その他の細菌感染症①では、ジフテリア・百日咳・破傷風について勉強しました。
今回は、それ以外の細菌感染症について、5択クイズを解きながら勉強していきます。
この記事で勉強する細菌感染症
その他、ASO/ASKやリウマチ熱、急性糸球体腎炎など溶連菌感染症に関連した用語も説明しています。曖昧に覚えてる人はしっかりチェック!
いきなり、5択クイズを解くのが不安な人は、先に📚 感染症まとめ|クイズで登場した疾患を再チェック!を読んでからトライしましょう。
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💡感染症の全体像をまとめて確認したい方は、以下のまとめ記事もご活用ください:
👉【保存版】感染症クイズ&解説記事一覧|覚えにくい感染症を一気に攻略!
🖊️ クイズで学ぶ|代表的な細菌感染症を確認!
問1:猩紅熱について、正しいのはどれか。
- インフルエンザ菌による飛沫感染で発症する。
- 高齢者に多く発症する。
- 口腔内病変はみられない。
- CK値の上昇がみられる。
- 合併症として、リウマチ熱がある。
解答
正しい記述は、5 です。
解説
- 猩紅熱は、A群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)による飛沫感染で発症します。インフルエンザ菌は、ヒトの鼻腔内に常在するグラム陰性桿菌です(インフルエンザの病原体ではありません)。
- 溶連菌感染症の好発年齢は、3歳〜10歳(幼児〜学童)で、高齢者では稀です。
- 猩紅熱では、「苺舌(いちごじた)」と呼ばれる特徴的な舌の変化(口腔内病変)がみられます。
- 猩紅熱では、ASO(抗ストレプトリジンO抗体)値の上昇がみられます。CK(クレアチンキナーゼ)は筋細胞に存在する酵素で、筋細胞壊死の際に血液中に放出される逸脱酵素です。CK値の上昇は、心筋梗塞や筋ジストロフィーなどでみられます。
- 正しい記述です。猩紅熱の合併症として、リウマチ熱や急性糸球体腎炎があります。
問2:正しいのはどれか。
- ガス壊疽は、ウェルシュ菌などが原因となる創傷感染症である。
- 猩紅熱では、ドルーゼがみられる。
- 放線菌症は、主に抗酸菌によって起こる感染症である。
- レジオネラ症は、クラミジア感染症である。
- 細菌性髄膜炎は、ウイルス性髄膜炎よりも軽症のことが多い。
解答
正しい記述は、1 です。
解説
問3:正しいのはどれか。
- 細菌性髄膜炎は、髄膜炎菌の血液感染により発症する。
- レジオネラ症は、ヒトからヒトに感染しない。
- 放線菌症では、感染から1~3週間後に急性糸球体腎炎を起こすことがある。
- マイコプラズマ肺炎には、ペニシリン系抗菌薬が有効である。
- ガス壊疽の治療において、高圧酸素療法は禁忌である。
解答
正しい記述は、2 です。
解説
- 細菌性髄膜炎は、髄膜炎菌の飛沫感染により発症します。
ただし、細菌性髄膜炎を起こす病原体は髄膜炎菌だけではありません。肺炎球菌、インフルエンザ菌、B群レンサ球菌なども細菌性髄膜炎の起因菌ですが、主な感染経路は飛沫感染です。 - 正しい記述です。レジオネラ症は、エアコンや加湿器などの冷却水で増殖し、散布されたレジオネラ菌を吸引することで感染しますが、ヒトからヒトに感染することはありません。
- 放線菌症ではなく、猩紅熱の記述になっています。
猩紅熱の合併症として急性糸球体腎炎があります。 - マイコプラズマは細胞壁がない非定型の細菌です。
ペニシリン系の抗菌薬は細胞壁合成を阻害する薬剤であるため、細胞壁がないマイコプラズマには無効です。 - ガス壊疽の原因菌はクロストリジウム属などの嫌気性菌なので、高圧酸素療法が有効です。
📚 感染症まとめ|クイズで登場した疾患を再チェック!
