます。
- クリプトコッカスは免疫低下例で肺炎や脳髄膜炎を起こす真菌で、足の角質層に感染して「水虫」となるのは白癬です。
問2:正しいのはどれか。
- 真菌は細菌の一種だが、細胞壁を持たない。
- カンジダ症は、免疫力低下やステロイド治療などが発症リスクとなる。
- 白癬菌は、胞子を吸入して肺に感染する。
- ムーコル症は、梅雨時から夏にかけて発症が増える傾向にある。
- アスペルギルスは皮膚糸状菌の一種であり、爪の変形などを引き起こす。
解答
正しい記述は、2 です。
解説
- 真菌は真核生物であり、細菌(原核生物)とは異なります。また、真菌は細菌と同じく、細胞壁を持ちます(ただし、真菌の細胞壁の主成分はβ-グルカンで、細菌の細胞壁の主成分ペプチドグリカンとは異なります)。
- カンジダは口腔や消化管、膣などに常在する真菌ですが、免疫力低下やステロイド治療などの要因があると過剰増殖を起こしやすく、感染症を発症・重症化させるリスクが高まります。
- 白癬菌(皮膚糸状菌)は皮膚の角質層や爪・毛髪などを侵す真菌であり、肺に感染を起こすものではありません。水虫(足白癬)や爪白癬などが代表例です。胞子を吸入して肺に感染する真菌には、アスペルギルスのほか、クリプトコッカスやムーコル(接合菌)なども含まれます。
- ムーコル症(接合菌症)は、ムーコル症は免疫不全患者に起こる日和見感染症で、特定の季節による明確な発症ピークは報告されていません。一方、梅雨や夏にかけて発症が増加する真菌感染症は、白癬です。
- アスペルギルスは環境中に広く存在する糸状菌であり、肺アスペルギローマや侵襲性肺アスペルギルス症などを起こすことがあります。アスペルギルスが爪白癬を起こすことは基本的にありません。爪白癬の原因は、皮膚糸状菌です。
問3:正しいのはどれか。
- ニューモシスチス肺炎の病原体は、真菌である。
- 白癬は診断が難しく、死亡例が多い。
- クリプトコッカスは、常在菌として口腔や膣に存在する。
- カンジダは、髄膜炎の原因となる。
- アスペルギルス症は、人畜共通感染症である。
解答
正しい記述は、1 です。
解説
- 正しい記述です。ニューモシスチスは真菌に分類されますが、細胞壁の構造などが通常の真菌と異なるため、治療には抗真菌薬ではなく、細菌に対する抗菌薬(ST合剤)が用いられます。
- 白癬は皮膚や爪、毛髪に感染して皮膚症状を引き起こしますが、診断は比較的容易で致死的となるケースは稀です。
- クリプトコッカスはハトの糞などで汚染された土壌から吸入感染する酵母様真菌で、口腔や膣に常在する菌ではありません。常在菌として口腔や膣に存在する真菌にはカンジダがあります。
- カンジダは髄膜炎の主な原因菌としては知られていません。髄膜炎の原因となる真菌にはクリプトコッカスがあります。
- アスペルギルス症は空気中に浮遊するアスペルギルス属(糸状菌)を吸入して感染します。動物由来ではなく土壌・落ち葉などの環境由来のため、「人獣共通感染症」ではありません。
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真菌とは
- 真菌は、真核生物(核膜をもつ核構造を持つ生物)の一種でカビや酵母やキノコ類が含まれます。
- 真菌は、その形態から糸状菌と酵母に分類されます。
真菌の分類 | 代表菌 |
糸状菌 | アスペルギルス、白癬菌、ムーコル(接合菌)など |
酵母 | カンジダ、クリプトコッカスなど |
白癬
- 皮膚に感染するカビ(皮膚糸状菌)によって引き起こされる皮膚感染症の総称です。
- 特に足にできるものを水虫といい、皮膚糸状菌が足の角質層で増殖することにより引き起こされます。
- 皮膚のかゆみや赤み、角質のはがれなどがみられます。
- ヒトや動物、床やマットなどに付着した白癬菌に接触することで感染します。
- 爪に感染した場合は爪白癬(つめはくせん)と呼ばれ、爪が白濁・肥厚・変形するのが特徴です。
頭部に感染した場合はケルスス禿瘡(けるすすとくそう)と呼ばれ、脱毛を伴う紅斑や膿瘍性病変を形成します。 - ケルスス禿瘡は深部白癬に分類され、足白癬や爪白癬などの表在性白癬よりも重症化しやすいのが特徴です。
- 治療には、抗真菌薬(外用薬や内服薬)が用いられますが、完治には時間がかかることもあります。
カンジダ症
- 皮膚、消化管、口腔、膣などに常在するカンジダ属の繁殖によっておこる感染症です。
- 性器、口腔咽頭、食道などの粘膜・皮膚病変を起こします。
- ステロイド治療、AIDS、抗菌薬使用、糖尿病、がん化学療法などによる免疫低下で発症することが多いです。
クリプトコッカス症
- ハトの糞などで汚染された土壌中に存在する菌の吸入により肺炎や(肺クリプトコッカス症)、脳髄膜炎を起こす(クリプトコッカス脳髄膜炎)真菌感染症です。
- HIV感染例など免疫低下患者に好発します。
ムーコル症(接合菌症)
- 環境中に広く生息する接合菌が、免疫低下時に日和見感染を起こす。
- 鼻脳型、肺型、皮膚型、消化管型、全身播種型などがある。
- 進行が極めて急速であり、可能であれば迅速な病変切除、アムホテリシンBの大量投与を行う。
アスペルギルス症
- アスペルギルス属は環境中に広く生息する糸状菌で、ヒトへは空気中のアスペルギルス胞子を吸入することで感染します。
- 肺アスペルギローマ、慢性壊死性肺アスペルギルス症、侵襲性肺アスペルギルス症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症などの病型をとります。
ニューモシスチス肺炎
- 以前は原虫(ニューモシスチス・カリニ)と考えられていましたが、真菌(ニューモシスチス・イロベチイ)であることが判明しました。
- HIV感染者において最も重要な真菌感染症(日和見感染)となっています。
- 三大症状として、急な発熱、乾性咳嗽、呼吸困難がみられます。
- 胸部X線検査では、びまん性のスリガラス状陰影が特徴的です。
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