問題
問1:正しいのはどれか。
- 組織から血液中に物質が分泌されることを外分泌という。
- 成長ホルモンは、ステロイドホルモンである。
- 甲状腺ホルモンは、アミン型ホルモンである。
- 性ホルモンは、ペプチドホルモンである。
- 水溶性ホルモンは、細胞内の受容体に結合する。
解答
正しい記述は、3 です。
解説
- 組織から血液中に分泌されるのは、内分泌です。外分泌は、消化液や汗、母乳などの物質を管を通じて体外※に分泌することです。※消化管も外と繋がっているので体外とみなします。
- 成長ホルモン(GH)は、ペプチドホルモンに分類されます。
- 正しい記述です。甲状腺ホルモン(T3、T4)は、アミン型ホルモンに分類されます。
- 性ホルモン(エストロゲン、テストステロンなど)は、ステロイドホルモンに分類されます。
- ペプチドホルモンなどの水溶性ホルモンは、脂質でできた細胞膜を通過することができません。したがって、細胞膜上の受容体に結合します。一方、ステロイドホルモンなどの脂溶性ホルモンは、細胞内受容体に結合します。
問2:ステロイドホルモンはどれか。
- プロラクチン
- オキシトシン
- サイロキシン
- プロゲステロン
- パラトルモン
解答
正答は、4 です。
解説
- プロラクチンは下垂体前葉から分泌されるホルモンです。下垂体から分泌されるホルモンは全てペプチドホルモンです。
- オキシトシンは下垂体後葉から分泌されます。上述の通り、ペプチドホルモンです。
- サイロキシンは、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンです。甲状腺ホルモンは、アミン型ホルモンです(問1参照)。
- プロゲステロンは、卵巣の黄体から分泌される黄体ホルモンです。卵巣や精巣から分泌される性ホルモンはステロイドホルモンです。
- パラトルモンは、副甲状腺から分泌されるペプチドホルモンです。
問3:細胞内の受容体に結合するのはどれか。
- アドレナリン
- アルドステロン
- 甲状腺刺激ホルモン
- カルシトニン
- インスリン
解答
正答は、2 です。
解説
- 細胞内の受容体に結合するのは、ステロイドホルモンや甲状腺ホルモンなどの脂溶性ホルモンです。
- アルドステロンはステロイドホルモンであり、脂溶性なので細胞膜を通過し、細胞内の受容体に結合します。
- アドレナリンはカテコールアミン(水溶性)、その他は全てペプチドホルモン(水溶性)であるため、細胞膜上の受容体に結合します。
問4:正のフィードバック機構をもつホルモンはどれか。
- 成長ホルモン
- 甲状腺ホルモン
- パラトルモン
- エストロゲン
- レニン
解答
正答は、4 です。
解説
- 成長ホルモン(GH)は、負のフィードバック機構により分泌が調節されています。GHの血中濃度が増加すると、これが視床下部からの成長ホルモン放出ホルモン(GRH)の分泌や下垂体からのGHの分泌を抑制し、GHの血中濃度を一定に保ちます。
- 甲状腺ホルモンは、負のフィードバック機構により分泌が調節されています。甲状腺ホルモンの血中濃度が増加すると、これが視床下部からの甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)および下垂体前葉からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を抑制します。その結果、甲状腺ホルモンの分泌が低下し、血中濃度が一定に保たれます。
- パラトルモン(副甲状腺ホルモン)は、負のフィードバック機構により分泌が調節されます。パラトルモンの分泌が増加すると、血中カルシウム濃度が増加します。血中カルシウム濃度が増加すると、パラトルモンの分泌が抑制されます。
- エストロゲンは、正のフィードバック機構により分泌が調節されます。エストロゲンは、排卵直前に増加して視床下部からのGnRH、下垂体前葉からのLHの分泌を促進します。これにより、LHの分泌が急激に増加し、排卵が誘発されます。ただし、排卵期以外では、負のフィードバック機構によりエストロゲンの血中濃度が調節されています。
- レニンは、負のフィードバック機構により分泌が調節されます。レニンの分泌が増加すると、レニンーアンギオテンシンーアルドステロン系が活性化され、アルドステロンにより血圧が上昇します。血圧が上昇すると、レニンの分泌が抑制されます。
ポイント
腺組織
- 腺組織は分泌物を分泌する上皮組織(腺上皮)からなり、外分泌や内分泌を行います。
- 外分泌と内分泌の定義は以下のとおりです。
外分泌 | 分泌細胞が外界(消化管腔も含む)に 生理活性物質(汗、母乳、消化液など) を分泌する。 |
内分泌 | 分泌細胞が血中に生理活性物質(ホルモン) を分泌し、それを標的細胞が受け取ることで 作用が発揮される仕組み。 |
ホルモンの分泌部位
- 主なホルモンの分泌部位として、視床下部(Hypothalamus)、下垂体(Pituitary Gland)、甲状腺(Thyroid Gland)、副腎皮質(Adrenal Cortex)、副腎髄質(Adrenal Medulla)、膵臓(Pancreas)、卵巣(Ovaries)または精巣(Testes)があります。
- その他、副甲状腺(Parathyroid gland)、心臓(Heart)、胃(Stomach)、十二指腸(Duodenum)、腎臓(Kidney)などからも分泌されます。