猩紅熱
- グラム陽性球菌であるA群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)による飛沫感染で発症する感染症です。
- 幼児〜学童に好発し、咽頭炎や扁桃炎に全身性の発疹を伴うのが特徴です。
これは、溶連菌が産生する毒素(発赤毒素:エリスロゲン)によって、全身の皮膚に発赤が生じるためです。 - 臨床症状としては、発熱や口囲蒼白、苺舌などがます。
- 診断には、血清ASO(抗ストレプトリジンO抗体)やASK(抗ストレプトキナーゼ抗体)の上昇が参考になります。
- 続発症として急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの免疫が関連した疾患が知られています。
- 治療にはペニシリン系の抗菌薬(例:アモキシシリンなど)が第一選択とされます。
A群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)
- レンサ球菌(通性嫌気性グラム陽性球菌)は、細胞壁の抗原性(A〜V群)や溶血性の違い(α、β、γ)によって分類されます。
- A群β溶血性レンサ球菌は化膿性レンサ球菌の一種で、溶連菌ともよばれています。
- A群β溶血性レンサ球菌は、咽頭炎、扁桃炎、丹毒、猩紅熱など、上気道および皮膚を中心とした急性の化膿性感染症を引き起こします。
- また、感染後に数週間の潜伏期間を経て、免疫反応による続発症を生じることがあります。
- 主な続発症には、急性糸球体腎炎やリウマチ熱があり、いずれも菌そのものではなく、感染に対する過剰な免疫応答によって発症すると考えられています。
ASO、ASK
- ASO(抗ストレプトリジンO抗体)およびASK(抗ストレプトキナーゼ抗体)は、いずれもA群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)が産生する毒素に対して体内で作られる抗体です。
- ASOは、溶連菌が産生するストレプトリジンO(溶血毒)に対する抗体です。
ストレプトリジンOは赤血球の細胞膜を傷害し、溶血(赤血球の破壊)を引き起こします。 - ASKは、溶連菌の産生するストレプトキナーゼに対する抗体で、この毒素は血栓溶解作用をもち、感染部位での菌の拡散に関与します。
- ASOは、溶連菌が産生するストレプトリジンO(溶血毒)に対する抗体です。
- 溶連菌に感染するとASO値やASK値の上昇がみられるため、感染の既往を表す補助的な指標として診断に用いられています。
急性糸球体腎炎(AGN)
- 多くは、溶連菌感染後に続発症として発症します。
- 溶連菌感染後に体内で溶連菌に対する抗体が産生され、それが免疫複合体(抗原ー抗体複合体)を形成します。この免疫複合体が糸球体に沈着することで、腎障害(乏尿、血尿、蛋白尿、浮腫、高血圧など)をおこします。
リウマチ熱
- 溶連菌感染後、免疫学的機序により発症する続発症です。
- 溶連菌に対して産生された抗体や免疫反応が、心筋や関節などの自己組織を攻撃してしまうことで発症すると考えられています。
- 主な症状として、関節炎や心炎、神経症状、発熱、皮膚症状などがみられます。
- 心臓の炎症を反復すると、将来的に心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全など)をおこすことがあります。
細菌性髄膜炎
- 髄膜炎には 細菌性 と 無菌性(多くはウイルス性) がありますが、細菌によるものを細菌性髄膜炎といいます。
- 細菌性髄膜炎の原因菌は年齢によって異なり、代表的な起因菌は B群レンサ球菌・大腸菌・肺炎球菌・髄膜炎菌 などです(以下の表参照)。
※ かつてはインフルエンザ菌(Hib)が主要な原因菌でしたが、Hibワクチン導入後は大幅に減少しました。
