感染症について勉強するときに、最初に出てくるのが「病原体の種類」。
でも…
「細菌とウイルスの違いは？」
「真菌って細菌の一種？」
「リケッチアって細菌？ウイルス？」
そんなふうに迷ったことはありませんか？
この記事はこんな人におすすめ！
- 感染症を授業で習い始めた医療系学生
- 細菌やウイルス、真菌などの違いが整理できていない人
- 医療系の国家試験勉強中の人や診療情報管理士認定対策試験勉強中の人
まずは、1問チャレンジしてみましょう。
“解答”の左にある黒い三角をクリックすると、解答と解説が表示されます。
練習問題で確認！病原体の基本をチェックしよう
問：正しいのはどれか。
- 真菌は、カビや酵母などの様な生活形態をもった原核生物である。
- マイコプラズマは、らせん形をした細菌である。
- クラミジアとリケッチアは、ともに寄生虫の一種である。
- クラミジアは、細胞壁を持たない。
- スピロヘータは、単細胞である。
解答
正しい記述は、5 です。
解説
- 真菌は原核生物ではなく、核膜をもつ真核生物です。
- らせん形をした細菌は、スピロヘータです。
- クラミジアとリケッチアはともに自己増殖できず、宿主の細胞内で増殖する非定型の細菌の一種です（典型的な細菌は自己増殖できます）。
- クラミジアは、細胞壁をもつ細菌です（ただし、定型細菌と異なり非常に薄い構造です）。細胞壁をもたない細菌は、マイコプラズマです。
- 細菌は、単細胞（細胞を1つしか持たない生き物）です。スピロヘータは細菌の一種なので、単細胞です。
問題が解けなかった人や解説がよくわからなかった人は、以下に要点をまとめましたので、参考にしてください。
病原体の種類と違いを理解する
細菌・真菌・寄生虫・ウイルスの分類と特徴
細菌の特徴
- 細菌は、単細胞の原核生物であり、基本的には自己増殖が可能です。
- 多くの細菌は細胞壁を持ち、これはペニシリンなどのβ-ラクタム系抗菌薬の作用標的となります。
- ただし、細菌の中には例外的な性質を持つものも存在します。以下のような代表例があります。
| 細菌の種類 | 主な特徴 | 備考・代表疾患例 |
|---|---|---|
| スピロヘータ | らせん状の細菌 | 梅毒トレポネーマ（梅毒の原因菌） |
| クラミジア・リケッチア | 宿主細胞内でのみ増殖（細胞内寄生性） | クラミジア：性器クラミジア感染症 リケッチア：発疹チフス |
| マイコプラズマ | 細胞壁を持たない | βラクタム系抗菌薬が効かない/マイコプラズマ肺炎 |
真菌の特徴
- 真菌は真核生物で、細胞壁を持つ単細胞または多細胞生物です。
- 酵母（単細胞）と糸状菌・カビ（多細胞）に分類されます。
- 真菌感染症は、免疫力が低下したときに発症しやすく、「日和見感染」に分類されるものも多いです。
- 代表的な感染症には、カンジダ症、肺アスペルギルス症、クリプトコッカス髄膜炎などがあります。
寄生虫の特徴
- 寄生虫は、真核生物であり、細胞壁を持たないという点で、細菌や真菌とは区別されます。
- その形態により、単細胞の原虫と多細胞の蠕虫に分類されます。
- 原虫には、マラリア原虫、アメーバ、赤痢アメーバ、トキソプラズマなどが含まれます。
- 一方、蠕虫は、線虫・吸虫・条虫に分類され、アニサキスやエキノコックスなどが代表的です。
ウイルスの特徴
- ウイルスは、DNAまたはRNAのいずれか一方の遺伝子のみを持ち、それがタンパク質の殻（カプシド）に包まれた最も小さい病原体です。
- 自身では増殖できず、宿主細胞に感染してその複製機構を利用することでのみ増殖が可能です（＝細胞内寄生性）。