ホルモンの構造
- ホルモンはその化学構造から、以下の3種類に分類されます。
ステロイド ホルモン | コレステロール から合成される 脂溶性ホルモン。 | 副腎皮質ホルモン、 性ホルモン |
アミン類 | アミノ酸の脱炭酸 により生成する。 カテコールアミン は水溶性。 | 甲状腺ホルモン、 カテコールアミン |
ペプチド ホルモン | アミノ酸が結合 したもの。 全て水溶性。 | 多くのホルモン |

管理人
副腎皮質ホルモンと性ホルモンはステロイドホルモン、甲状腺ホルモンとカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)はアミン、残りはペプチドホルモン、と覚えておきましょう。
ホルモンの作用機序
- 分泌後、血流にのって標的細胞に達したホルモンは、受容体に結合し作用します。
- 水溶性ホルモンと脂溶性ホルモンでは作用機序が少し異なります。
水溶性ホルモンの作用機序
- 水溶性ホルモンは、リン脂質で構成された細胞膜を直接通過できないため、細胞表面の受容体に結合して信号を伝達します。
- この過程でセカンドメッセンジャーが生成され、細胞内のシグナル伝達カスケードを介して最終的な細胞応答を引き起こします。

脂溶性ホルモンの作用機序
- 脂溶性ホルモンは細胞膜を直接通過し、細胞内(細胞質や核内)の受容体と結合することで作用を発揮します。
- このホルモン-受容体複合体は遺伝子転写を調節し、細胞の長期的な機能や特性を変化させます。

ホルモンの分泌調節
- ホルモンは、その分泌を調節する仕組みをもっています。
- 最も基本的な分泌調節機構はフィードバック機構で、負のフィードバック機構と正のフィードバック機構があります。
負のフィードバック機構(ネガティブ・フィードバック機構)
- ホルモンの血中濃度が上昇したときに、そのホルモン分泌を抑制する方向に反応が進み、結果的にホルモンの血中濃度を一定に保つ仕組みです。
- 増加したホルモンが直接的に上位のホルモン分泌を抑制する場合(例①)と増加したホルモンの作用がホルモン分泌を抑制する場合(例②)があります。
例①:甲状腺ホルモン
- 甲状腺から分泌される甲状腺ホルモン(T3およびT4)の血中濃度が上昇すると、これらのホルモンが視床下部に作用して、視床下部からの甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の分泌を減少させます。
- これにより、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の量も減少し、甲状腺からの甲状腺ホルモン(T3およびT4)の分泌が抑制されます。
- また、甲状腺ホルモン(T3およびT4)は下垂体にも作用して、直接TSHの分泌を抑制します。
- その結果、甲状腺ホルモンの血中濃度が正常な範囲に保たれます。

例②:インスリン
- インスリンは血糖値が上昇すると、膵臓のβ細胞から分泌されますが、インスリンの作用により血糖値が低下すると、その分泌が抑制されます。

正のフィードバック機構(ポジティブ・フィードバック機構)
- ホルモンの血中濃度が上昇すると、そのホルモンが上位の部位に働きかけ、そこからのホルモン分泌を促進し、そのプロセスを増幅する仕組みです。
- 負のフィードバックとは対照的に、正のフィードバックはホルモンの血中濃度維持ではなく、一時的な変化や特定の生理現象を完遂するために機能します。
- 正のフィードバック機構により分泌が調節されるホルモンは比較的少なく、排卵時のエストロゲンや出産や授乳時のオキシトシンなど限定的です。
例:出産時のオキシトシン
- 分娩が開始すると、子宮筋が収縮し、子宮頸管が伸展します。これにより下垂体後葉からのオキシトシンの分泌が促進されます。オキシトシンは子宮筋収縮作用を持つため、子宮収縮と子宮頸管の伸展がさらに増強し、正のフィードバック機構により分娩が進行していきます。
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