問題
問1:正しいのはどれか。
- ヒトの細胞数は、約60億個である。
- ヒトの細胞は、脂質三重膜で構成される。
- ヒトの染色体は、核膜に包まれていない。
- ヒトの染色体は、22対の性染色体と1対の常染色体からなる。
- どの細胞も一人の人間を作るすべてのゲノムを持っている。
解答
正しい記述は、5 です。
解説
- ヒトの細胞数は、一般的に数十兆個(およそ 30~60 兆個)とされています。
- 細胞膜(生体膜)は、通常リン脂質の二重層で構成されます。
- ヒトを含む真核生物の染色体は、通常は核膜(核)に包まれた構造をとっています。
- ヒトの染色体は通常、22対の常染色体と、1対の性染色体(XXまたはXY)の合計23対です。
- 一般的に、赤血球のように核をもたない細胞や、生殖細胞(精子・卵子)を除いた体細胞は、すべて同じゲノムをもつとされています。
問2:正しいのはどれか。
- リボソームが付着していない小胞体を、粗面小胞体という。
- ゴルジ装置では、mRNAからタンパク質が合成される。
- リボソームでは、できあがったタンパク質に糖鎖を付加する。
- 小胞体は、脂質二重膜で囲まれている。
- ミトコンドリア遺伝子は、すべて父親由来である。
解答
正しい記述は、4 です。
解説
- リボソームが付着している小胞体を粗面小胞体 といい、付着していない小胞体を滑面小胞体といいます。
- タンパク質合成(翻訳)はリボソームで行われます。ゴルジ装置は、合成後のタンパク質の修飾(糖鎖付加など)や分泌顆粒の生成を行う場所です。
- リボソームは、mRNAをもとにアミノ酸をつなげてタンパク質を合成する場です。糖鎖付加は主に小胞体やゴルジ装置で行われます。
- 小胞体(粗面小胞体・滑面小胞体)は、いずれもリン脂質二重層(脂質二重膜)による膜構造をもちます。
- 一般的に、ヒトのミトコンドリアDNAは母親由来です。
問3:正しいのはどれか。
- 小胞体は、独自の環状二重らせん構造のDNAをもつ。
- DNAの情報をコピーしてmRNAを作り出すことを翻訳という。
- mRNAの3つの塩基配列で1つのアミノ酸が指定されることを、転写という。
- ゴルジ装置は、ATPを産生する。
- DNAのヌクレオチドは、4種類ある。
解答
正しい記述は、5 です。
解説
- 小胞体には独自のDNAは存在しません。独自の環状DNAをもつ細胞小器官は、ヒトの場合ミトコンドリアです。
- DNAからmRNAを合成する過程は、転写(transcription)といいます。翻訳 (translation)は、mRNAの情報からタンパク質(アミノ酸配列)を合成する過程です。
- mRNA上の3つの塩基配列(コドン)で1つのアミノ酸が指定される過程は翻訳です。転写は、DNAからmRNAを合成する過程のことです。
- ATPを産生するのは、ミトコンドリアです。ゴルジ装置は、タンパク質や脂質の修飾・濃縮・輸送などを担う細胞小器官です。
- ヒトなど真核生物のDNAは、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C) の4種類のヌクレオチドから構成されます。
ポイント
細胞
- ヒトの細胞数は、約60兆個とされています(最近の研究では37兆2千億個ともいわれています)。
- 細胞は細胞膜で覆われ、内部(細胞質)には細胞内小器官が存在します。
- 核は遺伝情報保持の場で、細胞質は遺伝情報をもとに細胞機能を発現する場所です。

細胞膜
- 細胞膜は、主にリン脂質とタンパク質で構成されます。
- 細胞膜を構成するリン脂質は疎水性の部分(疎水基:水になじまない領域)を互いに内側に向け、親水性の部分(親水基:水になじむ領域)を互いに外側に向けて脂質二重層を形成します。
- 細胞膜に存在するタンパク質は、イオンチャネルやトランスポーター、受容体など様々な機能を持っています。

核
- 核は、核膜で仕切られており、内部には染色体が存在します。
- 生物がもつ遺伝情報全体をゲノムといい、染色体として核内に存在します。
- ヒトの染色体は46本(23対)で、44本(22対)の常染色体と2本(1対)の性染色体から構成されます。
- 染色体は二重らせん構造をとるDNAが凝縮されたもので、DNA上のタンパク質の合成に関わる領域を遺伝子といいます。

DNAの構造と遺伝情報
- DNAの構成単位をヌクレオチドといいます。
- ヌクレオチドとは、リン酸、五炭糖、塩基が結合した分子(下図)です。
- ヌクレオチド同士はリン酸部分を介して隣の糖と結合し、長い鎖状構造を形成します。
- 2本のヌクレオチド鎖は、互いの塩基同士が水素結合で結びつき、特有の二重らせん構造をとります。

- DNAを構成する塩基には、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類があります(RNAを構成する塩基は、アデニン(A)・グアニン(G)・シトシン(C)・ウラシル(U)です)。
- 4種類の塩基の配列が遺伝情報となります。
- 3つの塩基のまとまり(=コドン)が1つのアミノ酸を指定し、最終的に細胞内で様々な機能をもつタンパク質がつくられます。
- 例)UUU→フェニルアラニンを指定 GGU / GGC / GGA / GGG→グリシンを指定 など

- DNAの遺伝情報は、必要な部分がmRNA(メッセンジャーRNA)に「写し取られる(転写)」ことで取り出されます。
- 転写は核内で行われ、DNAの2本鎖のうち、必要な部分の塩基配列が1本鎖のmRNAにコピーされます。
- その後、mRNAが細胞質へ移動し、リボソームに結合します。
- リボソームは、mRNAの塩基配列を3つずつ読み取り(コドン)、それに対応するアミノ酸を順番に結合させていきます。
- この一連の過程を「翻訳」と呼び、最終的にアミノ酸がつながってタンパク質が作られます。

細胞内小器官
ミトコンドリア
- ミトコンドリアは脂質二重膜で囲まれ、エネルギーであるATPを産生します。
- 独自の環状DNA(ミトコンドリアDNA)を持ちますが、ミトコンドリアの遺伝子は全て母親由来です。

小胞体
- 小胞体は脂質二重膜で囲まれた小腔で、表面に多数のリボソームが付着している粗面小胞体と、付着していない滑面小胞体に大別されます。
- 滑面小胞体は、脂質の合成やCa2+の貯蔵などに関与しますが、細胞によっって機能が異なります。
- 粗面小胞体は、リボソーム上で蛋白質を合成します。

ゴルジ装置
- ゴルジ装置は細胞内で合成された蛋白質を濃縮したり、糖鎖を付加するなどの修飾を行います。
- 濃縮・修飾された蛋白質は、ゴルジ小胞として切り出され、細胞内外に輸送されます。

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