- 細菌とは異なり、細胞壁や細胞膜を持たず、抗菌薬は無効です。
- ただし、インフルエンザやHIVなど一部のウイルスに対しては、抗ウイルス薬が開発・使用されています。
図で整理！病原体の構造的な違いを一目で理解しよう
原核生物か真核生物か
- 細胞内に核膜をもたない細胞を原核細胞といいます。細菌は、原核細胞からなる原核生物で、細胞質に浮かぶDNA（＝核様体）を持っています。
- 一方、細胞内に核膜をもつ細胞を真核細胞といい、真菌や寄生虫は真核生物に分類されます。
- ヒトの細胞も真核細胞であり、DNAは核内に存在します。
細胞壁の有無
- 細胞壁をもつ病原体は、細菌や真菌です。
- 寄生虫やヒトの細胞には、細胞壁は存在しません。
単細胞か多細胞か
- 細菌と原虫は単細胞生物ですが、真菌には単細胞の酵母と、多細胞のカビ（糸状菌）があります。
- 蠕虫は多細胞生物で、種類によっては肉眼で見える大きさになるものもあります（例：アニサキス、回虫など）。
文字だけでは理解しづらいと感じる方は、図を使って視覚的に覚えるのがおすすめです。
以下に、細胞構造の違いをイメージ図としてまとめてみました。
もう少し練習したい方へ｜類題にチャレンジ！
以下の類題を問いて、知識を深めましょう。
類題1．正しいのはどれか。
- ウイルスは、食品や土壌中などの動物細胞外でも増殖できる。
- スピロヘータは、自己増殖できない。
- リケッチアは、自己増殖可能である。
- マイコプラズマは、生きた細胞の中でのみ増殖する。
- クラミジアは、生きた細胞の中でのみ増殖する。
解答
正しい記述は、5 です。
解説
自己増殖できない病原微生物の代表は、ウイルスです。宿主の細胞内に侵入し、宿主細胞内で増殖します。スピロヘータ、リケッチア、マイコプラズマ、クラミジアはいずれも細菌ですが、以下の表にそれぞれの特徴をまとめています。
| スピロヘータ | らせん状の形態をもつ細菌。梅毒病原体が代表的。 |
| リケッチア、クラミジア | 自己増殖できず、生きた細胞の中でのみ増殖する。 |
| マイコプラズマ | 細胞壁をもたない細菌。 |
類題2．正しいのはどれか。
- 蠕虫は、最も単純で原始的な微生物で単一の真核細胞からなる。
- 真菌は細菌の一種だが、細胞壁を持たない。
- 原虫は、原核生物である。
- マイコプラズマは最も小さな病原体であり、電子顕微鏡でないと観察できない。
- 一般に、ウイルスは細菌よりも小さい。
解答
正しい記述は、5 です。
解説
- 蠕虫は、多数の真核細胞からなる多細胞生物です。
- 真菌は真核生物であり、原核生物である細菌とは異なります。また、細胞壁をもつため、後半部分も誤りです。細胞壁をもたない細菌は、マイコプラズマです。
- 原虫は、単一の真核細胞からなる真核生物です。
- マイコプラズマは、0.1 μm〜数 μmと自己増殖能をもつ病原体の中では最小ですが、病原体の中で最も小さいのはウイルスです。マイコプラズマの観察には電子顕微鏡が必要なので、後半の部分は正しいです。
- 4の記述にもありますが、ウイルスは最小の病原体であり、およそ100 nmです（観察には電子顕微鏡が必要です）。一方、一般的な細菌は1μmくらいの大きさなので、光学顕微鏡で観察可能です。
病原体の知識をさらに深めたい方へ｜感染症の基礎と分類も確認！
病原体の種類を理解したら、次に押さえておきたいのが「感染症そのもの」に関する知識です。
日和見感染や感染経路、感染症法による感染症の分類（1〜5類）などの基礎知識を整理したい方は、以下の記事もぜひご覧ください。
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