ウイルス性肝炎、HIV感染症、サイトメガロウイルス病、流行性耳下腺炎、伝染性単核球症、コロナウイルス感染症に関する問題を出題しています。
問題
問1:ウイルス性肝炎について正しいのはどれか。
- A型肝炎は、高率で再発する。
- A型肝炎は、慢性化しやすい。
- B型肝炎は、生ガキの経口摂取で感染する。
- B型肝炎は、持続感染(キャリア化)することはない。
- C型肝炎ウイルスは、刺青や鍼治療でも感染することがある。
解答
正しい記述は、5 です。
解説
- A型肝炎に感染すると体内で抗体が産生され終生免疫を獲得するため、再発することは稀です。
- A型肝炎の多くは一過性で、慢性化することはありません。
- B型肝炎ではなく、A型肝炎の特徴です。B型肝炎は血液感染、性感染、母子感染しますが、経口感染はありません。
- B型肝炎は一過性感染(急性肝炎)と持続感染(慢性化、キャリア化)があります。若年で感染した場合、持続感染することが多くなります。乳児では90%が慢性化します。
- 正しい記述です。C型肝炎は、主に血液感染します。母子感染や性感染もありますが、感染率は低いです。覚醒剤など注射器の回し打ちや消毒が十分でないピアスの穴あけなどもリスクとなります。
問2:ウイルス性肝炎について、正しいのはどれか。
- A型肝炎は、最も劇症化しやすい。
- A型肝炎は、主に性的接触感染する。
- B型肝炎には、予防ワクチンがない。
- C型肝炎の原因は、現在ではほとんどが輸血によるものである。
- 慢性ウイルス性肝炎の初期には、ほとんど自覚症状がみられない。
解答
正しい記述は、5 です。
解説
- 最も劇症化しやすいのは、B型肝炎です。劇症化率は約1%ですが、劇症化した場合の致死率は約70%です。
- A型肝炎は、生牡蠣など汚染された食品や水の経口感染により発症します。
- A型肝炎、B型肝炎には予防ワクチンがありますが、C型肝炎には現在予防ワクチンはありません。A型肝炎は任意接種、B型肝炎は定期接種です。
- 輸血によって感染するウイルスには、HBV、HCV、HIVなどがあります。現在、国内の血液製剤についてはウイルス検査を実施しているため、C型肝炎に限らず、輸血による血液感染はほとんどありません。
- 正しい記述です。慢性肝炎では、初期症状がほとんどないため、症状に気づく頃にはかなり進行していることもあります。
問3:ウイルス性肝炎について、正しいのはどれか。
- 急性ウイルス性肝炎は、EBウイルス、サイトメガロウイルスなどでも発症する。
- A型肝炎は、夏期に好発する。
- A型・B型肝炎ウイルスは、血液を介して感染する。
- C型肝炎ウイルスの主要な感染経路は、母子感染である。
- C型・E型肝炎ウイルスには、予防ワクチンがある。
解答
正しい記述は、1 です。
解説
- 正しい記述です。急性ウイルス性肝炎の原因の多くは、A〜E型肝炎ウイルスですが、EBウイルスやサイトメガロウイルスも原因として知られています。
- A型肝炎は、冬から春にかけて好発します。
- B型肝炎ウイルスは血液を介して感染しますが、A型肝炎ウイルスは経口感染します。
- C型肝炎ウイルスは母子感染を起こすこともありますが、稀です。主な感染経路は血液感染です。
- 現在、国内で承認されているC型肝炎ワクチン、E型肝炎ワクチンはありません。
問4:ヒト免疫不全ウイルスについて、正しいのはどれか。
- アデノウイルスの一種である。
- RNAウイルスに分類される。
- AIDSと略される。
- 鼻汁、唾液、涙を介して感染する。
- 血液感染しない。
解答
正しい記述は、2 です。
解説
- ヒト免疫不全ウイルスは遺伝子としてRNAを持つRNAウイルスで、ウイルスが持つ逆転写酵素によりRNAからDNAを作り出すレトロウイルスの一種です。ヒトの細胞がDNAからRNAを作り出すのと逆になります(retro- とは、「後ろに」や「逆の」といった意味があります)。
- 上記を参照してください。
- AIDSは後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome)のことで、ヒト免疫不全フイルスは、HIV(human immunodeficiency virus)と略します。HIVの感染によりAIDSが引き起こされます。
- HIVは、体液や血液中で生息しますが、空気や水の中では感染力をなくしてしまいます。したがって、鼻汁や唾液、涙は感染源とはなりません。
- HIVは、血液感染、性感染、母子感染します。