| 年齢 | 主な起因菌(多い順) |
|---|---|
| 新生児(0〜28日) | ① B群レンサ球菌(GBS) ② 大腸菌 ③ リステリア菌 |
| 1〜3か月 | ① B群レンサ球菌 ② 大腸菌(Hibはワクチン導入後はまれ) |
| 4か月〜5歳 | ① 肺炎球菌 ② (Hib:ワクチン前は多かったが現在はまれ) ③ 髄膜炎菌 |
| 6〜49歳 | ① 肺炎球菌 ② 髄膜炎菌(特に思春期・若年成人) |
| 50歳以上 | ① 肺炎球菌 ② リステリア菌 ③ グラム陰性桿菌(大腸菌など) |
本記事の表は、『病気がみえる vol.7 脳・神経』の記載を参考にしつつ、2016〜2018年の国内多施設研究やWHOの近年のまとめを踏まえて修正したものです。
なお、かつてはHibが主要な原因菌でしたが、ワクチン導入後は激減しています。

(管理人)
新生児でB群レンサ球菌(GBS)が多いのは、妊婦さんの約10〜30%が膣内にGBSを持っていて、出産時に赤ちゃんが産道で感染することがあるからです。
- 多くは飛沫感染で感染し、病原体の種類によらず発熱、意識障害、髄膜刺激症状(ケルニッヒ徴候、項部硬直など)がみられます。
- 一般に、細菌性はウイルス性よりも症状が重く、重篤になります。
ガス壊疽
- ガスを産生する菌による創傷感染症(傷口からの感染)です。
- ウェルシュ菌を含むクロストリジウム属(グラム陽性・嫌気性・有芽胞・桿菌)の菌が主な起因菌となります。
- 損傷部位では血流が低下し、低酸素環境となるため、嫌気性菌が増殖しやすくなります。
- 筋肉壊死やガスによる病巣の腫脹、皮膚の黒紫色の変色、浮腫、悪臭のある膿汁(滲出液)の排出などがみられます。
- 進行が速いため、早急な治療(抗生物質、デブリードマン、高圧酸素療法)が必要です。
※デブリードマンとは、壊死した組織を外科的切除する処置です。 - ガス壊疽の原因菌は嫌気性菌なので、高圧酸素療法により殺菌を行います。
レジオネラ症
- グラム陰性桿菌であるレジオネラ菌による呼吸器感染症です。
- レジオネラ菌は河川などの自然界にも生息していますが、温泉や貯水槽、エアコンの冷却水中でも増殖します。
- 菌に汚染された水がエアロゾルとして飛散し、それを吸入することで感染します。
- ヒトからヒトへの感染はありません。
- レジオネラ症の多くは、レジオネラ肺炎をひきおこします(一過性のインフルエンザ症状を示すポアンティック熱もあります)。
- レジオネラ肺炎では、発熱、咳嗽、比較的徐脈、筋肉痛、全身倦怠感、意識障害、腹痛などがみられます。
※比較的徐脈とは、発熱の割に脈拍数の増加が少ないものをいいます(通常は発熱時に脈拍は増加)。 - レジオネラ肺炎は進行が速く重症化しやすいので、早急な治療が必要です。
放線菌症
- 口腔内や腸管内の常在菌である放線菌(嫌気性菌)による感染症です。
- 抜歯や口腔手術が誘因となり頸部顔面放線菌症を、誤嚥により胸部放線菌症を、腸管侵入により腹部放線菌症をひきおこします。
- 病巣から皮膚につながる瘻孔が形成されることがあり、そこからドルーゼ(硫黄顆粒)とよばれる菌体の塊を採取できます。
マイコプラズマ肺炎
- マイコプラズマは定型細菌と同様、自己増殖できますが、細胞壁をもたない非定型の細菌です。
- マイコプラズマ肺炎は、Mycoplasma pneumoniae の飛沫感染による感染症です。
- 健常な若者に好発します。
- 症状として、頑固な乾性咳嗽や発熱、胸痛などがみられます。
- ペニシリン系やセフェム系など、細胞壁合成阻害作用をもつβ-ラクタム系抗生物質は無効です。
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