1.細胞

2章 人体構造・機能論

問題

問1:正しいのはどれか。

  1. ヒトの細胞数は、約60億個である。
  2. ヒトの細胞は、脂質三重膜で構成される。
  3. ヒトの染色体は、核膜に包まれていない。
  4. ヒトの染色体は、22対の性染色体と1対の常染色体からなる。
  5. どの細胞も一人の人間を作るすべてのゲノムを持っている。
解答

 正しい記述は、5 です。

解説
  1. ヒトの細胞数は、一般的に数十兆個(およそ 30~60 兆個)とされています。
  2. 細胞膜(生体膜)は、通常リン脂質二重層で構成されます。
  3. ヒトを含む真核生物の染色体は、通常は核膜)に包まれた構造をとっています。
  4. ヒトの染色体は通常、22対常染色体と、1対性染色体XXまたはXY)の合計23対です。
  5. 一般的に、赤血球のように核をもたない細胞や、生殖細胞(精子・卵子)を除いた体細胞は、すべて同じゲノムをもつとされています。

問2:正しいのはどれか。

  1. リボソームが付着していない小胞体を、粗面小胞体という。
  2. ゴルジ装置では、mRNAからタンパク質が合成される。
  3. リボソームでは、できあがったタンパク質に糖鎖を付加する。
  4. 小胞体は、脂質二重膜で囲まれている。
  5. ミトコンドリア遺伝子は、すべて父親由来である。
解答

 正しい記述は、4 です。

解説
  1. リボソームが付着している小胞体を粗面小胞体 といい、付着していない小胞体を滑面小胞体といいます。
  2. タンパク質合成(翻訳)はリボソームで行われます。ゴルジ装置は、合成後のタンパク質の修飾糖鎖付加など)や分泌顆粒の生成を行う場所です。
  3. リボソームは、mRNAをもとにアミノ酸をつなげてタンパク質を合成する場です。糖鎖付加は主に小胞体やゴルジ装置で行われます。
  4. 小胞体(粗面小胞体・滑面小胞体)は、いずれもリン脂質二重層(脂質二重膜)による膜構造をもちます。
  5. 一般的に、ヒトのミトコンドリアDNA母親由来です。

問3:正しいのはどれか。

  1. 小胞体は、独自の環状二重らせん構造のDNAをもつ。
  2. DNAの情報をコピーしてmRNAを作り出すことを翻訳という。
  3. mRNAの3つの塩基配列で1つのアミノ酸が指定されることを、転写という。
  4. ゴルジ装置は、ATPを産生する。
  5. DNAのヌクレオチドは、4種類ある。
解答

 正しい記述は、5 です。

解説
  1. 小胞体には独自のDNAは存在しません独自の環状DNAをもつ細胞小器官は、ヒトの場合ミトコンドリアです。
  2. DNAからmRNAを合成する過程は、転写transcription)といいます。翻訳translation)は、mRNAの情報からタンパク質アミノ酸配列)を合成する過程です。
  3. mRNA上の3つ塩基配列コドン)で1つアミノ酸が指定される過程は翻訳です。転写は、DNAからmRNAを合成する過程のことです。
  4. ATPを産生するのは、ミトコンドリアです。ゴルジ装置は、タンパク質脂質修飾濃縮輸送などを担う細胞小器官です。
  5. ヒトなど真核生物DNAは、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C) の4種類のヌクレオチドから構成されます。

ポイント

細胞

  • ヒトの細胞数は、約60兆個とされています(最近の研究では37兆2千億個ともいわれています)。
  • 細胞は細胞膜で覆われ、内部(細胞質)には細胞内小器官が存在します。
  • は遺伝情報保持の場で、細胞質は遺伝情報をもとに細胞機能発現する場所です。

細胞膜

  • 細胞膜は、主にリン脂質タンパク質で構成されます。 
  • 細胞膜を構成するリン脂質は疎水性の部分(疎水基:水になじまない領域)を互いに内側に向け、親水性の部分(親水基:水になじむ領域)を互いに外側に向けて脂質二重層を形成します。
  • 細胞膜に存在するタンパク質は、イオンチャネルトランスポーター受容体など様々な機能を持っています。

  • 核は、核膜で仕切られており、内部には染色体が存在します。
  • 生物がもつ遺伝情報全体ゲノムといい、染色体として核内に存在します。
  • ヒトの染色体は46本23対)で、44本22対)の常染色体2本1対)の性染色体から構成されます。
  • 染色体は二重らせん構造をとるDNA凝縮されたもので、DNA上のタンパク質の合成に関わる領域を遺伝子といいます。

DNAの構造と遺伝情報

  • DNAの構成単位ヌクレオチドといいます。
  • ヌクレオチドとは、リン酸五炭糖塩基が結合した分子(下図)です。
  • ヌクレオチド同士はリン酸部分を介して隣の糖と結合し、長い鎖状構造を形成します。
  • 2本のヌクレオチド鎖は、互いの塩基同士が水素結合で結びつき、特有の二重らせん構造をとります。
ヌクレオチドの構造
  • DNAを構成する塩基には、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類があります(RNAを構成する塩基は、アデニン(A)・グアニン(G)・シトシン(C)・ウラシル(U)です)。
  • 4種類の塩基の配列遺伝情報となります。
  • 3つの塩基のまとまり(=コドン)が1つアミノ酸を指定し、最終的に細胞内で様々な機能をもつタンパク質がつくられます。
  • 例)UUU→フェニルアラニンを指定 GGU / GGC / GGA / GGG→グリシンを指定 など
核酸の構成塩基
  • DNAの遺伝情報は、必要な部分がmRNA(メッセンジャーRNA)に「写し取られる転写)」ことで取り出されます。
  • 転写は核内で行われ、DNAの2本鎖のうち、必要な部分の塩基配列1本鎖のmRNAにコピーされます。
  • その後、mRNAが細胞質へ移動し、リボソームに結合します。
  • リボソームは、mRNAの塩基配列を3つずつ読み取り(コドン)、それに対応するアミノ酸を順番に結合させていきます。
  • この一連の過程を「翻訳」と呼び、最終的にアミノ酸がつながってタンパク質が作られます。

細胞内小器官

ミトコンドリア

  • ミトコンドリアは脂質二重膜で囲まれ、エネルギーであるATPを産生します。
  • 独自の環状DNA(ミトコンドリアDNA)を持ちますが、ミトコンドリアの遺伝子は全て母親由来です。

小胞体

  • 小胞体は脂質二重膜で囲まれた小腔で、表面に多数のリボソームが付着している粗面小胞体と、付着していない滑面小胞体に大別されます。
  • 滑面小胞体は、脂質の合成やCa2+の貯蔵などに関与しますが、細胞によっって機能が異なります
  • 粗面小胞体は、リボソーム上で蛋白質を合成します。

ゴルジ装置

  • ゴルジ装置は細胞内で合成された蛋白質濃縮したり、糖鎖付加するなどの修飾を行います。
  • 濃縮・修飾された蛋白質は、ゴルジ小胞として切り出され、細胞内外輸送されます。

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