問5:伝染性単核球症について、正しいのはどれか。
- 人畜共通感染症である。
- パピローマウイルスの感染によって起こる。
- 単核球と呼ばれる異型顆粒球の数が増える。
- 初感染が青春期に起こった場合に症状が現れることが多い。
- 致命率が高く、予後不良である。
解答
正しい記述は、4 です。
解説
- 人畜共通感染症ではありません。
- 伝染性単核球症の原因は主にEBウイルスで、唾液を介して感染するので kissing desease とも呼ばれます。
- 単核球と呼ばれる異型リンパ球の増加がみられます。
- 正しい記述です。
- 予後良好で、2−3週間で自然治癒します。
問6:正しいのはどれか。
- ヒト免疫不全ウイルス感染から後天性免疫不全症候群までの期間は、1年である。
- SARSとMERSは、ともに3類感染症である。
- サイトメガロウイルス病では、胎盤や産道を介して垂直感染する。
- 流行性耳下腺炎は、EBウイルスの感染症である。
- 急性E型肝炎は、経口感染しない。
解答
正しい記述は、3 です。
解説
- ヒト免疫不全ウイルスの感染から後天性免疫不全症候群の発症までの期間は、数年〜数十年です。
- 重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)は、ともに2類感染症に指定されています。
- 正しい記述です。母乳や唾液、尿、血液などから子供の時に感染することが多いです。その他、性感染もあります。ただし、健康な子供や成人が感染してもほとんど症状は出ません。
- 流行性耳下腺炎は、ムンプスウイルスの感染症です。EBウイルスは、伝染性単核球症や上咽頭癌などの原因となります。
- 急性E型肝炎は経口感染します。病原体であるE型肝炎ウイルスは、ブタやイノシシ、シカなどが保有しており、これらの動物の生食や加熱不十分な調理が原因となります。
問7:正しいのはどれか。
- HIVに感染すると数週間後に抗体産生があり、ウイルスと抗体は終生持続する。
- 現在、ヒト免疫不全ウイルスに対するワクチンが実用化されている。
- ニューモシスチス肺炎は、健常な若年者が発症することが多い。
- サイトメガロウイルス病は、一般に「おたふくかぜ」とよばれる。
- 流行性耳下腺炎(ムンプス)のワクチンは、定期接種である。
解答
正しい記述は、1 です。
解説
- 正しい記述です。
- 現在、HIVに対するワクチンは存在しません。
- ニューモシスチス肺炎は、AIDS患者など免疫低下患者に好発します。
- 「おたふくかぜ」は、流行性耳下腺炎の俗称です。
- 流行性耳下腺炎のワクチンは、任意接種です。
ポイント
急性ウイルス性肝炎
- 肝炎ウイルスの感染による急性肝炎です。
- A〜E型肝炎ウイルスによるものがほとんどを占めますが、EBウイルスやサイトメガロウイルスも原因となります。
- ウイルスの型によらず、同様の症状がでます。全身倦怠感や、食欲不振、悪心、嘔吐、発熱、筋肉痛などのインフルエンザ様症状が出現し、その後、黄疸や皮膚掻痒感、肝腫大などがみられます。
- 血液検査では、AST、ALT、ビリルビンの上昇が認められます。
- 自然治癒が多いため、保存的治療を行います。
A型急性肝炎
- RNAウイルスであるA型肝炎ウイルス(HAV)の経口感染が原因となります。
- 原因食品として生の牡蠣などがあり、冬から春にかけて好発します。
- 2~6週程度の潜伏期を経て発症しますが、一過性感染で、慢性化することはほとんどありません。
- IgM型HA抗体の検出、TTT(チモール混濁試験)、ASTやALTの上昇などから診断されます。
- 安静にして肝血流を増加させ、栄養補給(糖質中心の低カロリー食)により肝細胞の再生を促します。
B型急性肝炎
- DNAウイルスであるB型肝炎ウイルス(HBV)の血液感染、垂直感染(母子感染)、性行為感染が原因となります。
- 潜伏期は1~6ヶ月間で、一過性(急性肝炎)および持続感染(慢性化、キャリア化)します。
- 慢性肝炎は、主に無症候性キャリアから発症します。
- 劇症肝炎の原因として、最多(約40%)です。
- HBVが持つ各種抗原と、それに対する抗体の検出やASTやALTの上昇などから診断されます。
C型急性肝炎
- RNAウイルスであるC型肝炎ウイルス(HCV)の主に血液感染が原因となります。
- 慢性化率が高く(40~70%)、放置すると肝硬変や肝細胞癌に移行します。
- HCV抗体等の検出やAST、ALTの上昇などから診断されます。
- 現在、実用化されている予防ワクチンはありませんが、インターフェロン投与により慢性化を予防できます。
- 近年は、インターフェロンを使用しないインターフェロンフリー治療も行われています。
慢性肝炎
- 急性肝炎罹患後、6ヶ月以上肝臓に炎症が持続するものをいいます。
- 原因のほとんどはHBVやHCVの感染ですが、大部分がHCVの感染によるものです。その他の原因として、アルコールや薬剤があります。
- 自覚症状はほとんどなく、放置すると肝硬変や肝細胞癌へ移行します。
- 血清アルブミン値の低下や血清グロブリン値の上昇がみられます。
- 各種抗原・抗体等の検出やAST、ALTの上昇などから診断されます。
- 抗ウイルス治療として、インターフェロンなどが用いられます(近年はインターフェロンフリー治療も行われています)。
- 抗ウイルス作用はありませんが、肝炎を鎮静化して、病気の進行を抑える目的で肝庇護療法が行われます。
- 肝庇護療法では、グリチルリチン製剤(注射剤)やウルソデオキシコール酸(飲み薬)などが用いられます。
ヒト免疫不全ウイルス[HIV]病
- HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の性・血液・母子感染が原因となります。
- HIVが体内に侵入すると、CD4陽性T細胞に感染し、破壊していきます。
- 数年~数十年の無症候期が続いた後に、発熱、体重減少、下痢、リンパ節腫脹などの症状が出現し、次第に日和見感染症(ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス感染症、カンジダ症など)、悪性腫瘍、HIV脳症などを発症します。
- 多剤併用による強力なHIV療法(HAART:Highly Active Antiretroviral Therapy)がありますが、HIVを体内から排除する治療法は現在のところありません。
サイトメガロウイルス病
- サイトメガロウイルス(CMV、ヘルペスウイルス群)の垂直感染や免疫低下により後天性に感染する疾患です。
- ほとんどが不顕性感染ですが、免疫不全患者などで顕性感染となり、肺炎、肝炎など重篤な症状を引き起こします。
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
- ムンプスウイルスの飛沫または直接感染が原因となります。
- 幼児期(5~10歳)に好発し、発熱、耳下腺の腫脹・疼痛などを引き起こします。
- 耳下腺の腫脹や疼痛は、片側性に発症しても数日後には両側性になることが多いです。
- 合併症として、無菌性髄膜炎(最多、10%)や難聴、膵炎などがあります。
- 思春期以降に感染した場合、男性では精巣炎、女性では卵巣炎を合併することがあります。
- 対症療法のみですが、予防には生ワクチンがあります(任意接種)。
伝染性単核球症
- EBウイルスがB細胞に感染し、感染細胞排除のために免疫・炎症が惹起される疾患です。
- 一般に唾液を介して感染するため、kissing disease とも呼ばれます。
- 3歳までに感染すると不顕性感染が多いですが、思春期に感染すると症状がでやすくなります。
- 症状として、弛張熱(38℃以上)、全身リンパ節腫大(特に頸部)、咽頭痛(扁桃炎)、ときに発疹(皮膚、口蓋の紅斑)、肝脾腫などがみられます。
- 患者の血清中の異常抗体を判定するポール・バンネル反応が陽性となりますが、現在では検査に用いられていません。
- 血液検査では、末梢血中の異型リンパ球の上昇が特徴的です。
- EBウイルスに対する治療薬はありませんが、自然治癒傾向が高く、予後良好な疾患です。
コロナウイルス感染症
- ヒトに蔓延している風邪のウイルス4種類と、動物から感染する重症肺炎ウイルス(SARS、MERS)が知られています。
- SARSは重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome)のことで、2002年中国広東省で発生し周辺の国々に拡大しましたが、2003年7月に終息しました。
- MERSは中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome)のことで、ヒトコブラクダが保有するコロナウイルスの一種がヒトに感染したと考えられています。
- 2012年、アラビア半島とその周辺地域で発生しました。
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